唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

泥棒野郎。

唐沢俊一の誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいガセとパクリのすべてについて教えましょう」でもよかったんだけど、シンプルな方を採用。

 12月14日の『朝日新聞』唐沢俊一ウディ・アレンの短編集『ただひたすらのアナーキー』(河出書房新社)を書評している。

好きな作家の27年ぶりの作品集を読むのは、40代になって高校の同窓会に出かけるようなものだ。初恋の人との再会は楽しみだが、長年抱いていた面影が現実に直面して、失望するのではないかという不安にもかられてしまう。

 20代半ばの頃、『羽根むしられて』『これでおあいこ』『ぼくの副作用』といった傑作群に出会い、その才知と文体に驚き、映画人として日本でもようやく認められかけていたウディ・アレンに惚(ほ)れ込んだ者として、27年ぶりに彼の新作が読めるのは、喜びと共に、まさに初恋の人のイメージが崩れはしないかという不安とが相半ばする、複雑な心境だった。

 はい、時空を歪ませるのは禁止。ウデイ・アレンの短編集が初めて日本で出版されたのは1981年(「ガンダム論争」の年ですね)だが、その時点で既にウディ・アレンは日本の映画ファンにもすっかり認められていたのだ。過去のキネマ旬報ベスト・テン外国映画部門を見ればすぐにわかる。
アニー・ホール』=1978年10位
『インテリア』=1979年5位
『マンハッタン』=1980年5位

もはや常連といってもいい。というか、普通に考えれば日本の映画ファンに人気があったから短編集が出版されたんだと思うはずなんだけど。無理して先見の明を誇ろうとした結果がこれだよ!
 それから「文体」って何?原書で読んだのならわかるけど。『脳天気教養図鑑』によれば、唐沢俊一は高校生のときに「井上一夫訳と平井呈一訳の「Yの悲劇」の差は」とか論じていたほど翻訳にはうるさい人らしい(その割には『エジプト十字架の謎』を誤読しているんだけど。詳しくは9月20日の記事を参照)。ついでに『脳天気教養図鑑』の他の面白発言も紹介しておくと、

「ちっちっちっブラッドベリのその作品は「火星人記録」と言ってもらいたいですね」
「ツツイやコマツなんてガキっぽくてさ、やっぱり山田風太郎……」
「国刊さんも困るんだよな、こう装丁にばっかり凝って内容のともなわない本だしちゃあ」

…高校のときから成長してないんじゃないか?まあ、ガキっぽいって言ってる割りには筒井康隆に無断で『バブリング創世記』を有料イベントで朗読していたりするんだけどね。

 最初の数編を読み始めたとき、ああ、これはやはり年齢による筆力の衰えは否めないかな、と不安が的中したような気分になった。昔の作品にあったイメージの奔放な飛躍とナンセンス度が薄れ、ストーリー(あって無きがごとしといえども)が定型化しているように思えたのである。

 中には、かつての才気がまだその輝きを失ってはいない作品もあることはある。

 宇宙物理学用語で浮気ばなしを語る「のぼせ上がって」や、ミッキーマウスがアニメ界の友人たちのハリウッド的堕落を嘆く「ディズニー裁判」などは往年の作品を彷彿(ほうふつ)とさせる佳作だが、何かが違うのだ。

 もちろん、27年の間に読者であるこちらも年を重ねている。以前には気がつかないでいた点だが、アレンの全作品に共通する過剰なまでに極端な形容(「僕の寿命を十九世紀の炭坑夫のレベルまで引き下げるために作られたフィットネス・プログラムの一環」など)は、“しゃれた比喩(ひゆ)表現”にしなければならないという現代アメリカ文学に共通する強迫観念に対してのパロディーではないかと思いあたった。であれば、これはまさにアレン的皮肉である。

 まず、「“しゃれた比喩(ひゆ)表現”にしなければならないという現代アメリカ文学に共通する強迫観念」というものが本当に存在するのかどうかわからない。ライ麦畑でつかまえて』を驚異的に読み間違えていた(詳しくは10月11日の記事を参照)人間が「現代アメリカ文学」を語るというのも恐ろしいことだが。次に、そのような「強迫観念」があるとしてもウディ・アレンが「パロディー」としてそれをやっているかどうかわからない。…いやあ、ウディ・アレンは映画の中でいつも「過剰なまでに極端な形容」のおしゃべりをしてるんだから、小説でも映画と同じ事をやってるだけなんじゃないか?「であれば、これはまさにアレン的皮肉である」って仮定に仮定を重ねたうえで結論を導かれても説得力がまるでないよ。

 ちなみに、中野翠イッセー尾形の公演を観に行った際に、前説で登場した唐沢俊一が観客を怒らせる場面に遭遇し(詳しくはまとめwikiを参照)、若き日の唐沢のことを「ウディ・アレンに似ている」と思ったらしい。

ただひたすらのアナーキー

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バブリング創世記 (徳間文庫)

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脳天気教養図鑑 (幻冬舎文庫)

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Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

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ラクガキ いっぷく

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