唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

山本弘検証blog。

「冒険風ライダー」さんから紹介された山本弘「と学会」会長のブログの記事が結構ヒドいので突っ込んでおく。
 この「MAD問題:権利者削除は無益な行為だ」という記事は、タイトル通りMAD動画を削除することに問題があることを指摘している。山本会長は最初に一度ネット上にアップされたMAD動画を抹消することは不可能であると指摘している。これはその通りだが、動画と同様に文章も抹消できないのだから山本会長も気をつけた方がいいと思う。保存されちゃってるから。
 しかし、第二の指摘には首を捻ってしまった。

 第二の問題は、そもそも著作権侵害して何が悪いのか、という点である。
「悪いに決まってるじゃないか!」
 と言われるかもしれない。しかし、ちょっと冷静に考えてほしい。著作権法違反は親告罪である。著作権を有する者が訴えない限り罪にはならない。
 すなわち、いくら著作権を侵害していようとも、権利者がそれを黙認しているなら、犯罪ではないのである。

…山本会長は「親告罪」がどういうものなのか分かってるのかなあ?「親告罪」というのは「被害者等からの告訴が無いと公訴を提起できない犯罪」のことである。つまり、「被害者の告訴」というのは公訴が有効に成立するための条件(訴訟条件)なのであって、犯罪が成立するための条件ではないのだ。被害者が訴えなかったからと言って、法律に違反していることには変わりはないのだから、著作権の侵害は「悪い」ことである。会長はそこらへんをカンチガイしている。たとえば、強姦罪親告罪なのだが、山本会長は強姦罪も被害者が訴えないと罪にならないと言うのだろうか。まあ、法律論のうえでは必ずしも間違っていないのかもしれないが、そういう理屈が果たしてどれだけの賛同を得られるものなんだろうか?法的な面だけじゃなく倫理についても考えていく必要があるんじゃないのか?…そう思いつつ続きを読んで思わず唖然としてしまった。

「パロディ」「二次創作」は、「盗作」とは根本的に違う。後者は原作があることを隠蔽して自分の功績であるかのように見せかけることで、原作者の努力を踏みにじる悪しき行為だが、前者は読者が原作を知っていることが前提であり、原作への愛が原動力になっている。

…なんでいきなり「愛」とかそんな話になっているんだ?前の方では「親告罪」とか法律の話をしていたのに。「パロディ」や「二次創作」だって著作権侵害に成り得るし、「原作への愛」というものは著作権の侵害について判断するうえで全く関係がない。いわゆる「パロディ事件判決」最高裁1980年3月28日)を読んでもらえば分かるはずだが、著作権侵害を判断するうえで問題となっているのは「表現の態様」なのであって、判決でも表現について具体的な判断が行われているのだ。法廷で「原作への愛」を語ったところでほとんど意味はないだろう(刑事裁判なら情状に影響があるかもしれないが)。…というか、山本会長だって本の内容がトンデモなら作者の気持ちと関係無しに「トンデモ本」だと認定すると思うんだが。「愛」があれば何でも許されるというものでもなかろう。法律論を一貫して書けないんだったら最初からやらなきゃいいのに

MADではなく本編映像はどうだろう。本編映像のアップはDVDの売り上げを妨害するだろうか?
 そうは思えない。もともとDVDを買う層というのは、テレビの画質では満足しない者たちや、特典が欲しい者たちではないのか。彼らがニコ動の小さい画面で満足するとは考えにくい。
 また、深夜アニメの場合、地方によっては視聴できないものもよくある。しかし、誰かがニコ動にアップすることによって、日本全国誰でも見ることができるようになり、それによって知名度は高まる。つまり、ただで全国ネットしてもらってるようなものではないか!

 自分も長く地方在住だったから見たい番組が見れない苦しみはよくわかるし、YouTubeニコニコ動画に本編がアップされていたら見てしまうかもしれない(視聴することは違法ではないけどあまり堂々と言えることじゃない)。しかし、だからといって著作権侵害が正当化されるわけではない。地方在住のファンのためには、ネット配信やCSといった手段で番組を見やすくなるようにすればいいのであって(現在ではタイムラグはあるもののだいぶ視聴しやすくなってきている)違法なアップロードをもって「ただで全国ネットしてもらってるようなものではないか」と言うのはおかしい。そういうのを「盗人猛々しい」というのだ。山本会長の小説のデータがwinnyか何かで出回ってタダ読みされていたとしても、会長は平気なんだろうか?まあ、会長ならちゃんと儲かるための仕組みを考えているんだろうけど。

 この記事の問題点を挙げてみると、
(1)法律に対する無知
(2)論理の一貫性の欠如
(3)著作権の軽視

ということになる。
…なんだか「トンデモ」さんとしての条件を揃えているような気が。自分は山本会長が唐沢俊一の盗用を批判しないのは、唐沢に気を使っているせいだと好意的に解釈していたのだが、実際のところは山本会長も著作権というものを軽視していて、盗用を「そんなに大したことじゃない」と考えているんじゃないのか?とこの記事を読んで思ってしまった。あと、MAD動画や同人誌と著作権法が調和するあり方を考えることなく、「儲けることを考えろ」と実利主義的なことしか書いていないのも気になる。普段は正義感にあふれている会長なのに。いずれにしても、著作権を軽視しているのはクリエイターとしてどうなの?と思うし、論理が一貫していないのは小説家としてどうなの?と思うし、トンデモじみた話を書いているのは「と学会」の会長としてどうなの?と思うのだが。