唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

NO MORE セル画泥棒。

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 久々に唐沢俊一鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン)の検証に戻る。まず最初に同書第1章P.48〜49の唐沢と鶴岡氏のやりとりを紹介する。

唐沢 変な話だけど、セル画を盗むというのがね、第一世代オタクの、ある種のイニシエーションだった時代がある。セルに限らないな。ポスターであるとか、なにかグッズであるとか、それをいかにして盗んだかという話がね、第一世代のある種の勲章なんだな。で、オタクにとってその犯罪行為は肯定さるべき(原文ママ)なんじゃないか、と。口にこそ出さないけれど、われわれの世代はみんな、そう思っている。そのことを志水一夫との対談集『トンデモ創世期2000』(原文ママ)でも話したんだけど、あそこがあの本で、いちばん非難されたところだったね。盗み話をするっていうこと自体、それを肯定するってこと自体を第二世代の人は怒るわけだ。つまり不道徳であると。


鶴岡 ね。やりすぎたからですよ、第一世代が。


唐沢 それもある(笑)。だけどもね、ああいう犯罪行為すれすれみたいな形のものを……。


鶴岡 犯罪行為だって(笑)。


唐沢 そりゃそうだ(笑)。窃盗ですからね。ただそういう反社会行為を行なうことで“俺はオタクなんだ、っていう自意識にカタチを与える”という意味はあると思うんですよ。あるでしょう、村の青年組に入るには、どこそこの家の娘に夜這いかけなきゃならん、みたいな。あるいはアフリカの部族の成人式におけるライオン狩りみたいな通過儀礼。常人としての法(のり)を超えるために、体に刺青入れてみたりとか、鼻に穴あけて骨通してみたりだとか、そういう痛みを伴う傷をつけるということによって自分が一段普通の人間のレベルを超えたことができるっていう、自己催眠ね(以下略)

 いや、そんな話をしたら批判されて当たり前だろう。あびる優を笑えないって。「やんちゃ」の自慢として考えてみても、地方でのんきに学生生活を送っていた自分でも、不良グループやエクストリーム系の運動部の「通過儀礼」の凄まじさは感覚的になんとなくわかっているから、それと比べてみても唐沢の話は本当に大したことがない。飲み会で上司にこんな話をされたら反応に困るなあ。まあ、唐沢さんは平穏な学生時代を送られたようで何よりですが。
 そもそも、オタクって「反社会的」な存在なのだろうか? セル画泥棒については岡田斗司夫も『オタク座談会』で話していたけど、唐沢ほど大っぴらに認めてはいなかったはずなのだが。他の「オタク第一世代」のみなさんもセル画泥棒を肯定しているんだろうか。今風に言えば、ネット上に映像を違法アップロードすることも「通過儀礼」だったりして。


 さて、唐沢が批判されたと語っている『トンデモ創世記2000』(イーハトーヴ出版)でのセル画泥棒の話も見てみることにしよう。なお、『トンデモ創世記2000』は後に扶桑社で文庫化されているが、セル画泥棒の話が入った第3章「学問の意味を教えてあげよう」は文庫版ではすべてカットされている。…セル画泥棒が「勲章」だと思っているなら文庫でも載せればよかったのに。
 では、『トンデモ創世記2000』P.182、「もちろん、泥棒を肯定するわけじゃない」より唐沢と志水一夫のやりとりを紹介する。

志水 オタクの中には手癖悪い奴がいますからね。


唐沢 その話しましょうよ。


志水 (爆笑)


唐沢 昔そんな話ばっかりだったもん。セルだの、ぬいぐるみだの、コレクターの持っているものって、みんな盗品ばかり。それで、あらぬ非難を受けたことがありましてね。某なべやかんさんの家に岡田斗司夫が行ったとき、「これはどこそこから取ってきたんです。これはどこそこから取ってきたんです」っていうのを聞いて岡田斗司夫が、彼こそはオタクの中のオタクだって喜んで書いた文章があるんですが、今のオタクの人たちは潔癖症な人が多いらしくて、それを読んだある人が、「某なべやかんさんの行為は窃盗である」と。


志水 ま、そうだわな。


唐沢 それを「糾弾するならともかく、すごいと褒めるとは何事だ」と(笑)。こいつらは『ルパン三世』見て、ドロボウを称賛する話を作るとは何事だ、と怒るのかなと思った。確かにその通り、窃盗は悪い行為なんだけど、あそこにあるもののほとんどは、彼が盗んでおかなければ、捨てられてこの世に残らなかったものなんですよね。


志水 捨てるのを待ってたんですよね。


唐沢 昔はみんな、東宝撮影所の近辺にたむろして、捨てられるのを待ってた。いつ捨てるかわからないものは持ってきてしまう。もちろん行き過ぎもあるけどね。ごみ箱漁るようなところからオタク文化は出たんだよって言いたい。社会通念で割り切ったところからなんて、何も生まれない。


志水 うん。ま、そうですね。


唐沢 もちろん、泥棒を肯定するわけじゃない。しかし、泥棒するっていうことに良心のとがめを感じない人間がオタク界のヒーローだったっていう、そういう歴史的背景があることを押さえておかないといけない。

 一応言い訳はしているけど、かなり凄いことを言っている。「オタク界のヒーロー」って村崎百郎みたいだ。
 それにしても、盗みを「よくないこと」だと思うのは常識的な反応だろう。それを「潔癖症」だと考える方がズレているのでは。でも、唐沢俊一の盗用が発覚しても、それでもまだ「ファン」を名乗る人が多いことを考えると、唐沢が憂えるほど世の中に「潔癖症な人」が多いわけでもないようだ。よかったですね。
 『ルパン三世』云々については、「現実とフィクションの区別がついていない」としか言いようがない。『ルパン』の中でも盗みは「よくないこと」として描かれているだろうに。 


 もうひとつ、P.217〜P.218より。

唐沢 さっきも言った映画のグッズを盗んではならない、泥棒は良くないって言ってる奴には、所詮映画の楽しみはわからないんじゃないかな? 淀川(引用者註 長治)さんの話でね、「坊ちゃん、お嬢ちゃん、映画をご覧なさい。お金がないときは、お父さん、お母さんの財布から映画の代金だけ取ってご覧なさい。それは後からアルバイトして返すんですよ」って。


志水 (笑)


唐沢 「本当に見たい映画は、今見ないと、見られないことがあるから。映画を見るためには悪いことかもしれないけど、お父さん、お母さんからちょっとだけお借りなさい。内緒でお借りなさい。そのとき見た映画があなたの人生を変えるかもしれないんですよ」って。


志水 へー、すごいなー。それを言い切れるってのがね。

 ふーん、じゃあ、俺なんか「映画の楽しみ」をまだわかってないんだ。泥棒してまで知りたいとも思わないけれど。
 淀川長治がどこでそのような発言をしていたのかはわからないが、注意すべきなのは「それは後からアルバイトして返すんですよ」と言っていることだ。お金を返さないと泥棒になってしまうから、そうならないようにしろ、ということだろう。映画のために泥棒をしてもいい、と言っているわけではない。唐沢も盗んだものを返すように。


 P.218より。

唐沢 盗みは良くないって大原則はあるんだけど、それで全部割り切っちゃうとね。変な話だけど、一回も罪を犯してません、私の人生は潔白ですって人生はつまらないと思うんだよね。


志水 お前また罪を犯したな。嘘をついたな、って。


唐沢 そうです、そうです(笑)。池袋の文芸坐で監督特集とかやるとね、監督の似顔絵がズラーっと描いてあるイラストポスターがあってね。日本は黒沢明円谷英二本多猪四郎大島渚。海外はトリュフォーキューブリック……。上映の最終日に、売店のおやじに、「これくれませんか?」って言ったら、けんもほろろに断られてカチンときてね。通りに面したところが物置になってて、誰もいなかったから、クルクルってまるめて持ってきちゃいましたよ(笑)。

 窃盗の容疑者と面会しているような気分になってきた。反省がまるで感じられなくて困る。
 文芸坐のポスター窃盗事件については2010年9月14日の記事を参照してほしいが、「欲しいものが手に入らなくてムシャクシャしてやった」という短絡的な犯行でしかない。この盗みがオタク文化にどのように寄与しているというのか。ぶっちゃけた話、ただの万引きじゃん。人間は罪悪感をなくしたら本当にダメになってしまうのだな。


 余談だが、『トンデモ創世記2000』P.208にこんなくだりがあった。

志水 そうだね。『風と木の詩』(編注:萩尾望都作)とかあの辺の影響力を考えるとね。

 さすがにこれはない。

 『トンデモ創世記2000』の奥付によると、同書の担当編集は北田陽士・藤井晃一の両氏とのこと。



 
 若き日の窃盗行為を「やんちゃ」として大目に見ることもあるいはできるのかもしれない。有名人がインタビューで過去の悪戯を告白をすることはたまにある。もちろん、大目に見るためには「本人が反省している」「あくまで過去の行為である」といった条件をクリアーする必要があるだろう。
 しかし、唐沢俊一の場合、この人はプロになってからも盗用をたびたびくりかえしていることを考えると、過去の「やんちゃ」としてとても見過ごせるものではない。反省もしていないし、盗用は現在進行形の問題なのだし。「ポスター泥棒は盗用のはじまり」と言ったところだろうか。それに、ここまで「盗み」について肯定的な態度を取っていることも、盗用につながっていると考えるのが当然だろう。…俺はライターを検証しているのであって、犯罪者を検証しているわけではないんだけどなあ。どうしてこの人はこんなにまで悪ぶるのか。


 今回もうひとつ重要な点は、唐沢俊一「オタク=反社会的」という文脈で話をしていることで、この点は次回もう一度考えてみたい。



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