唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

あの日たったひとつの言葉が言えずジュワッチを置いた。

 「週刊昭和」3月29日号に掲載されていた唐沢俊一による『ウルトラマン』の解説記事にはいろいろと考えさせられてしまった。
 まず、記事のタイトルが「ウルトラマン“ジュワッチ!”」なのだが…「ジュワッチ」? ためしに「ジュワッチ」でググってみると、「もしかしてシュワッチ」と表示されてしまった。…いや、俺が間違えたわけじゃないんだって。まあ、この記事は円谷プロもチェックしているだろうから、もしかすると今後は「ウルトラマンの掛け声は“ジュワッチ”」が公式設定になるのかもしれない。そうなったら、帰ってきたウルトラマンの呼び方並みに揉めそうな気もするが。
 で、記事の内容なのだが、『ウルトラマン』という作品の事実関係について説明されているだけで、唐沢俊一の個人的な見方というのが全くないことに驚いてしまった。もしかすると「週刊昭和」という雑誌が個人的な見方を排するスタンスにあるのかも、と思ってしまったのだが、この3月29日号の巻頭では芦原すなお氏がビートルズが来日したときの思い出を書いているので、そういうことでもないらしい。…正直に言わせてもらうと、自分は『ウルトラマン』について書かれた文章はかなりの数読んできているのだが、これほど無味乾燥なものはなかなかないと思う。今まで読んだほとんどの文章には書き手の『ウルトラマン』への深い思い入れが込められていて否応無しに心を動かされたものだが、今回の唐沢の文章からはそういった思い入れがまったく感じられないのだ。まあ、「ぴあ」での「ガンダム論争」でこんなことを書いていたのだから『ウルトラマン』に対して思い入れが無いのかもしれないが(詳しくは2008年11月19日の記事を参照)。

今、巷ではウルトラマンウルトラセブンといった作品を名作とかいって奉っているがとんでもない。これらの作品が世間に、SFといえば「怪獣が戦車を踏みつぶす」というイメージを与えさえしなければ、日本のSFドラマもその初期に『トワイライト・ゾーン』『アウター・リミッツ』なみの作品が生まれていたはずなんだ

単に事実関係を記述するのであれば、唐沢に依頼するまでもなく朝日新聞の記者の方がずっと簡潔にまとめられるはずだし、そもそも今回の記事はウルトラマン』本編を観ていなくても書ける内容なのである。記事の中で書かれているのは

・『広辞苑』にはウルトラマンという項目がある(平成20年発売の第6版)
・「日本初のカラーの特撮番組」は『マグマ大使』だが、『ウルトラマン』は現在でも劣化していない
・オックスベリー社からオプチカル・プリンターを導入し、その資金を補うために『ウルトラ』シリーズが制作された
・子供向け番組で1話完結のスタイルが「高度経済成長期の感覚にマッチした」
・高視聴率を記録したが制作の負担が大きかったため39話で終了

…ということだが、こういうことはウィキペディア「ウルトラQ」「ウルトラマン」「オプチカル・プリンター」に書いてあるし、ついでにニコニコ大百科「ウルトラQ」「ウルトラマン」にも同じような記述がある。つまり、ウルトラマンについて調べようとネットで適当に検索していたらすぐにわかってしまうようなことしか書かれていないのだ(ちなみに東大での講義でも同じようなことを語っていた。詳しくは2008年10月23日の記事を参照)。
 とはいえ、事実関係さえ正確に書かれていれば、まだマシと言えるのだが、それすらもなんだか怪しいのだから困ってしまう。「週刊昭和」3月29日号P.12より。

 その「ウルトラマン」(TBS系)は、昭和41年(1966)7月、前作「ウルトラQ」の、平均視聴率30%という人気を受けて制作が決定した。子どもたちの間での怪獣ブームは、テレビの「ウルトラQ」、映画の東宝ゴジラ・シリーズに加え、大映が「大怪獣ガメラ」で参戦したことで過熱していたが、「ウルトラマン」の大ヒットは、それら全てを露払いにしてしまうほどのムーヴメントとして日本中を席巻した。

まず、『ウルトラマン』の放送開始は1966年7月17日なので、「制作が決定した」のはもっと前のこと。それから、『ウルトラQ』『ゴジラ』『ガメラ』を一列に並べて、第一次怪獣ブームが映画からテレビへと波及していったことを書いていないのは丁寧さに欠ける。P.12〜13より。

(前略)アメリカの人気SF番組「トワイライトゾーン」をモデルに「ウルトラQ」を制作した円谷プロは、基本的に1話完結の形式をシリーズの基本としており、そのスピーディーさが、高度経済成長期の感覚にマッチしたわけである。 
 もちろん、この方式は制作スケジュールにも、また制作費用においても大きな負担がかかる。最高視聴率42・8%を誇った番組がわずか3クール(39話)で終了したのも、その番組形態が制作側に大きな負担となったためである。しかし、それが逆に、登場怪獣や小道具の数の圧倒的な豊富さという特長となって、後にキャラクターの商品化につながり、円谷プロダクションに巨大な利益をもたらすことになる。

トワイライトゾーン』とともに『アウター・リミッツ』も挙げるべきではないだろうか?それから、「キャラクターの商品化」は『ウルトラQ』で既に行われている(マルサンの社長のインタビューを参照)。『ウルトラマン』は「キャラクターの商品化」をある程度計算して制作されていたわけで(予想を超えて大ヒットするのだが)、唐沢俊一の書き方だと怪獣や小道具が多かったから「キャラクターの商品化」を思いついたかのように読めてしまう。どうにも雑である。

唐沢俊一「週刊昭和」の『仮面ライダー』の解説も担当するらしいが、今回と同じように初歩的な事実関係しか書かれていないうえに作品への思い入れが感じられない文章じゃないことを祈るばかりだ。

※追記 これが「週刊昭和」の記事全文。そんなに長くない文章なのでチェックしてほしい。

※追記2 一部の記述を修正しました。

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