フロムKARASAWA(前篇)
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・当ブログにコメントされる場合には誹謗中傷および個人を特定しうる情報の掲載はおやめください。守られない場合には厳正に対処する可能性があります。
・1970年代後半に札幌でアニメ関係のサークルに入って活動されていた方、唐沢俊一に関する情報をご存知の方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
karasawagasepakuri@yahoo.co.jp
●今日23時50分からTBS系列で放映される『タカトシの時間ですよ!』に唐沢俊一が出演するのでみんなで観よう! 前回出演時の模様は7月27日の記事を参照。
●唐沢俊一の「つぶやき日記」8月14日分より。
朝、警察(中野署)から電話。昨日の書類にちょっと不備(向こうの間違い)があったので書き直して欲しいとのこと。じゃ昼くらいに行きますと言ったら、いえ、こっちのミスなのでこっちで出向きますと。国家権力にしては案外殊勝である(笑)。まあ、またいろいろと話せてよかった。以前のコミケでのいやがらせについてもいろいろ説明せんとな。
へえ、唐沢さん、コミケでいやがらせをされていたんだ。大変だなあ。準備会には話したのだろうか。20日の日記によると「コミケの関係者」にニセ札騒動のことを話したそうだが。
●やはり「つぶやき日記」8月14日分のタイトルは例によってダジャレなのだが、
8月
14日(火)尖閣関係
韓国と台湾と中国(日本はカヤの外)。
とある。…韓国も尖閣諸島の領有権を主張していたっけ?
●さて、今回と次回は久しぶりに続き物である。書いているうちに分量が多くなったのに加えて、話が思わぬ方向に行ってしまったので、2回に分けることにしたというわけだ。
とりあえず今回はいしかわじゅんの話である。7月11日の記事のコメント欄ではったさんに『業界の濃い人』(角川文庫)に唐沢俊一が登場していると教えられたので早速読んでみた(どうもありがとうございます)。検証を抜きにしてもとても面白い本だったのだが、唐沢以外にも、内田春菊・大槻ケンヂ・岡田斗司夫・呉智英・竹熊健太郎・中野貴雄と唐沢と接点のある人物が登場するのも興味深かった。特に岡田斗司夫の事務所の話には驚いたが、同時に「らしい」話だと納得してしまったり。
で、唐沢俊一だ。「暗黒面を見たか」という文章の中で、いしかわ氏は唐沢の怪しいキャラクターを評価していて、そのあたりはdiscussaoさんのブログを御覧になってほしいが、ここでは締め括りの文章を紹介しておく。P.126より。
ぼくは唐沢俊一個人とほかの仕事はかなり好きなのだが、唐沢の貸本漫画の取り上げかたは、あまり好きではない。コンセプトも文章も少し乱暴で雑すぎるのではないか、という気がしないでもない。しかし、唐沢のあの強引さで引っ張り上げたおかげで、光を浴びるべきものが光を浴びたということもできる。
どちらにしろ、唐沢ならではの切り口ではあったといえるだろう。
業界暗黒面、唐沢俊一。
もっとのさばって、変なものを見せてほしいなあ。
いしかわ氏の願いはある意味ではかなえられたのかもしれない。自分も唐沢俊一の「暗黒面」に惹かれた人間なのだろうか…。
それはともかく、「唐沢の貸本漫画の取り上げかた」に対する評価はバランスの取れたものだと思う。「少し乱暴で雑すぎる」というのは、悪名高い欄外にツッコミを書き込む手法のことなのだろうが、それでも唐沢の紹介で少なからぬ人が「B級貸本漫画」を知ることができたという功績を認めてもいる。
この文章からだいぶ後、『新・UFO入門』での盗用が発覚した際に、いしかわ氏は『WILL』の連載コラム『判決!』でこの件について触れている。『WILL』2007年9月号P.27より。なお、読者の便宜を図るため、原文に改行を加えていることをおことわりしておきます。
もうとっくにカタはついてるだろうなと思っていたのだ。
それで、なんとなく当事者ふたりのブログを覗いてみたら、少なくとも表に見える形では、なにも進んでいないようで、驚いたのだ。
唐沢俊一の話だ。
『新・UFO入門 日本人は、なぜUFOを見なくなったのか』という唐沢の出した幻冬舎新書で、知ってる人は知ってる『漫棚通信』というブログに書かれていた内容を、唐沢はかなり大量に、ほぼそっくり書いてしまったのだ。
それは似ているとかいう問題ではなく、構成も取り上げている題材も、それどころか冗談でつっこむ部分までも同じ位置という、言い訳のしようもない盗作だったのだ。当該箇所をごっそりコピー&ペーストして、一部をちょっと変えた程度で自分の著作にしてしまったのだ。
漫棚通信側からそれを指摘されると、唐沢はすぐ形式的に謝罪した。
>悪意または盗用という意はまったくありません
>大いに参考にさせていただいたことは事実です
>当方の不注意と認識不足の結果であり、まことに申し訳ありません
しかし、こうも書いている。
>ある作品のストーリィを紹介するという性格上、参考にさせていただいたサイトの記述の非常な類似のあることも事実です
つまり、この部分は誰が書いても似たような表現になるだろと言い訳しているのだ。
断言してもいいが、そんなことはありえない。
唐沢がやっていいことは、盗作を全面的に認め、謝罪する、それだけだったはずだ。それなのに、唐沢は途中から対応を幻冬舎にすべて任せ、未だにこの件をどうするかの結論を出していない。幻冬舎から漫棚通信には、あまり連絡もいっていないようで、漫棚通信側はかなりイライラを募らせている。当たり前だけどね。
盗作が発覚して、今日の時点で既に一カ月半が経っている。こんな簡単なことに、なぜこれほど時間がかかっているのか。この号が発売されるまでには、なんらかの納得できる結論が出ていることを祈る。
事件が発覚した直後に問題点を的確に捉えているのがすばらしい。「同じ話を要約しても人によって違いが出る」というのは素人でもわかるんだから、プロのクリエイターなら尚更だろう。例のメーリングリストを見る限り、山本弘会長もわかっている風だったっけ。そういう意味では、唐沢俊一と今でも仕事をしている業界の人が、唐沢の盗用癖を知りながらすっとぼけているのか、はたまた問題点を理解していないのか、一体どっちなのか気にならないでもない。
いしかわ氏の願いもむなしく、唐沢俊一は『社会派くんがゆく! 復活編』収録の書き下ろしコラムで漫棚通信さんを中傷し(まとめwiki)、『クイック・ジャパン』のインタビューでも「単なる引用ミス」と強弁する始末であった。ツッコミを入れている位置まで同じなのに「単なる引用ミス」だなんてとても通らない話なのだが…。『QJ』での唐沢の発言に憤る漫棚通信さんをいしかわ氏はtwitterで慰めている(twitter)。
『業界の濃い人』以外にもいしかわ氏は唐沢俊一について取り上げていて、『週刊宝石』の書評コーナーでは合計3回も唐沢の本を取り上げている(1996年9月19日号、1997年1月2日/9日号、7月10日号)。中でも97年1月2日/9日号では『星を喰った男』(ハヤカワ文庫)を年間ベストに挙げていて、
ぼくは唐沢のものの中で、一番好きだ。
とまで書いているので、当時詳しい事情がわからなかったのはやむを得ないこととはいえ、複雑な気分になる(2008年12月26日の記事を参照)。
また、『創』1996年12月号で、いしかわ氏と唐沢俊一は『面白さとは何か』というタイトルで、マンガ業界をテーマにした対談を行っている。話は少し脱線するが、この対談の中で唐沢は「ウチの弟のアシスタント」が「ビジネス雑誌で漫画を描いた」話をしていて、その雑誌の名前を出したうえで原稿料をバラしている。…もう察しがついている人もいるかもしれないが、この「アシスタント」というのは伊藤剛さんである。ニフティの会議室だけでなく商業誌でも伊藤さんの話をしていたのか、とこの対談を見つけた時は少し驚いた(そのあたりの事情は『唐沢俊一検証本VOL.4』を参照されたい)。
こうして見ている限り、いしかわ氏は唐沢俊一に対して一貫して好意的な態度をとっているように思える。盗用が発覚した際のたしなめかたにもそれはうかがえるのではないか。
そうなると、唐沢俊一がいしかわじゅんをどう見ていたのか、それも気になってきたので、過去の「裏モノ日記」をチェックしてみた。2000年10月13日では『漫画の時間』(新潮文庫)に苦言を呈しながらもかなり熱の入った感想を書いているのだが、他の日記ではかなり批判的な記述も見受けられる。たとえば、2001年4月28日より。
江戸時代の黄表紙、滑稽本の類いは罪がないことを本義とする。おざなりの教訓ばなしを最後にもってきて形をととのえ、あとはほとんど意味のないうがちや洒落で話をすすめる。この、進歩発展の気風がツユもないところにネウチがある。『身代山吹色』も、金の大事さを謳うのがテーマだが、作者はそんなことはおかまいなく、主人公の茶屋遊びの細かい段取りや、当時の通人たちの芝居評などに筆を費やす。こちらが描きたかったのであり、読者もまたそれを喜んで、話のまとまりなどに期待はしなかったのであろう。現代の進歩至上主義者にこの余裕はない。現代の黄表紙がすなわちマンガだが、そういうものを評するのにまで進歩しろ、勉強が足りないと青筋をたてるのだから論外である。進歩発展というのはそもそも貧乏人の発想であって、いしかわじゅんとか夏目房之介だとかいう、精神的にビンボーな方々がマンガ評論の代表者としていばっている限り、マンガは大人の文化足り得ないのではなかろうか。
もうひとつ、2006年5月20日より。
“私の立場”で言わせてもらえば、マンガ夜話での彼の発言などもそうだし、彼が言及するプロレス、芸能など全般にわたってそうなのだけれど、いしかわじゅんの批評というのは決して間違ってはいないが近視眼的、という典型的批評だと思う。
嫌われることをいとわずずけずけものをいう、というキャラだけで仕事が来ていると気づかず、自分の意見を正論と信じ込んでいるところがまたお話にならない。敢て正統論を言っているのだ、と言うのなら、その、正統的な人の芸なり腕なりをきちんと評論したことが今までこの人に一度でもあるか。業界内でのプライベートなエピソードをちょこちょこ紹介したにとどまっているような文章ばかり書いていて、偉そうなことは言わないでもらいたい。
興味深いことに、2000年10月13日と2006年5月20日の記述はそっくりである。大仁田厚とモーニング娘。を持ち出しているところなどは本当にそのままだ。なお、2006年5月30日の日記によると、唐沢のいしかわ氏への批判には少なからぬ賛同の声が寄せられたとのこと。…あと、2001年6月22日の記述はそれなりに好意的な気もする。
「なにをそんなに怒っているんだろう」と不思議に思い、その理由を調べてみたのだが…、それは次回説明することにする。唐沢問題を別にしても興味深い話になっているのではないかと思う。
(つづく)
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