唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

Blinded by the light novel.

ラノベに目もくらみ。




●来週の『スクール革命!』は「聞いてビックリ!47都道府県の常識・非常識パート3」を放送するらしいが、パート1パート2で「先生」として登場していた唐沢俊一が今回は登場しない模様。ただ、唐沢に代わって「先生」になる矢野新一氏の方が都道府県の話をするのは適任なので納得の交代ではある。唐沢のスケジュールが合わなかった可能性もあるしね。



●本題。かつて唐沢俊一週刊現代で担当していたマンガ紹介コーナー『特選コミックス』には所々気になる記述がある。たとえば、2008年3月1日号掲載のステファヌ・ウエ『失われた時を求めて フランスコミック版』(白夜書房の紹介文から。同誌P.99より。

おそるおそる読み始めた感想を言えば、独特の描線と、マンガの特長である独白を巧みに利用した手法は意外なほど原作の内容を読者に伝えることに合っている、ということだ。

 …原作を読んだのかな?と気になってしまった。


 もうひとつ、2008年3月29日号では沙村広明『ブラッドハーレーの馬車』(太田出版を紹介しているのだが、沙村について、

いま一歩、メジャーになりきれない

 と評していて少し驚いた(P.123)。『アフタヌーン』で『無限の住人』を長期連載している(さらにアニメ化されいくつかの賞を得ている)といっても、世間一般での認知度を考えればメジャーではないのかもしれないが、それならほとんどの漫画家はメジャーではなくなってしまうしなあ、と考えてしまった。唐沢の書きぶりを見るに沙村に万人受けする作品を描いてほしいようなのだが…。



 本題。2008年4月26日号の『特選コミックス』は円城寺マキ『ヨルカフェ。』(小学館フラワーコミックス)を紹介している。同誌P.119より。

 昔、少年ものマンガやドラマの主人公たちは、ヒロインの愛を勝ちとるために大変な努力をした。時にはそれで命を落としたりもした。読むほうも、それを当然のこととしていた。
 ……ところが昨今流行りのライトノベルの多くは主人公が何もしない。それなのに、その周囲に、勝手に主人公を好きになってしまう女性たちが、ぞろぞろと立ち現れてくる。そういう筋立でないと読者がついてこないのだそうである。
 何と男たちは怠惰になったものだ、と思っていたが、事情は女性の方も同じらしい。円城寺マキ『ヨルカフェ。①』(小学館、410円)は、若くして未亡人になった主人公の周囲を、美形の男子たちが取り囲んで展開するストーリーである。歳の離れた夫が残したカフェ(夜間営業のみ)の従業員たち三人、加えて遺産管理人のハンサムな弁護士。彼らはみな、主人公に恋心を抱くのだが、主人公の妃菜自身はもう恋などしないと明るく宣言し、食い気ばかりの天然系。当然、周囲が彼女の言動に振り回されて起るドタバタがストーリーの中心になる。
 そんな都合のいい話があるものか、と思いながら、案外読めてしまうのは作者の力量だろう。時代は変わった、と嘆く前に一読を。


 …いや、主人公に都合のいい話って、男性向け女性向けを問わず、昔からあるんじゃないのかな?  たとえば、80年代のラブコメブームはどう考えればいいのだろう。別に「時代は変わった」と嘆く必要はないし、そのような話は決してなくなりはしないのではないか。
 この文章で気になるのはライトノベルへの妙な見方である。唐沢は『社会派くんがゆく!』でも次のような発言をしている(2010年4月16日の記事を参照)。

こないだ頼まれて何冊かラノベ系の小説を読んでみたんだけど、ホントに単純な構造でね、最初にこれこれこういうキャラだからと設定された主人公は、最初から最後までその設定のまま。物語を通して主人公が成長していくみたいなディケンズ的な展開なんてありえない世界になっている。

ラノベの設定で、主人公の男の子に寄ってくる女の子の数が十人以下である小説は売れない」って言っていた人がいたけど、そこまで縛りの多い執筆作業なんだ。とてもじゃないが、われわれの世代には無理だよね。


 10人以上も女の子を出すと逆に整理が難しいと思う。一例を挙げると、『涼宮ハルヒの憂鬱』ではメインはハルヒ、みくるちゃん、長門の3人だし(個人的には佐々木も好きです)、『とらドラ!』もメインは大河、みのりん、亜美ちゃんの3人(個人的にはやっちゃんも好きです)。…だから、「主人公の男の子に寄ってくる女の子の数が十人以下」だからヒットしない、ってことは全然ないと思う。逆に「主人公が10人以上の女の子から好意を持たれるヒットしたライトノベル」というのを残念ながら思いつかないので、ラノベに詳しい読者の方にご教示願えれば幸いである。マンガだったら『ToLoveる』が一応あてはまるかな。『ジャンプスクエア』の発売日を毎月待ちわびています。
 いずれにせよ、唐沢俊一が言うほどラノベは「単純な構造」をしていないことは確か。一体どんなラノベを読んだのかは知らないが、もっといろんな作品を読むといいよ。



 唐沢俊一に奇妙なラノベ観を植え付けたのが大内明日香女史であることは間違いない。大内女史は『男1人に女100人のラノベは売れる!』という同人誌(上下巻)を2008年に出しているしね。
 せっかくなのでこの同人誌を一読してみたが、「ゆるい」としか言いようがない。ライトノベルでどのような女の子のキャラを出せばいいのか?というテーマを掘り下げれば面白くなりそうなのだが、大内女史と鈴木ドイツ氏の対談をそのまま文字に起こしたのでは話が深まらないのも致し方のないところだろう。あと、この本の表紙には「3月末アスペクトより商業版発売予定!」とあるが、商業版が出たのかどうかは不明。もし商業版が出ていれば、『すべてのオタクは小説家になれる!』(イーグルパブリシング)を「トンデモ本」認定した山本弘会長に論じてもらいたいところ。当ブログで取り上げてもいいですが。
 正直自分はあまり興味が持てないのだが、大内女史の精力的な活動ぶりには感心させられる(「COMIC ZIN」の通販ページ)。『アニメ評論』の表紙、どっちもすごいなあ。おんそくさんの『キルミーキュウベー』はタイトルを見た時点で噴いてしまう。


 ちゃんと本をチェックしてみるといいことはあるもので、この同人誌の中で大内女史が次のように発言しているのを見つけた。上巻P.11より。

唐沢俊一(作家)さんなんかは、ラノベ作家ではないんだけれども、「今のドラマツルギーにはついていけない」ということをはっきり名言(原文ママ)されているんですね。彼なんかはいわゆるオタクの先駆けで、特撮・アニメ漬けで来た人だから、普通の大人の人に比べればずっとそういう「やわらかいもの」に理解があるはずなんです。そういう彼でも、「ついていけない」と言っている。だから、先日「オレはもう新しいアニメは観ないことにした」とおっしゃってました。


 だったら釘宮理恵について『週刊新潮』でコメントしなきゃいいのに、っていうかコメントしちゃいけない(2010年2月10日の記事を参照)。最近の話についていけない、というのは年齢を重ねれば当然有り得ることで(自分だっていつかそうなるかもしれない)別に悪い事じゃないのだけれど、知ったかをしてはダメだって。どうぞ無理をせずに昔のアニメや特撮を楽しんでほしい。



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