けいかん!
3巻がとても面白かったのでアニメ第2期を期待してしまうなあ。
『ラジオライフ』2010年2月号に掲載された『唐沢俊一のトンデモ都市伝説探偵団』第2回は「警察官は噂話のネタだらけ!?」とサブタイトルにあるように、警察官と関係のある都市伝説を取り上げている。
最初に取り上げられているのは「三億円事件」にまつわる都市伝説である。
ところが、最近、実際にあの犯人は警察官、もしくは警察官の身内だったのではないかという話が出て話題となった。事件の5日後に、白バイ警官の息子が青酸カリを飲んで自殺を遂げているのである。
「最近」もなにも1991年に放送された『新説・三億円事件』というドラマは同様の設定で描かれている(犯人を演じたのは織田裕二)。
しかも、ドラマの原作が収録された『現代虚人列伝』は1979年に出ている。唐沢俊一にとっては「ガンダム論争」も「最近」の出来事なんだろうか。
次に「少年探偵すばる」のセリフ。
それからこういうのもあります。ある女性が公園の女子トイレに入ったら、中に男がカメラを持って立っていた。その女性が驚いて、“こんなところで何してるんですか!”と訊いたら、男はまるであわてずに警察手帳を出して、“盗撮です”と答えて、また何事のなかったかのようにカメラをのぞき込み始めた…
えらく堂々とした盗撮だなあ。映画の撮影みたいだ。2008年2月にのぞき目的でトイレに侵入したところを見つかった警官が警察手帳を見せたという事件があったから、これがモトネタなのかもしれない。
次に「カラサワ探偵長」のセリフ。前回同様、セリフと唐沢俊一の地の文が混ざっているせいで読みにくい。
(前略)トイレと警察、というのは都市伝説になりやすいのかな。『赤いはんてん』という都市伝説もトイレと警察が出てくる話だし
“赤いはんてんが欲しいか”と声が聞こえるという噂の公衆トイレ。女性警察官が変装して入ったら声が聞こえてきたので、「くれるならよこしなさいよ!」と叫んだら、天井から延びてきた腕に首をねじ切られて殺され、壁一面に血しぶきの斑点があった…。
…都市伝説としては傑作だがどうもリアリティに欠ける。その分、“盗撮です”は最近、現職警察官の痴漢事件も多いから妙にリアルだな。
あの「えらく堂々とした盗撮」がリアルなのか。それにしても、「赤いはんてん」を警察官が関係した都市伝説として紹介するのはどうなのかなあ。だって、これは警察官でなくても成立する話だし(たとえば女性教師でも別に不都合はない)。そもそも話自体が「赤い紙」の変形だしね。「赤い紙」と「青い紙」が出てくるのは全国共通みたいなんだけど、うちの田舎では「黄色い紙」もあって、「黄色い紙」と答えるとヤバい国に連れて行かれるという話だった。…血まみれになって死ぬのも嫌だけどヤバい国に連れてかれるのもなあ。あと、「赤いはんてん」のあらすじを紹介した文章がやや乱れているような。
そして、「少年探偵すばる」と「カラサワ探偵長」の掛け合い。
(前略)女性警察官の代名詞みたいなミニパトの交通警察官ですが、あれ、何かあまり役に立ってるように見えなくないですか?
いわれてみれば、他にもっと大事な仕事もありそうな気も
そう。だからあの交通警察官の女性は、警察官として役に立つから雇っているのではない、という噂です
1960年代末に警察庁長官を務めた後藤田正晴という人がいたが、この人が長官だった時代は、よど号のハイジャック事件やあさま山荘事件など大きな事件が立て続けに起こり、警察官がその事件に巻き込まれて命を失ったりすることが多かった。また、命の危険を伴う仕事のため、結婚がなかなかできない警察官も多かったのだ。後藤田正晴は後に政治家に転身したが、ある時、同僚の代議士は知人の結婚式の仲人をやたら引き受けているのに、自分は滅多にそういうことを頼まれないのに気が付いた。かつての自分の部下の既婚率を調べてみると、その数字の低さに愕然。何とか結婚相手を見つけてやらねばならん、と考えた結果、女性警察官を大量に採用して、職場結婚しやすい状況を作らせたという。
女性警察官の多くが警察官とは名ばかりの仕事しかやっていないのも、あれは結婚要員だからなのだ、と
なるほど、よく調べたな。それが都市伝説だとしたら、きっと横道の滅多に人も通らないところで駐車違反キップ切られた(原文ママ)人が、腹立ちまぎれに作り上げた話だろうな。今では女性警察官も男性に混じって危険な現場にどんどんついていると聞くが
ここまで交通警察官の仕事をバカにしていると「逮捕しちゃうぞ」と怒られそうだ。「危険な現場にどんどんついている」でフォローしているつもりなんだろうけど、「危険な現場」についていなきゃダメなのか?と思ってしまう。
それから、後藤田正晴が警察庁長官だったのは、1969年から1972年までで、よど号ハイジャック事件が1970年、あさま山荘事件が1972年に起こっているので「1960年代末」としているのは不正確。
で、「カラサワ探偵長」のセリフになるわけだが…。
(前略)これは伝説ではないが、実際にあった話で“ステラ賞”という賞を女性警察官がとったことがある
この部分を書店で流し読みしていて倒れそうになった。…あのー、このコラムのタイトルは『唐沢俊一のトンデモ都市伝説探偵団』なんだから、都市伝説を紹介すべきなんじゃないかなあ。リニューアルしてもテーマをぶっちぎる癖は治ってないのか。
まあ、そうだが、冗談みたいな賞で、その1年で裁判所に最もバカバカしい訴訟を起こした人に与えられる賞だ
「まあ、そうだが」って、ステラ賞とノーベル賞が同じなら「よくがんばったで賞」も同じになっちゃうよ。イグノーベル賞に近いとか言えばいいのに。
そして、マーシー・ノリエガという女性警察官が、パトカーの中で暴れる男をスタンガンで大人しくさせようとして誤って拳銃で射殺してしまい、その責任は拳銃と見分けのつかないスタンガンを作ったメーカーにあるとして訴訟を提起した事件(詳しくは医学都市伝説を参照)を紹介している。ただ、唐沢の紹介ではノリエガが個人的に訴訟を起こしたかのように読めてしまうが、実際に訴訟を提起したのはノリエガと市当局である。
まあ、こんな訴訟が受理されてしまうのがいかにも訴訟大国のアメリカだがな
訴訟要件を満たしていればどんなトンデモない内容の訴訟でも審理は行われる。これはアメリカだろうと日本だろうと違いはない。
で、今回のコラムのオチはこんな感じ。
それ、映画化すれば面白いと思いますよ! 犯人役には田代まさしをキャスティングして、マーシーがマーシーを逮捕!
どういうアイデアだ、それ
マーシー・ノリエガは当然ミニスカートの制服姿。それを見たマーシーが“ミニにタコ”って言ったら、ノリエガはそのダジャレのひどさに呆れて発砲しちゃうっていう話!
全然元話と違っちゃってるぞ、おい!
純粋に面白くない。そりゃハッシーもギャグを付け足したくなるわ(そもそも脚本を書かせていいのか)。…っていうか、このギャグをやりたさにわざわざ都市伝説でもない事件を紹介したのだろうか。困ったなあ。あと、気になったのは、アメリカの女性警察官の制服はスカートじゃないんじゃないか?ということ。
「警察官の都市伝説」を取り上げるなら、「偽の警察官」とかやればよかったのに。これこそ警察官でなければ成立しない話なんだから。そして、警察官がどうして都市伝説に関わっているかも考察してみることもできたのになあ、とかいろいろ高望みをしてしまう。もったいない話だ。
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