唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

今あらためてオタクらに告ぐ(前編)

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karasawagasepakuri@yahoo.co.jp


 リンク集に「北緯1度通信」「暇人の日記」「discussaoの日記」を追加しておきました。「北緯1度通信」でスタートした唐沢俊一の検証に期待。


 東京都の青少年健全育成条例の問題は、パニック映画でよくある流れだなー、と特撮オタクとして感じてしまう。怪獣や宇宙人が出現したとか、大地震が迫っているとか、とにかく大変なことが起こってしまうかもしれない!と必死でアピールしているのに誰も信じてくれないというおなじみの展開。…ということは、次はたぶん「研究を黙殺されて学会を追放された異端の科学者」が出てくるんじゃないかなあ。人里離れた山奥にある研究所を訪れると「わしは誰にも会わんぞ!」とか追い返されるんだよな。あるあるー。

 
 冗談はさておき、今回と次回、2回にわたって唐沢俊一が過去に行った表現規制やオタクの運動についての発言を取り上げてみたいと思う。今読んでみるといろいろと考えさせられることが多い。ちなみに、唐沢俊一青少年健全育成条例に関する発言については4月16日および6月1日の記事を参照。ついでに児童ポルノ法案に関する発言については4月19日の記事を参照。


 唐沢俊一村崎百郎『社会派くんがゆく! 逆襲編』 (アスペクト)では松文館裁判について取り上げられている。P.16より。

村崎 そういや、例の松文館裁判の件、唐沢さんが「裏モノ日記」に書いてたこと、オレもその通りだと思ったわ。宮台真司みたいなマスコミ文化人呼び出してエラそうなこと言わせれば言わせるほど、裁判官どもの心証悪くするってことに気づかないのかね?


唐沢 そうそう、裁判官に向かって法律のあり方を説くなんて、学者って連中の浮世離れが露呈したって感じだね。ラーメン屋でそこの親父に「お前のラーメンに対する姿勢は間違っている」って客が声高にラーメンの作り方講釈してごらんよ。煮えたぎったスープぶっかけられるぜ(笑)。

 この主張に対する指摘は4月16日の記事で既に行っているが、法廷で法律論をやって何が悪いのか?と唐沢に聞きたいところだ。他にどんな話をすればいいのだろうか。だいたい伊藤剛さんに訴えられて和解したとはいえ実質的に裁判で負けた人に言われてもなあ。なお、いい機会なので書いておくが、唐沢が伊藤さんを誹謗中傷したことは裁判所から認定されているので、未だに伊藤さんに対して蔑称を使っている一部の人たちは気をつけた方がいいと思いますよ。


P.16〜17より。

村崎 いや、ホント言うと、裁判官の判決より宮台の言ってることの方が、千パーセント以上正しいと思うんだ(笑)。だけど、あの斜に構えた茶髪インテリ面にエラそうなこと言われると、言ってることの内容の正誤以前に、とにかくムカツクんだよ(笑)! 特にオレみたいにガテン系の、インテリに対してコンプレックスの強いバカはな。


唐沢 そもそも、こんな裁判を起こされること自体が間違いみたいなもんなのよ。しかし、その間違いがまかり通ってしまうのが世間を動かしている母親とか教師とかいう立場の“常識”なの。だから、そこでどんなに自分が正しいと思ってることを言ったってダメ。


村崎 なに言おうと裁判官の方は「こいつは性犯罪を助長する極悪エロロリマンガを売って儲けてる不謹慎な犯罪者のくせに、なにをエラそうにイバってるんだ」としか思わねえもの。だから、これだって小泉の「国際貢献!」と同じ見栄っ張りなんだよ。エラそうなこと言わないで、「エロロリマンガ好きなゲス人間でごめんなさ〜い。ボクらホント〜にバカでダメな人間のクズで〜す。でもエロバカだけに、これがないと食えないんですよ〜。ごめんなさ〜い。反省してま〜す。なので、ここはひとつ、助けると思ってお目こぼししてくだせえよ、お代官様ァ〜」とか頭下げて、謝っときゃいいのに。

 村崎百郎だって十分インテリじゃん。クロソウスキーの話とかしているのに「ガテン系」を名乗られても。冬コミの新刊で「アカデミズムに反感を抱くオタクの心理」について少しばかり考えたので、村崎の発言は興味深かった。細かいことだけど、ビューティ・ヘア『蜜室』って別に「ロリ」じゃないのでは?
 奇妙なのは、村崎も唐沢も「頭を下げればなんとかなる」と思っている点で、「頭を下げれば相手に余計に付け込まれる」可能性だってあるのではないか。「そんなエロバカなら叩き潰したって構わないだろう」と思われたら終わりなんじゃないかな。だから、「間違い」に対しては「自分が正しいと思ってること」をちゃんと主張しなければいけないのだ。「鬼畜」にしては物事の見方が甘い。


P.17より。

唐沢 昔の、ホントにエロを権力に対する抵抗の手段として選んでいた地下出版社なんかには、そういう気概があったんだよ。彼らはなにも性の解放を大義、正義と思ってやってたんじゃない。規制本能みたいなものを持つ権力者にとって、いちばん嫌がられるのは性の乱脈である、というポイントをついて性文献を広めてたんだ。ところが最近のエロ関係者って「僕のやってることは正しい」なんて妙なプライドもって、法廷に出たりするでしょ。あれがまずよくない。

 エロマンガを擁護するために法廷に立つためには「気概」が要ると思う。少なくとも、『熱写ボーイ』で連載を持っていたことを一度も公言していない唐沢俊一に比べれば、宮台真司には「気概」がある。むしろ唐沢の方に「妙なプライド」があるように感じられるのだが。それに、エロ=反権力というのも古いなあ。唐沢は左翼の運動のノスタルジックな面を批判するけれど、そのくせ自分もノスタルジーにとらわれているのだからおかしなものだ。自分は反権力など関係なしに『熱写ボーイ』終刊のあいさつには胸をうたれてしまったのだけどね。あと、「規制本能」ってナニ?


P.18より。

村崎 とにかく裁判でエロマンガを芸術だと言い張る発想が、そもそもペケ。この手の問題は“芸術かどうか”で争っちゃったらハナシがこじれるだけで時間の無駄なんだって。だいたい芸術がわかるような連中なら法曹界に入ってねえよ。法律書判例がなければなにも決められない融通の効かないバカ揃いの世界で「オマエラに芸術の意義がわかるか?」って言う方が酷だっつーに! 黙ってエロマンガは芸術ではなく、ただのエロマンガだって認めとけよ、アホらしい。

 この場合「ハナシがこじれる」と被告側にとって有利になるのではないだろうか。「芸術かどうか」で争うと相手も簡単には否定しづらくなるわけだから。青少年健全育成条例の問題でも、石原都知事が「『ロリータ』には叙述の美しさがある」とか隙のあることを言っちゃってるしね。あと、宮台真司松文館裁判エロマンガを芸術だと言い張ってはいない(意見書)。それから、判例を無視する裁判官がいたら問題になると思います。


P.18より。

唐沢 そもそもが劣情を催すことがエロマンガの目的なんだからねえ。「そこがいけない」と言われちゃ弁解の余地はねえわな。その事実を認めてから、お上をヨイショして生き残る道を探さないといけないわけ。今度の判決文読んでみると、ホント、マジで裁判官側を怒らせちゃったみたいだからねえ。


村崎 もう「盗人猛々しい」みたいなノリだったもんな。裁判官をあそこまで怒らせちゃマズいって。だから、あれ、実刑食らっちゃったんだろ?


唐沢 一応、執行猶予はついたみたいだけどね。それでも被告側は控訴するつもりらしいけど、このまま同じやり方を繰り返していたら、もう勝てねえと思うよ。

 松文館裁判は第一審では懲役刑だったのが、第二審で罰金刑になっているので控訴した意味は十分にあったと認められる。「鬼畜」が判決文を読んでビビッてるのが可笑しい。裁判官を怒らせたら死刑になっちゃうかもしれませんね。しかし、今回の青少年健全育成条例の場合も「お上をヨイショ」すればよかったのだろうか。


P.19より。

唐沢 相手側の作ったシステムに乗って発言しなきゃいけない時点で、どんなにその相手側を攻撃したってダメなのよ。システムの外側から運動を起こさないと。

 「システムの外側」での運動って、具体的に何をどうしろというのか。…ブログではおいそれと書けないことばかり思いついてしまったけれど。


P.19より。

村崎 警察だって別にエロマンガ根絶やしにするつもりなんかねえだろうからな。


唐沢 そうなのよ。性ってのは人間の本能にあるもんなんだから、どんなにお上が強力に弾圧を加えようと、エロへの需要がなくなることは決してない。お上だってちゃんとその辺はわかっているの。いちいち、ゴキブリみたいに沸いてくるエロ出版の取り締まりをやっていたら、官憲の数をどれだけ増やしてもやっていけないよ。一時の、支持層へのサービスで取り締まっているだけなんだから、そこらはわかって、サッと頭を下げて、ほとぼりのさめるのを待つのが正しいあり方なんだ。それができないのは、ひとえに肥大したプライドのなせる業でしかないね。(以下略)

 「お上だってちゃんとその辺はわかっている」のであれば、都条例に関しても何も心配することはないのだろう。「鬼畜」が「お上」を信頼しきっているのもおかしなものだし、「肥大したプライド」の持ち主というのは一体どこの誰のことなのかと。


 『社会派くんがゆく!』の特色のひとつとして、「タテマエに対してホンネをぶつける」面があると思うのだが、それは一歩間違えば「何もしないことを正当化する」だけになってしまうのかもしれない。リアリスト気取りのニヒリスト、とでも言おうか。おそらく唐沢俊一は「大人になれ」「したたかに振舞え」と言いたいのだろうが、したたかな大人は「『新・UFO入門』盗用事件」など起こしたりしないから、全く説得力がない理屈だ。だいたい、唐沢も村崎も「お上」を信頼し、裁判に恐怖心を抱いているのがヘン。それじゃ普通のおじさんみたいだ…と言ったら普通のおじさんに失礼か。


 次回はもうひとつの事例を紹介したうえで、いろいろ考えてみたいと思う。


血だるま剣法・おのれらに告ぐ

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