唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

ワシントン殺人事件・解決篇。

 ご要望があったので、「唐沢俊一が薦める、使えるWebサイト一〇」を紹介しておく。

配役宝典
IMDb
誰か昭和を想わざる
あやしい古典文学の壺
X51.ORG
壇流クッキング完全再現
ザイーガ
萌えちゃんねる
訃報ドットコム
女性被害者の部屋

…いや、唐沢俊一のお気に入りサイトを紹介されても困る。…っていうか、これをどう「仕事術」に活かせばいいのか。それから「誰か昭和を想わざる」は「思わざる」と誤記されている。


 今回は唐沢俊一『博覧強記の仕事術』(アスペクト)第1章「時間はどう使えばいいのか―シンプルで誰でもできる時間の使い方・作り方」の途中までを取り上げる。ネタが多すぎて全部は無理なので。


 まず、唐沢俊一「唐沢流“時間の使い方”」として、自分の一日のスケジュールを公開している。P.19より。

・朝(軽い朝食とweb日記による情報整理)

・昼(打ち合わせと原稿執筆)

・夜(料理とメモ取り、読書あるいはDVD鑑賞)

 唐沢自身が言う通り、きわめて単純なスケジュールなのだが、最近の唐沢俊一はやたら知り合いと飲んでいる印象があるので、このスケジュール通りに行動できているのだろうか。「飲み会も博覧強記になるためには欠かせない」って書けばよかったのに。
 そして、規則正しい食事を摂る必要はないと主張しているのだが、個人的に好きなくだりがあったので引用しておく。P.20より。

 「軽い朝食」とあるが、朝は基本的に私はジュースとスープのような流動食で済ます。年齢と共に、充分な睡眠を肉体が欲するようになったからで、その分、朝の時間の中で、朝食にかける時間を節約するためだ。焼きたてのクロワッサンやエッグベネディクトにかぶりつきたい気分(あるいは納豆とシジミの味噌汁!)に襲われるときもあるが、そういう朝食は休暇で旅行した朝にたっぷり摂ることで補うようにしている。

 「焼きたてのクロワッサンやエッグベネディクト」っていうのがいいよね、いかにも「知的」で。

 その後は、川島四郎『まちがい栄養学』(新潮文庫)所収のエピソードの紹介が続く。川島教授が自らの危険も省みず自説を証明するためにライオンの狩りの観察に熱中したという話に続いて、このような話が書かれている。P.23〜24より。

 私の知っている博覧強記型の人間には、大抵こういう、周囲の状況を忘れて自分のことに熱中するタイプが多い。先に挙げた南方熊楠も、粘菌の研究にいったん熱中すると、自分が食事をしたかどうかも忘れてしまうほどだったと娘の文枝さんが思い出を語っていたし。少女マンガ家の萩尾望都さんは、いったんマンガのネームに没頭すると、食事を一切摂らず、アシスタントの女の子がシチューを作り、温めるだけで食べられるようにしていってくれても、それを鍋からお椀に移し、スプーンで口に運ぶという時間がもったいなくて食べないことの方が多く、栄養失調になって目が見えなくなったこともある、とインタビューで語っている。

 川島教授と熊楠はいいとしても、萩尾先生は「仕事熱心」ではあっても「博覧強記」にあてはまるか? 
 さらに続けて、唐沢俊一がかつて貸本小説の本を執筆していたときに、編集者から古本屋で貸本小説を見かけたと聞いたとたんに、小説を買うためにその古本屋へまっしぐらに向かい、編集者に待ちぼうけを食わせたという話が紹介されているが、その後にこのような文章が書かれている。P.25〜26より。

 ……もちろん、これも日常茶飯にあることではない。そんなことばかりしている人間がいたら、打ち合わせもできない精神病者である。ただ、そういう熱中状態に、ふっとスイッチングしてしまう一瞬が、博覧強記人にはたいてい、ある。
 博覧強記というのは、朝から晩まで情報を入れ続ける、いわゆる「本の虫」と混同されやすいが、それは大いなる誤解である。情報を入れる時間の密度が一般人とは違うのだ。そういう、何ものかに打ち込んで周囲から遮断されたかのような一瞬を持つ集中力を、発揮できるかがミソなのである。

 「精神病者」とかまた迂闊なことを。それにしても、ライオンの狩りを観察したとか打ち合わせの途中で飛びだしたとか極端な話ばかり出てくるなあ。まあ、その割りには集中力をアップする方法として挙げられているのは「移動中の車内での勉強」「トイレの中での勉強」「立ち読み」とわりと普通なんだけど。…「立ち読み」が気になるけど(詳しくは6月21日の記事を参照)この件については次回。

P.26、P.28より。

 作家の山田風太郎氏の座右の銘は「したくないことはしない」だったそうだ。彼は戦時中を医大生として過ごすが、戦後、小遣い稼ぎのためにと投稿したミステリー小説が入選し、そっちが忙しくなると、いとも簡単に医学の道を捨てて作家になってしまう。医者になろうとしたのは、父親も医者であったから、という消極的な理由である。彼はそう決めると、国家試験も受けず、一切、医者の道に見切りをつけてしまう。どちらを選ぶかは彼の中では当然の帰結だったろうが、もったいない、という気もしないでもない。ここらへん、同じく医者の道を捨ててマンガ家になった手塚治虫氏が、(山田氏と同じく“自分は医者に向いていない”と言いながらも)医者という職業に未練を持ち、その後論文を書き上げて提出し、奈良医大から医学博士号をもらっているのとは対照的である。
 私は手塚氏もまた博覧強記人だったと思っているが、彼は世間の目ということを常に意識し、自分のイメージを他人の目に合わせていたようなところがある。常にマンガ業界の第一人者でなくてはいけない、という責任感も強く、そのためには、意に染まない仕事も多数しなければならなかったろう。マンガを文化として政府などに認めさせるため、さまざまな団体の名誉職も頼まれれば決して断わらなかった(原文ママ)と聞く。手塚氏が医者でありながら六〇歳という早死にでこの世を去ったのには、こういうストレスが自らの命を縮めたのが理由ではないか、と思っているのである。

唐沢俊一は著書の中で必ず1回は手塚治虫を批判することをノルマにしているのだろうか? 『昭和ニッポン怪人伝』では「仕事に殺された」って書いていたけど(詳しくは5月13日の記事を参照)、今度は名誉職のせいか。…しかし、唐沢が何を考えているのかわからない。だって、『博覧強記の仕事術』はビジネス書であって、普通の社会人を対象としているはずである。普通の社会人は「意に染まない仕事」もしなければならないのであって、「したくないことはしない」と思い切ることは難しいのだ。誰を対象にしているかわかっているんだろうか、どういうつもりで書いているんだろうか、と首を捻ってしまうが、わけのわからない文章はこの後も続く。P.28より。

 シャーロック・ホームズが、地動説を知らなかった、ということをご存知だろうか。その第一作『緋色の研究』の中で、ワトソン博士が、地球が太陽の回りを回っている、と教えると、ホームズは知らなかったと答えてワトソン博士を驚愕させる。しかしホームズは、「捜査の役に立たない知識だから、すぐに忘れなくては」と答えるのである。
 実際にはこの後の話ではホームズは天文学にもかなり通じているところを見せるのだが、しかし、作者のコナン・ドイルが、知の権化としてのキャラクターを、このような性格に設定しようとしたのは興味深い。ホームズは犯罪研究という、自分の好む道に自分自身を特化させた存在たらんとしていたのだ。

 唐沢俊一はもう一度自分の本のタイトルを確認すべきである。『博覧強記の仕事術』、『博覧強記の仕事術』である。大事なことなので2度書いた。「自分の好む道に自分自身を特化させた存在」は「博覧強記」とは言えないのだ。ホームズの知識に偏りがあることはよく言われることだし(ただしこの点は論議があるようだ)、この後もバイオリンの練習に熱心なあまり大阪府大阪市のどちらが大きいのか知らなかったバイオリニストの話を紹介しているのだが、それも「博覧強記」とは違う。…「博覧強記」の意味をわかっているのか? さらにP.29より。

 私が「好きなことを勉強するのが一番効率がいい」というのはここにある。自分にとって好きなことは「プライオリティが高い」から集中でき、よく覚えることが出来る。また、「好き」であるから、長時間勉強しても苦にならない。集中力が継続するのである。

 そんなことは当たり前のことで今更唐沢に説明してもらう必要はない。「博覧強記」ということは、大して好きじゃない分野のことでも詳しいということなんだから、「博覧強記」になる方法を教えるとしたら、「好きじゃない/興味の持てない分野の勉強法」を教えないとダメだと思うのだが。好きなことだけを勉強していたら「マニア」にはなれるだろうが「博覧強記」にはなれないのだ。『博覧強記の仕事術』で「マニア」になる方法を書いてどうするんだ。…やっぱり「博覧強記」の意味をわかっていないとしか思えない。

 『博覧強記の仕事術』というタイトルの本なのに「博覧強記」を曲解した記述がいくつもあることに唖然とさせられるが、実はここには恐ろしいトリックが隠されているのである。…そう、あの「ワシントン殺人事件」の真相を隠蔽しようとする恐ろしいトリックが! …あ、それ以前に「ワシントン殺人事件」のことを説明しておいたほうがいいか。唐沢ウォッチャー以外の人には「何が何やら」だろうから。


 事件が起こったのは2007年11月26日放送『Qさま!』である。この日、『Qさま!』の名物企画「プレッシャースタディ」に「文化人」としてゲスト出演していた唐沢俊一は、算数の計算式の穴埋め問題で失敗。番組を見ていた人によると「す、すみません」と力なく謝っていたという。もっといいリアクションが出来ていればなあ。ただ、算数の問題はテンパってしまうと解けなくなってしまうこともあるから同情はできるかもしれない。…「文サバ塾」の主宰者がテレビ収録でテンパるのは困ったものだが。
 しかし、本当の問題はこの後である。次に「歴史上の人物を漢字一文字で表せ」というクイズで、ジョージ・ワシントンが出題されたのだが、他の解答者が「桜」「米」「初」「大」などワシントンに関係する漢字を書いていたにもかかわらず、唐沢俊一は何を考えたのかここで「殺」を書いたのである。
…何故「殺」? いくら考えてみても理由がわからない。ワシントンが暗殺されたとカンチガイしていたのだろうか。おかげで「この偉人は暗殺されてはいません」というテロップが出ちゃったけど。人気番組だからガセを広めないように気をつけているんだろうなあ。…いやいや、テレビ出演で緊張していたから、ふだんはちゃんとわかっている一般常識も出てこなかったんだよ。「雑学博士」も人間なんだから間違えることはあるって! …一応フォローはできるけど、なんだか哀しくなってきた。ふだんエラそうにしているからミスすると反動が大きいんだよ。
画像掲示板にあったキャプチャー画像を貼っておく。


 クイズ番組で常識問題を間違えるのは確かに恥ずかしい。しかし、悪いことではない。間違いは誰にでもあるのだから、反省してもう二度とミスをしないように気をつければいいのだ。…だが、唐沢俊一が良くないのは、自分のミスを周囲のせいにしたりあれこれ言い訳をしていることである。「裏モノ日記」2007年11月7日より。

テレ朝『Qさま!』収録。
だが、ディレクター忙しいのか、初出演なのにまるで
番組趣旨とか、どこでどう見せ場を作って欲しいとかの
説明にも来てくれない。
また、衣装のサイズが合わないとか、帽子をいくつか
用意してどの色がいいか、という話し合いもまるでなし。
これでかなりテンションが下がる。
アウェイでの仕事で頑張るのがわれわれの本領、とは
思うのだが、やる気まるで出ず。
放り出されたままという具合。

収録でも、目立つこと一切出来ず、
テンション下がりまくり、
ただ黙々と答えるのみ、それもだいぶ間違う。
有名人の特長を漢字一文字で、という設問で、
ひねりすぎて、ちょっと見には間違えているような回答を
してしまう。番組見た人はカラサワとは物知らずな男だ、
と思ったろう。
高木美保宮崎美子のセーラー服姿が見られただけでよしと
するか。相手チームではダントツに大木優紀が可愛かった。

 大木ちゃんは可愛いというのはその通りだが、「ひねりすぎて」ってどうひねったら「ワシントン=殺」ってなるのか説明して欲しい。あと、不満を言いすぎ。『博覧強記の仕事術』のあとがきでも「売れる機会があったら、どんな些細なところにでも食いつけ」って書いてあるのに。自分で言ったことを実行できてないじゃん。
 さらに「裏モノ日記」2007年12月2日より。

楽屋で祐季のお母さんが、
「『Qさま』見ました」
と言ってくる。
「あれはもう、扱いに腹が立って超いいかげんにやって帰ったんです」
と言うと、それが逆に面白かった、と。祐季は普段会っている人間が
テレビに出ている、というのでちょっと混乱していたらしい。

 はいはい、あれはわざとやったということですね。おなじみの「あえて悪役を演じた」みたいに。「超いいかげん」でも、どうして「ワシントン=殺」になったのかはやっぱりわからないままだが。どうせならもっといいボケをすればよかったのに。
…つまり、ただ間違えただけならそこまで注目されなかったはずなのだが、唐沢がこんな具合に余計な言い訳をしたおかげで、唐沢俊一ウォッチャーはますます面白がってしまう結果となり、この一連の騒動は「ワシントン殺人事件」と呼ばれることとなったのである。
 ただ、「ワシントン殺人事件」の真相は依然として不明なままだった。唐沢は本気で間違えたのか、それとも適当に答えを書いてしまったのか。そのことはずっと気になっていた。
 そうしたら、『博覧強記の仕事術』で本人があっさり真相を明らかにしていたので、ビックリしてしまった。唐沢ウォッチャーを悩ませた「ワシントン殺人事件」、ついに解決である。P.30より。

 私が「博覧強記」となったゆえんは、単に「最も効率のいい勉強方法」、つまり「自分の好きなことしかやらない」ということを早くから実践していたからにすぎない。そして、カン違いしないで欲しいが、私が博覧強記なのは、“私の好きな分野において”である。あいつは何でも知っているだろう、とよくクイズ番組などからお誘いがかかる。一度出てみたのだが、簡単な常識クイズにすら答えられないありさまで、嫌になって今では全部断わっている(原文ママ)。

 つまり、唐沢俊一「本気で間違えていた」のであった。なんとも拍子抜けさせられる。…いや、それなら正直にそう言えばよかったのに。「間違っちゃったなあ」と素直に反省しておけば傷は浅くて済んだと思うんだけど。
 あと、「私の好きな分野において博覧強記」というのは、「博覧強記」じゃなくてただの「マニア」だからね。やっぱり「博覧強記」の意味をわかっていない。…っていうか、唐沢俊一の「好きな分野」って一体何なのか。あらゆる分野においてガセを垂れ流しているけど、それは「好きな分野」のネタじゃないからなんだろうか。…もしかすると実は「好きな分野」が無いのかも。


…「ワシントン殺人事件」の真相がわかったところで今回は終わり。「博覧強記」の意味をわかっていないことにビックリさせられてしまうが、もしかすると、「博覧強記=自分の好きな分野にだけ詳しいこと」とすることで、「俺は博覧強記だからクイズで間違えたんだよ!」と言いたかったのかも知れない。どんな言い訳なんだ。…『博覧強記の仕事術』じゃなくて『マニアの仕事術』にすればまだよかったのかも。

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