ヲチャのみぞ知る御茶ノ水。
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唐沢俊一『スコ怖スポット・東京日帰り旅行ガイド』(ごま書房VM)「スコ怖スポット11」では「お茶の水(明治大学)」を取り上げている。
実を言うとこの章は途中までは悪くない。「スコ怖スポット」として明治大学博物館を選んでいるのはいいし、博物館で展示されている「鉄の処女」は拷問の器具として有名だが、実は拷問には使用されていなかったという説もあることを説明しているのもいい。ただし、「鉄の処女」が何故拷問の器具として有名になっていったのかについてカラサワ探偵長はP.87で次のように分析しているが、
インパクトがあって、中世の歴史などという展示や見世物をするときの目玉の客寄せになったからだよ。中世の城を先祖から受けついで、資産税の支払いに苦労する現代の貴族たちにとって、そういうものを置いておくと観光客が押し寄せて観覧料を支払ってくれるからね。(後略)
唐沢が本の中で参照している浜本隆志『拷問と処刑の西洋史』(新潮選書)では、「鉄の処女」が実在した証拠がないことを論じているが、「鉄の処女」が作られ、広まっていったハッキリした理由までは示していない。まあ、「見世物」として人気があることは確かなんだろうけど。
しかし、「鉄の処女」のエピソードの後から話が怪しくなってくる。P.88〜P.89より。
すばる 19世紀の見世物もそうでしょうが、現代の僕たちでも、ここの博物館の拷問器具や処刑用具を見て何かドキドキワクワクするのは、どうしてなのかなあ。僕って変態ですか?
カラサワ探偵長 いや、それは人間誰しもある感覚なのだよ。人間、自分に生命の危険が迫ったり傷つけられたりすることを心配すると不安になり、脳内にアドレナリンが分泌される。ところがアドレナリンは快楽物質でもある。人を奮い立たせるのだな。一かバチかの勝負や冒険を人が好むのはそのためであり、この、いささかの変態性があるために人類は未知の世界へとどんどん足を踏み入れ、発展してきたわけだ
として、それが行き過ぎた例として、小口末吉の事件を紹介しているのだが(殺人博物館を参照)、…強引すぎないか? 小口末吉の事件は別に御茶ノ水の近辺で起こったものでもないのに。なお、唐沢は小口末吉の事件が「大正5(1916)年」に起こったとしているが、正しくは1917年。
で、この章の締めはこんな感じ。P.89より。
カラサワ探偵長 日本文化の中にはマゾ的な部分があるらしく、これが欧米になると、サディスティックな面が強く出る。この鉄の処女を見ても、日本人は自分がその中に入れられるシーンを想像し、欧米人は自分がその中に人間を追い込むシーンを想像して興奮するそうだ
すばる それって何だか、今の日米関係を連想させてしまって、複雑な思いだなあ
…そもそも「マゾ」というのは「欧米」から来た言葉じゃん、と思うのだが、唐沢俊一は『社会派くんがゆく!』で「今の日本が外国とケンカしてやっていけるのか」と右寄りな意見に水をぶっかけるようなことをよく言っていたわりには、「アメリカは日本にひどいことをしたよね」的な見方をしているのが少々意外。
…うーん、博物館の説明だけしておけばよかったと思うんだけどなー。自分は博物館に行ったことがあるけど、「鉄の処女」以外にもギロチンとか獄門台とかいろいろ展示してあるし、河鍋暁斎が描いた牢獄の絵(暁斎は投獄されたことがある)なんか唐沢好みだと思ったのだが。
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