唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

「猫を償うに猫をもってせよ 」で取り上げられました。

タコシェで既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』『唐沢俊一検証本VOL.2』『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』『唐沢俊一検証本VOL.3』『唐沢俊一検証本VOL.0』「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。タコシェの店頭でも販売しています。
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karasawagasepakuri@yahoo.co.jp



●前回のエントリーで小谷野敦ウルトラマンがいた時代』(ベスト新書)を取り上げたためだとは思うが、小谷野さんのブログ「猫を償うに猫をもってせよ」で当ブログの2008年12月26日のエントリーについて貴重なご意見を頂戴した。どうもありがとうございます。
 当ブログの2008年12月26日のエントリーでは、潮健児『星を喰った男』が文庫化される際に、編著者の名義が唐沢俊一に変更された件を扱っているのだが、小谷野さんは次のように書かれている。

さて、山口百恵の自伝『蒼い時』が、山口の話をもとに残間里江子が書いたものであることはよく知られている。藝能人だってバカではないが、書くとなるとうまく書けない人もいるから、よくあることだし、ゴーストライターが書いて「自伝」と銘打つこともある。

 で、この件である。

http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081226/1230314859

 まあ私も唐沢俊一に、「朝日新聞」で『日本売春史』について不正確な書評を書かれているから、それはいいのだが、ちと厳しすぎるのではないかと思った。潮健児自身が、これは唐沢さんの本です、と言ったと書かれているし、むしろ、ゴーストにならず、かつ潮が語ったのを唐沢がまとめたということが分かって、特に問題があるとは思わなかった。



この人も筆がすべっていて、「『星を喰った男』は「自伝」としては文句なく面白いけど「評伝」としてはまるでダメである。まず、潮氏に不都合な事実が書かれていない。」などとあるのだが、この世には「まんじゅう本」として、不都合な事実が書かれていない、対象ヨイショの評伝なぞいくらもある。現に私などは、ヨイショ伝記を書かないから、伝記を書くたびに関係者から嫌われていく。井上ひさし伝とか、梅原猛伝とか、本人の弟子筋が書いているからひどいものである。川西政明埴谷雄高とか武田泰淳も、それに次ぐ。その意味で、唐沢だけを弾劾するのは、間違いであろう。


 最初に『星を喰った男』にまつわる問題の流れをもう一度整理しておくことにしよう。『星を喰った男』の単行本は1993年9月にバンダイから出ていて、その時の著者名は「潮健児」だったのだが、単行本の発行直後に潮氏は亡くなってしまう。その後1996年6月に早川書房から文庫版が出る際に、『星を喰った男―名脇役潮健児が語る昭和映画史』とサブタイトルを追加するとともに、唐沢俊一の編著に変更されていた、というわけである。念のために書いておくと、単行本と文庫版は現在ともに絶版である。


 一番重要なのは、著者である潮氏の死後に『星を喰った男』の著者の名義が変更されていて、これを生前の潮氏が了解していたのか?という点である。この点に関して、小谷野さんは潮健児自身が、これは唐沢さんの本です、と言ったと書かれている」としているが、『星を喰った男』文庫版P.4には次のように書かれている。

当初はこまかく原稿内容に注文を出していた潮氏だったが、原稿執筆の半ばあたりで氏の敬愛していた若山富三郎氏の死という出来事があり、構成を変更して、その模様を冒頭と末尾に持ってくることにした。その、プロローグの葬儀のシーン(潮氏の話をもとにこちらがまとめた)の原稿に目を通してもらったとき、潮氏は僕の目の前で原稿にポトリと涙を落とし、
「ここまで僕の気持ちをわかって文章にしてくれたのなら、もうこれからは何も言わず、一切おまかせします。唐沢さんの書く言葉は、間違いなく僕の言葉だ」
 と言ってくれた。心底からうれしく思ったことを覚えている。


 以前のエントリーのくりかえしになってしまうが、やはり上の文章を読む限り、潮氏が名義変更を認めたとは考えにくい。潮氏が「一切おまかせします」と言ったのは、本の内容の取りまとめをまかせるということだろう。それに、当時の潮氏が『星を喰った男』が文庫化されるという事態を予想していた可能性もどれほどあるのか疑わしい。そして、やはりこれも以前のエントリーのくりかえしになってしまうが、唐沢は『星を喰った男』の文庫化にあたって潮氏の遺族とまともに交渉もしておらず、どうにも不可解な事態だと言わざるを得ない。



 次に、ゴーストライターの話だが、自分は唐沢俊一潮健児ゴーストライターをしていたと主張したことはなく、唐沢が『星を喰った男』の編集・構成を担当したのは事実だと考えている。だから、文庫化に当たって潮健児著/唐沢俊一編集・構成」とでもしていれば問題はなかったはずなのに、何故わざわざ著者名を変更したのか不思議である。
 さて、小谷野さんは「潮が語ったのを唐沢がまとめた」と書かれているが、唐沢は潮氏が自らかなりの分量の原稿を執筆していたと書いている。『星を喰った男』単行本版P.345より。

 その潮さんの書き下ろされた原稿は、この本に直せば優に五百ページを超え、とても一冊としてまとめきれるものではなかった。涙をのんで削除したエピソードの分量は、元原稿の三分の一にもあたる。


 潮氏本人が500ページ以上も原稿を書いているのならゴーストはいらないし、本人がこれだけ書いているのなら『星を喰った男』はれっきとした「自伝」であると言うべきであろう。唐沢俊一は『星を喰った男』について同書の中では「自伝」と書いていたのに、別の本では「評伝」と書いていて、もしかしたら「自伝」と「評伝」の区別がついていないのかもしれない。『星を喰った男』は潮氏が自らの人生を振り返るスタイルで書かれていて、潮氏への批評らしきものは見られないので、とても「評伝」とは呼べない。



 そもそもは、前回のエントリーで、『ウルトラマンがいた時代』P.162の

(前略)地獄大使潮健児(一九二五-九三)で、『悪魔くん』のメフィストシバの女王に逆らって軟禁された時、代理を務めたオネストメフィストである。唐沢俊一が潮の伝記『星を喰った男』を書いている。


 という箇所に「『星を喰った男』は潮健児の自伝である」と指摘したのが、おそらくは今回の事の発端なのだろう。上の方でも書いたが、唐沢俊一も『星を喰った男』が潮氏の自伝であることを同書の中で認めている。文庫化の際に編著者の名義が変更された影響で、「唐沢俊一が潮の伝記『星を喰った男』を書いている」という誤解を生じさせたのであって、やはり唐沢と文庫版を発行した早川書房の双方に問題があったものと思わざるを得ない次第である。なお、以下は余談だが、唐沢の実弟である唐沢なをきが自身の漫画の中で「故人の作品の著者名を変更して我が物にしてしまう」話を描いている(2012年8月26日の記事を参照)。実によく似た話だが、『星を喰った男』との関連は不明。
 最後に、小谷野さんから貴重なご意見を頂いたことにあらためて感謝いたします。




●「唐沢俊一検証blog」らしく唐沢の話題も取り上げておく。
 ひとつめ。唐沢によるマーガレット・サッチャーの「追討」では、何故か土井たか子批判が繰り広げられているのだが、どうにも理解に苦しむ話である。「『北海ハイジャック』の女性首相のモデルになっているサッチャーと私の政治信条は違う」と土井が吹き替えを拒否していたとしたら、そっちの方が政治センスがないのではないか。映画の吹き替えを担当するのは有権者へのアピールにもなるから、政治家としてはありがたい話だろうし。…まあ、小泉純一郎ウルトラマンキングの政治信条は一致しているのか?と少し気になりはした。



 ふたつめ。最近の唐沢俊一はよく転ぶ、という話。

 「つぶやき日記」2012年7月17日分より。

一日中廃人のようになって過ごす、かと思ったら案外元気に8時半には目が覚める。節々が痛いのは、昨日、持ち帰りの小道具の紙袋抱えたまま盛大に転んだため。入浴、また寝る。


「つぶやき日記」1月17日分より。

朝、起きて少し節々が痛む。氷道でスッテンする人々の姿をニュースで見て、これだから“内地”人は、と嘲笑っていたら、ゆうべ買物に出て、凍った路地で滑って見事にスッテーンと大開脚で転んでしまったのであった。再上京からも既に四半世紀、体も北国の人間では無くなっているか。

「つぶやき日記」3月26日分より。

やっとわかって歩き出したら、何の障害物もないのに、足をスッ、ととられた感じになり、スッテーンと転んでしまった。このあいだ転んだときは腕だったが、今回は左胸をちょっと強く打つ。三遊亭圓生が子供時代、転んで胸を打って高熱を出して体を壊し、義太夫語りをやめねばならなかったというエピソードもあり、胸を打つのは軽くみるとあぶない。大丈夫かな。将門の首塚にまだ参ってないこともあり、祟りではないか、などと考える。一日、下を向くと痛かった。


 もともと足の悪い人だから心配になる。どうか身近な人は気を付けてあげてほしい。


星を喰った男

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まんが極道 7 (ビームコミックス)

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やるっきゃない!―吉武輝子が聞く土井たか子の人生

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