唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

やあ、マートン。

「アイドントライクカラサワサン」




学研のムックに誤字があった、ということで公式サイトでお詫びが出ている。ムックの中身については「蛸巻日誌2nd」を参照してほしいが、唐沢俊一も学研から本を出してほしい、などと思ってみたり。だいぶ昔には『Utan』にも参加していたことだし。



Twitterで盛り上がっていた「漫画左綴じ横書き」問題について、唐沢俊一「つぶやき日記」4月27日分で言及しているが、唐沢さんもTwitterを始めて議論に参加すればいいのに、と思うばかり。
 それよりも気になったのは、最近の「つぶやき日記」で安倍政権を支持する意見が目に見えて増えているところだったりする。たとえば、4月26日分には次のようにある。

安倍首相が、閣僚の靖国参拝に対しての中韓の反発に反論、のニュース。たぶん、安倍サンは戦後の首相の中で初めて、国が国であるために必要なものは経済的安定ともうひとつ、自分がその国の国民であると国民自身自覚できるアイデンティティの確保なのだ、という考えを実行している首相なのだと思う。

アイデンティティ確保のためには「みんな仲良く」ではやっていけない。逆に共通の敵が必要な場合もある。まさに中韓は日本をそのエネミーとして利用している。同じことを安倍サンはやっている。

在特会などのヘイトスピーチには確かにかなりの嫌悪感を抱かざるを得ないが、それに反対する立場の人々はアメリカに対し、また東電に対し、ヘイトスピーチを弄してはいないか? 急激にアイデンティティを取り戻そうとした時にはあのような先走りする連中も必ず出てくる。

戦後日本の政治は一貫して、中韓に配慮するあまり、国民に日本人として、日本の立場に立った発言を行うことを禁じてきた。今、そのゆりもどしが行われているのだ。ヘイトスピーチを弄する連中を生んだのは、本来平等であるはずの中韓日の、日本人のみに国の誇りを持つことを禁じようとした人々であろう。

 まず、在特会とそれに反対する側を「どっちもどっち」で片づけているのに驚いた。…いや、唐沢と近しい山本弘会長在特会を批判しているが、会長は東電やアメリカに対してヘイトスピーチをしてないと思うのだが。「つぶやき日記」4月28日分では、「日本の侵略の歴史を忘れるな」と語っていた河野洋平に対し、「一度は自民党を離党したのを忘れるな」とこれまた「どっちもどっち」論に持って行っているし、比較しようのないことを「どっちもどっち」にしようとしている無理矢理さが目立つ。
 それにも増して驚いたのは、「外敵を設定することでアイデンティティを取り戻そうとしている」のを肯定的に論じていること。それってとてもおっかないこととしか思えないのだけどなあ。暴走する危険性とか考えないのだろうか。そもそも安倍政権が本当にそんなことをしているのか疑問なのだが…。唐沢俊一自民党びいきなのはわかっていたが、最近の言動はだいぶ踏み込んできている、という印象がある。まあ、個人的には、唐沢さんは「鬼畜」を辞めて保守派に転向すればいいのでは?などと以前思ったことがあったので、遅まきながらその過程をたどりつつあるのかもしれないが、日本人としてのアイデンティティ云々は小林よしのりがかなり前に唱えていた話のようで取り立てて目新しさは感じられない。



 あと、4月30日分の日記には以下のようなくだりが。

D社の今後の仕事、ネットで週一〜二本の原稿を書くことになる。テレビも含め、定期仕事(連載・レギュラー)がまた増加している。出版企画の話もいくつか来ている。心臓トラブル以降、あまり体にキツいものは控えていたのを解禁したためである。あの入院が2009年6月だったから、およそ5年ぶりの解禁であり(そんなになるのか!)、そんなブランクがあっても出版社各社編集部各位、私の名前を覚えてくれていたのはありがたい。定期仕事が増えるということは収入が安定するという点ではまことに結構なのであるが、一方で行動に自由がきかなくなる面も出てくる。マネージャーシステム再構築してスケジュール管理をきちんとしとかないと、また倒れることになるぞ。


 なるほど。健康に問題があったのでは執筆量を落とさざるを得なかったのだろう。「唐沢俊一検証blog」での唐沢検証はもうまもなく終了する予定なので、今後の活動をじっくり見守れないのは少し残念な気もするが、どうか身体に気を付けて頑張ってほしい。2009年以来の解禁なら4年ぶりになるのでは?というのはさておくとしても。




●本題。唐沢俊一鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン)を読んでいて、議論の本筋とはあまり関係ないものの気になった箇所があったので取り上げてみることにする。P.146〜147、149より。

唐沢  “ヤマトン”もそうだよね。あのころ見てた。たぶんあなたがヤマトンにこだわるのは、こんな変なマンガがあったぞー、というスノッブじゃない。だって、私たちの子供のころってみんな友だちに聞くとヤマトン知ってたと。



鶴岡   知ってた。



唐沢   一峰大二というのは、ああいうヒーローマンガの第一人者だったんですよ。みんな、あれで『七色仮面』も『ナショナルキッド』も、読んでいたんですよ。にも関わらず今のマンガ、特に怪獣ブームがこれだけなってる中でなぜ一峰大二、そのマンガのオリジナル怪獣であるヤマトンが無視されるのか。

唐沢   われわれの世代は『ウルトラマン』をなんとか大人にも認めさせる、つまり良識ある一般社会に『ウルトラマン』は素晴らしいものだと認めさせようとした。ところが、そうする時にヤマトンは邪魔だったんですよ。



鶴岡   邪魔ですね。



唐沢   だからしばらくないことにしよう、隠しとこうというね、その恥部みたいなものであったわけですよ。だけども、『ウルトラマン』そのものを語るのでなしに、その周辺部分を含めたウルトラマン文化っていう大きなククリでものを語る場合に、一峰大二の『ウルトラマン』のしめる比重の大きさを認めるならば、それでゴルダーだの、ヤマトンだの、サイボーグ恐竜とかいうのもすべて話に入れないとウルトラ世界っていうのは完結しないていうことになるよね。


 「ヤマトン」というのは一峰大二による『ウルトラマン』漫画版に登場するオリジナルの怪獣なのだが、さて、ヤマトンが無視されていたことってあるのだろうか。一峰版『ウルトラマン』は秋田書店からずっと発行されていたはずだしなあ(サンデーコミックス→秋田文庫)。そもそもヤマトンは「恥部」と言われるほどひどい出来の怪獣でもないし、漫画のストーリーに良識に反する部分があるとも思えない。戦艦大和が怪獣になるなんて素晴らしい着想じゃないか。後で詳述するが本編同様に成田亨がヤマトンのデザインを手掛けていて、最近ではフィギュアにもなっているくらいだ。…だから、何がいけなかったのかがよくわからない。話のオチで10円玉が大きくなるのがそんなに恥ずかしかったのか?  サイボーグ恐竜だって何が悪いんだ、としか思えない。一峰版『ウルトラマン』は八つ裂き光輪の使い方が実に豪快なので、あれは一度映像化してほしい。
 …結局のところ、漫画版まで目が行き届いていない人が多かった、という話に過ぎないのではないか? という気がしてならない。なお、この点に関しては『ブンカザツロン』に先立って発行された『まんが秘宝 ぶっちぎりヒーロー道』洋泉社)が一峰大二作品を含めた数々の特撮番組のコミカライゼーションを詳しく取り上げていたことを付け加えておく。
 …とはいうものの、かつての詳しい事情については唐沢俊一より20歳近く年下の自分には分かりかねる部分もあるので、ヤマトンをはじめとしたマンガオリジナル怪獣の扱いに関して年長の特撮ファンの方からご意見を承りたいところである。



 P.150、152より。

鶴岡   成田亨さんの原画があるんですよね、ヤマトンに関しては。でも、どういうシステムでヤマトンが生まれたのかわからないんですよ。ヤマトンって成田さんの画集にも出てるんですよ。唯一。ウェットンも出てないのに。ヤマトン誕生の経緯ってのが、俺は本編で。(原文ママ)実はグビラはヤマトンになる予定だったんじゃないかって睨んでるんですよ。



唐沢   なるほどね。あのデザインでいちばん似ているっていえばグビラだもんね。



鶴岡   グビラはヤマトンになる。



唐沢   目から鼻の方が先に出てるという形ね。



鶴岡   で、やってる最中に、「大和じゃねえだろう」って誰かが言い出して。



唐沢   それで成田さんがつむじ曲げちゃったんで、それじゃアイアンロックスで大和出しますからみたいなかたちでやったんじゃないかな。



鶴岡   はははははは。



唐沢   アイアンロックス本当はね、水に沈んでいるところに顔があったんですよ。



鶴岡   あったんですねあそこ。アイアンロックスってつまらないデザインですもんね。ゴミの塊みたいで。あんなもんよく見ますよゴミ捨て場なんかで。

 ヤマトンの原画が収録されている成田亨画集 ウルトラ怪獣デザイン編』朝日ソノラマ)の巻末には成田本人によるデザイン画の解説があるのだが、ヤマトンの項には次のように書かれている。

ヤマトン―ウルトラマンの放映終了後にデザインした漫画用の怪獣デザインです。


 …鶴岡氏はヤマトンが誕生した経緯をあれこれ勘繰っているが、成田が語っているそのままなのではないか? ヤマトンがグビラになったなどと考えるよりはそっちの方がずっと自然だもの。それに成田は同じ画集の解説でグビラのデザインはがモチーフだと語っているので、ヤマトンとグビラはハッキリ別物だと考えた方がいいだろう。個人的にはヤマトンはグビラよりゴルゴスに似ているような気がするが…。


 で、アイアンロックスの話に移るが、実はアイアンロックスのデザインは成田が『ウルトラセブン』を途中降板するきっかけになっていたと、ひし美ゆり子『アンヌとゆり子』同文書院)に成田が寄稿した文章の中で書かれてある。同書P.253〜254より。

 回を重ねるとこの企画者が不思議なことを言い出しました。次は戦艦大和を怪獣にしてくれ、と言うのです。そんなもの怪獣になるわけがない、あまりにもマンガ的な発想です。私は特撮はマンガとは全く違うと思っていましたが、言い争って企画にまでハマリ込む気にもならず、なんとか大和の怪獣を作りましたが、今度は恐竜戦車だと言うのです。私はこのプロダクションは永く居るところではないナ、と思い始めました。さらに困ったのは全身にケロイドをつけてくれと言う監督が現われ(原文ママ)、私が築いた美学は否定されようとしています。


 「ケロイド」云々はスペル星人で、「監督」というのはもちろん実相寺昭雄なのだが(他の著書を見ても成田は実相寺にわりと辛辣な言葉を吐いている)、恐竜戦車、あんなにカッコいいのに!と少なからずショック。成田さんはタルカスもダメなのか?などと思ったり。アクア恐竜戦車。ただ、前出の画集にはアイアンロックスとスペル星人のデザイン画が入っていない一方で、恐竜戦車のデザイン画が収録されているのが不思議と言えば不思議。なお、『アンヌとゆり子』は『ブンカザツロン』より1年前に出版されていたので、チェックすることは十分可能だったものと思われる。
 それにしても、成田亨のコメントを見る限り、唐沢俊一の推測とは事情は真逆だったとわかる。成田は大和を怪獣にするのを嫌がっていたわけだからね。だいたい、この場合はつむじじゃなくてヘソを曲げるものだろう。
 あと、唐沢の発言にあるアイアンロックスの「顔」というのもよくわからない。ヤマトンみたいな怪獣らしい顔だったのか、いかにもロボットっぽい顔だったのか。個人的には、「カラサワセブン」でもネタにしたが、桑田次郎による漫画版『ウルトラセブン』に出てきたアイアンロックスにが付いていた方が気になる。ミミー星人の内部で「あんなの飾りです」みたいなやりとりがあったのかも、と妄想。



 最後に余談をしておくと、かつて唐沢なをき桑田次郎描くところのアンヌ隊員を絶賛していた。その気持ちよくわかります。




タコシェで既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』『唐沢俊一検証本VOL.2』『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』『唐沢俊一検証本VOL.3』『唐沢俊一検証本VOL.0』「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。タコシェの店頭でも販売しています。
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