半可通王子。
唐沢俊一のこと。
『週刊プレイボーイ』2月14日号の特集『これからの「佑ちゃん」の話をしよう』に「コラムニストの唐沢俊一氏」が登場して、斎藤佑樹についていろいろとコメントしている。『週刊新潮』と『プレイボーイ』は依然として唐沢を起用しているのだな…。ぐらもんさん、情報ありがとうございます。
不思議な22歳だ。
夏の甲子園優勝に、50年ぶりの早慶優勝決定戦での勝利。ドラフト1位でプロ入りすれば、自主トレ段階から鈴なりのファン。ここまであらゆるモノを「持って」いながらも、人々は決してそこに負の感情を抱かない。
コラムニストの唐沢俊一氏が苦笑まじりに呆れる。
「ここまで何もかもできすぎだと、やっかみが生まれてもおかしくないのに、彼に対しては不思議とそういう気がまったく起きないんですよね」
唐沢俊一のような「やっかみ」をモチベーションにしている人がこういう事を言うのは面白い。しかし、斎藤について「高校のときの方がよかった」「プロでは通用しない」という批判がよくされるが、それには「やっかみ」も含まれているのではないのだろうか。
注目されると、凡人は所作がぎこちなくなる。だけど、佑ちゃんにはそんなそぶりはない。前出の唐沢氏。
「斎藤は恵まれすぎている自分の境遇にまったく照れがない。ちやほやされてもイヤみ(原文ママ)にならず、かといって必要以上に謙虚にふるまうこともない。すべてを当然のように受け入れ、屈託がない。これは新しいヒーローの形ですよ」
斎藤佑樹は「新しいヒーロー」というよりは、むしろ正統派の「優等生」なのではないだろうか。近年ではイチローや中田英寿のようなクールなヒーローがもてはやされていたから、彼の登場は余計に新鮮だったのだと思う。
長嶋さん、そしてイチロー。誰もが認める天才で人気者だ。だけど、天然すぎたり、修行僧のようだったりと、人気者だけど、どこか凡人には近寄りがたいオーラをふたりは発している。
ところが、佑ちゃんにはそんな孤高の天才オーラはない。どちらかというと、そばににじり寄り、婿や息子にしたいという気持ちにさせてしまう。
前出の唐沢氏が太鼓判を押す。
「斎藤人気はゴルファーの石川遼や演歌の氷川きよし人気と似ている。共通するイメージは親孝行です。しかも、スポーツの世界で結果も残している。ファンの女性からすれば、『ウチの息子や婿も佑ちゃんみたいだったらよかったのに』という感覚に激しく駆られるというわけです」
…いや、それは単純に斎藤佑樹が「天才」タイプじゃないから、長嶋茂雄やイチローとは違うように感じるだけでしょう。イチローはお茶目なところもあるから別に「修行僧」じゃないんだけど。あと、斎藤と石川遼と氷川きよしをいっしょくたにしているのもヘンなんだけど、同じ特集の中にある門田隆将のコメントとカブっているのもどうかと思う。
斎藤には中年女性ファンが多いでしょ? この層は氷川きよしやペ・ヨンジュンのファンとピッタリ重なります。3人に共通するのはズバリ、『中性的な魅力』です。斎藤の持つ、中性っぽさに中年女性が魅せられています。『男』というものを前面に押し出さないところが、特に中年女性の心をわしづかみにしているのでしょう
中年女性に人気がある→氷川きよし、という流れは同じだが、「親孝行」よりは「中性的な魅力」の方が説得力はある。編集者もカブらないように気をつければいいのに。気をつけていたらそもそも唐沢にコメントを頼まないのでは?とも思うけど。
さて、実は唐沢俊一はかつて『社会派くんがゆく!』の中でも斎藤佑樹について語っている。『社会派くんがゆく! 乱世編』(アスペクト)P.306〜307より。
村崎 しかし、演技でもああいう下品な芝居(引用者註 亀田興毅の世界タイトルマッチ)ばっかり見せられているから、逆に今年の甲子園は盛り上がっちまったんだよな〜。
唐沢 あれはオーソドックスというか基本に戻ったというか、マンガみたいな展開をマジでぶつけてきたね。バカでもわかる好勝負。まさにマクルーハン言うところの感覚メディアというか。
村崎 昔の選抜って、ちょっと人気のある投手が出てきたら、打席に立ったときにワザとデッドボールぶつけてやるとかよくあったんだけど(笑)、今回はお互いそんなのもまったくなかったしなあ。おまえらそれでも若者かって気もするぞ(笑)。野球ってもっとクソ小汚いスポーツだろうが!
唐沢 これもさっき言った、フィクションに乗れない日本人のアタマの悪さから来た人気だよね。これじゃプロ野球は視聴率でかなわない。だってローテーションも何も無視した、下手すると肩を壊して野球人生棒に振るような連投に感動するんだもの。野球のルールすら知ってんだかどうだかわかんないおばさんたちが自分らの出来の悪い息子と引き比べて感動して、“ハンカチ王子”なんて呼んで。斎藤なんて、最初はクールさでもって“白い悪魔”とか呼ばれてたんだろ。それがいきなり“王子”。
村崎 ハンカチの折り方までこだわりがあるんだってな。あれ、周囲の目も気にせず喫茶店で顔や全身(ワキの下や股間までも)拭きまくる全国のオシボリ親父が勘違いするぞ(笑)。でも、これだって亀田祭りであんなに薄汚れた世界を見せ付けられて嫌気が差した国民が、品行方正で上品なハンカチ王子の佑ちゃんに飛びついたってだけのような気もするな。
唐沢 その意味じゃ、下品と上品、ヒールとベビーフェイスって対比させて見られたし、ドラマ性は十分あったんじゃない?
こうして見ると、「おばさんたちが自分らの出来の悪い息子と引き比べて感動して」というあたりは『プレイボーイ』でのコメントとそれなりに一貫してはいるんだな。もっとも、『プレイボーイ』のコメントがいかにヌルいのかもわかってしまうのだけど。
…しかし、スポーツに興味がないのは別に構わないんだけど、スポーツに熱狂する人を「フィクションに乗れない日本人のアタマの悪さ」と切って捨てるのはやめてほしい。早稲田実業vs駒大苫小牧はフィクションを超えた名勝負だったんだから。あれをドラマやマンガでやろうとしたら「ありえない」って文句を言われると思う。横浜vsPL学園の延長17回の死闘もそうだし唐沢がクサしていたWBCもそうだ。野球以外だとこないだのアジアカップだってそうだしね。アジアカップ優勝と長友佑都のインテル入りが嬉しいから(それにボクシングのW世界戦がどちらも好試合だったから)、しばらくは唐沢俊一に優しくしようかと思う(嘘)。
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