泥棒のようにパクり詐欺師のようにガセを書く。
昨日に引き続きフレッド・ブラッシーにまつわる唐沢のガセ発言。
唐沢俊一・村崎百郎『社会派くんがゆく!乱世編』(アスペクト)P.306
だいたい、ガチじゃなくちゃ燃えられない、ってのはフィクションに乗れない、という自らの脳の柔軟性のなさを表しているんだがね。猪木=アリ戦のとき、マッチメイク担当で来日したフレッド・ブラッシーが、猪木がマジな勝負を望んでいると知って愕然とした、って自伝に書いてる。いい試合を見せて客を興奮させて楽しませるのがプロなのにね。
…あのー、唐沢俊一って『フレッド・ブラッシー自伝』(エンターブレイン)を絶賛していたよね。なのに内容をサッパリわかっていないじゃないか。ブラッシーは猪木=アリ戦がシュートになって愕然となんかしていない。せいぜい猪木サイドの姿勢にとまどっている、といえる程度だ。『ブラッシー自伝』には猪木サイドの内情についてほとんど書かれていないことから、ブラッシーは猪木サイドの考えを知ることはできなかったものと思われる。だから、「猪木がマジな勝負を望んでいると知って」というのは、唐沢の脳内補完にすぎない。そもそも、事実関係の理解がおかしい。『ブラッシー自伝』P.327でビンス・マクマホンはこのように言っている。
もともとアリと猪木の試合はワーク・ファイトになる予定だった。これは紛れもない事実だ。だが、アリが日本に行ってひと目猪木を見るなり、“なんだ、こんなヤツは楽勝だ”と言い出したのだ。それにつられて、アリのコーナーマン(セコンド)のドリュー・“バンディーニ”ブラウンや取り巻きたちが「もちろんだ、チャンプ!ケツの穴を蹴り上げてやれ!おまえならやれる!」と煽ったせいで、一転してシュートの試合になったわけだ。
というわけで、『ブラッシー自伝』の中では「マジな勝負を望んでいる」のはアリの方だったとされているのだ。一体どこを読んでいるのだ(だから『裏モノ日記』に書かれた『ブラッシー自伝』の感想もおかしい)。ブラッシーは試合がシュートになったことについては何も述べていない。比較的冷静にアリをサポートしようとしている。『自伝』P.330より
事実、この試合がなんの仕掛けもないことがわかるや、私は真剣にアドバイザーの立場に切り替えた。レスリングを知り尽くしている私は、アリに様々な動き、とくにグラウンドの動きに対する対処方法を教えることに徹した。
たしかにブラッシーは「いい試合を見せて客を興奮させて楽しませるのがプロ」だと思っていたから、猪木=アリ戦がシュートになったことを快く思っていたわけではない。しかし、その反面、このようなことを口にしていることにも注目すべきだろう。『自伝』P.325より
アリは素晴らしい男だった。自分の感情をコントロールでき、グローブを着けた時とは別人の顔で私に接してくれた。だが、私には猪木に勝ってほしいという気持ちが心の奥底にあった。私はいままで自分のやってきたことはすべて“フェイク”だと言われ続けてきた。その同じ職業の男が世界最高峰のボクサーを倒すのはじつに痛快だと思ったからだ。
ブラッシーほどのプロフェッショナルでも「フェイク」と言われることはこたえるのだ。唐沢が考えているほどブラッシーは単純な人ではない。
ちなみに、今回の記事のタイトルは言うまでもなく「蝶のように舞い蜂のように刺す」のモジリだが、この言葉を最初に言ったのはアリではなくブラッシーらしい。
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