唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

『怪奇トリビア』のガセビア・その1

 唐沢俊一編著『怪奇トリビア〜奇妙な怪談傑作選〜』(竹書房文庫)には、“怪奇トリビア”として、奇妙な事件がごく簡単に紹介されている。おそらくは、『怪奇トリビア』に収録されている小説やマンガ同様に、カストリ雑誌から拾ってきたネタが大半らしく、インターネットで調べてみても引っ掛からないネタが多い。しかし、そんな中にも、明らかなガセが存在するのだから、さすがは唐沢俊一である。早速ひとつ紹介してみよう。

『怪奇トリビア』P.18

平安時代の藤原頼光という大臣は、自分の娘を親王の女御にしたが、
その親王がやがて藤原道長の娘の方にばかり通うようになったのを怨み、
生き霊となって道長親娘に取り憑いたので“悪霊の左大臣”と人に呼ばれた。
当時は実在の人が悪霊になるということが日常茶飯だったらしい。

 「悪霊の左大臣」と呼ばれたのは、藤原顕光である。そして、顕光は死後道長親娘に祟ったとされているので、生き霊となって取り憑いたとは言えない。それから「女御」というのは、天皇の妃の位のひとつなので、親王の妻を「女御」と呼ぶのは誤り。なお、「宇治拾遺物語」には、顕光が道長に呪詛を仕掛けて安倍晴明に阻止される話が載っている。

 それにしても「当時は実在の人が悪霊になるということが日常茶飯だったらしい。」というのはよくわからない。「恨みを残して死んだ人が悪霊となって祟ると信じられていた」というのならわかるけど。