唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

ORANGE TRAIN SUICIDE.

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マニー・パッキャオvsファン・マヌエル・マルケスを観たら元気が湧いてきたので更新。別に唐沢俊一にカウンターを喰らわせたいわけじゃないけれど。



唐沢俊一の新刊『雑学プロファイル・日中韓お笑い不一致』(徳間書店)がAmazonで予約を開始した。Amazonで取り扱われているということは、ちゃんと出るものと思っていいのかな。発売日は12月20日になっている。


町山智浩さんが『平成極楽オタク談義』で岡田斗司夫唐沢俊一と話が噛み合わなかったことを告白されている(Twitter)。音楽に興味のない岡田と洋楽オンチの唐沢、それに『週刊アスキー』で洋楽の歌詞についての連載を持っている町山さんとではそれも当然なのだろう。岡田と音楽については2011年7月6日11月6日の記事をそれぞれ参照。唐沢の洋楽オンチ話では「ミックの唇」が好き(2011年6月5日の記事を参照)。洋楽に興味があるかないか、それだけでずいぶんと違ってしまうのが興味深い。



呉智英吉本隆明という「共同幻想」』筑摩書房)の中から、吉本の「アカデミズムへの嫌悪」「大衆特権主義」について論評している部分。P.137〜138より。

 こうした大衆特権主義による批判は、日本マンガ学会設立時にもよく耳にした。マンガを独占するなとか、マンガが学問になっちゃおしまいだとかいう批判である。しかし、学会はどんなものであれ、研究者の意見交換、情報共有を第一とするもので、囲い込みがあるわけでもなく囲い込みができるわけでもない。日本結核学会が結核を独占するはずもなく、結核が学問になっちゃおしまいだという批判も聞いたことはない。日本外交学会が外交を独占できるはずもなく、外交が学問になっちゃおしまいだという批判も上がったことはない。それなのに、マンガのような大衆文化に限って、こういう批判が出てくることは、大衆文化が大衆社会において逆立ちした一種の特権と化していることの現れである。

 「唐沢俊一検証blog」の管理人としては、上の文章を読んで唐沢俊一の「アカデミズムへの嫌悪」を思い起こさずにはいられなかった。これまで唐沢はアカデミズムがアニメや漫画に対して「冷ややかな仕打ち」をしてきた(2009年11月10日の記事を参照)とか、オタクの蓄積を利用している(2011年5月20日の記事を参照)とか、被害者意識に満ちた発言をしていたのだ。
 自分はマンガなどのサブカルチャーが「学問」として扱われることに抵抗がなかったので、唐沢がなぜアカデミズムに反発するのか理解できなかった。呉さんが書いているように囲い込まれるわけでもないし、「学者さんよりいい本を書けばいいじゃん」としか思えなかったのだ。ただ、「大衆文化が大衆社会において逆立ちした一種の特権と化している」と考えると、いくらか理解できる。東浩紀氏を執拗に攻撃したのと同様の心理なのではないか。もっとも、唐沢は『B級学【マンガ編】』(海拓舎)が大学(どうも信州大学らしい)で教科書として使われていることに喜んでいたので(2011年1月29日の記事を参照)、唐沢の「アカデミズムへの嫌悪」はアカデミズムへの憧れが逆立ちしたものではないか、という気がする。



●本題。と学会の新刊トンデモ本の新世界 世界滅亡編』文芸社)で唐沢俊一は以下の6つの文章を担当している。上3つが書籍で下3つが映画である。



・『的中王・海龍のとてつもない予言』(竹書房
・特集「破滅学入門」(『終末から』創刊号に収録)
玉木宏樹純正律は世界を救う』(文化創作出版)
・『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』(1960年・第二東映
・『奇蹟人間』(1936年・イギリス)
・『機械人間 感覚の喪失』(1935年・ソ連



 このうち、『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』についての文章が唐沢の公式サイトに掲載された映画評とほとんど同じであることは11月22日の記事で既に指摘した。
 興味深かったのは、『トンデモ本の新世界』に収録された唐沢の文章に東日本大震災関連の話題が頻出していることである。つまり、唐沢には今回の本においてテーマとなったトンデモな作品を通じて現在の状況を考える、という目論見があったようにも思えてくるわけで、ある意味『トンデモ非常時デマ情報レスキュー』の続編にあたる、と言ってもいいかもしれないが、ぶっちゃけた話、お説教くさい点があることは否定できない。
 その点が一番顕著に表れているのは、「特集「破滅学入門」」についての文章で、1970年代前半のいわゆる「終末ブーム」の頃に「地球の破滅は近い」と様々な不安要素を挙げて騒がれていたのを「今の放射能騒ぎ」(唐沢の表現を借りた)に重ね合わせた内容になっている。まあ、不確かなデータで騒ぎ立てる人はいつの世にもいる、というのはその通りなのだろうが、唐沢俊一の場合は敵意が生で出過ぎで損をしている。『トンデモ本の新世界』P.90より。

 実は現在の日本において起こっている反原発デモの裏にも、かつての全共闘世代の活動家がいて糸をひいているという話をよく聞く。彼らにとり、昨今の反原発運動は、40年近い雌伏の時を経てよみがえった“夢”の結晶なのかもしれない。……もっとも、であれば今回の運動のいきつく先も見えてくるような気がする。時代は進んでいるが活動家たちは60年代と、ほとんどその姿を変えておらず、デモの人数の水増しなど、古くさい手を使っているからだ。


 相変わらず「運動」が嫌いなんだなあ、と思うばかりだが、それと同時に「反原発運動が沈静化してほしい」という願望も見えるのが面白い。



 さて、『トンデモ本の新世界』に収録されている唐沢俊一の文章の中から、気になった点を2つだけ指摘しておきたい。

 
 ひとつめは『奇蹟人間』について書かれた文章から。『奇蹟人間』は、H・G・ウェルズの小説『奇跡を起こした男』を映画化した作品で、ウェルズ自身が脚色を加えている。個人的には最近読んだ浅羽通明『時間ループ物語論』(宝島社)で『奇跡を起こした男』が紹介されていたので「ちょっとした西手新九郎だ」と思ったりした。以下は余談だが、『時間物語ループ論』では東浩紀ゲーム的リアリズムの誕生』(講談社現代新書)にツッコミが入れられていて、それを読んで「唐沢さんもこうすればよかったのに」と思ってしまった。褒め殺しなんかするから小説の中で殺されるんだよ(2009年2月7日の記事を参照)。浅羽氏は他にも宇野常寛氏の『魔法少女まどか☆マギカ』評とか町山智浩さんの『恋はデジャブ』評とかにも突っ込んでいるけれど。アニメ版『エンドレスエイト』を肯定的に評価しているのは面白かった。
 脱線がヒドくなったので話を戻すと、唐沢俊一は『奇蹟人間』のストーリーを最初から最後まで説明した後で、以下のように締め括っている。『トンデモ本の新世界』P.215より。

 ウェルズは結局、ヒトラーからムソリーニ(原文ママ)など、この世界を急速に改造しようとした者たちの最後をぎりぎりまで見届けて、この映画の公開から10年後の1946年、第二次大戦終結の翌年に亡くなった。彼を20世紀最大の知識人の一人に数える人も多い。
 だが、彼が残した“改革はおだやかに、急進的でなく”という思想は、現代人には忘れられかけている考えではないだろうか。国際問題にしろ、原発などの問題にしろ、われわれはとにかく早急に結論を求めすぎる。日常の生活に急激な変化が起きたとき、われわれはこの地上から吹き飛ばされる可能性がある。そのことは、この映画のラストに仰天した心で、じっくり考えてみるのがいいと思う次第である。


 日本国民が「おだやかな改革」を求めているのか「急進的な改革」を求めているのかは次の日曜に判明するが、現時点では「おだやかな改革」の方が優勢のように見える。「急進的な改革」を求める場合は、いわゆる「第三極」に投票すればいいのだろうが(あ、共産党も「急進的な改革」をするのか?)、「第三極」でも日本維新の会日本未来の党みんなの党とでは違うしなあ。また、原発政策に関しては『朝日新聞』の直近の世論調査で「徐々にやめる」が3分の2を占めるという結果が出ていて、「“改革はおだやかに、急進的でなく”という思想」は現代人の中にもしっかり存在しているように見える。だいたい、唐沢も青少年健全育成条例児童ポルノ規制に対して「おだやか」に反対している人たちを腐して「地下へもぐれ」とか「急進的」なことを言っていたので(2010年4月19日の記事を参照)、あまり説得力は感じられない。
 それに、『奇蹟人間』はトンデモなのか?というと少々疑問である。原作はSFの古典として有名で(現在は岩波文庫『タイムマシン他九篇』に収録)、映画のクライマックスも原作を読んでいればあまり驚かないと思う。ウスい自分でも原作を読んでいるので、コアな「と学会」ファンなら当然知っているであろう話を長々と説明されても、という思いはある。細かい点では、ウェルズと「“改革はおだやかに、急進的でなく”という思想」とくればフェビアン協会の話が出てくるのでは?と思ったが、唐沢はこの点に触れていない。

 
 ふたつめは、玉木宏樹純正律は世界を救う』を紹介した文章から。玉木宏樹は『大江戸捜査網』『怪奇大作戦』などで知られる作曲家で、その一方で純正律を推奨し巷にはびこる平均律を批判する活動もしていたのだが、いかんせん本を読む限りでは何故平均律がいけないのかよくわからない(聴けばわかるのだろうか…)。そういったなんとももどかしい点と玉木本人がいささか変わったキャラクターであったことを合わせて唐沢は『純正律は世界を救う』を今回「トンデモ本」として紹介したのだろう。…まあ、純正律」=ピュアなりっちゃん、「平均律」=いつものりっちゃん、と考えると、どちらかを選ぶなんてとても出来やしないのだが。殺せんせーグッジョブ! というのは別のりっちゃんの話。
 話を戻すと、『トンデモ本の新世界』には「世界滅亡編」という副題がついていて、本の中で紹介されている「トンデモ」ネタは「世界滅亡」あるいは「予言」と一応関係のあるものになっているのだが、この『純正律は世界を救う』だけは何故か「世界滅亡」「予言」とまったく関係のない内容なので、どうしてそうなったのか不思議である。…まあ、本のタイトルに「世界を救う」とあるからセーフ、と考えればいいのかもしれない。
 それだけでなく、内容にも気になる点がある。玉木は『音の後進国日本』(文化創作出版)の中で、JR中央線自殺多発の怪」という文章を書いて、JRの駅のホームで流れる音楽のひどさを批判しているのだが(如水会公式サイトを参照)、これについて唐沢は次のように書いている。『トンデモ本の新世界』P.95より。

(前略)JRの各ホームで流れる音楽のひどさを、自分の体験から具体的に挙げ、中央線でも特に中野以西がひどい、と警告する。氏が以前テレビに出演してその持論を述べたとき、ちょうど自殺率の棒グラフが画面に出て、そして中野から八王子までの自殺率がぐんとあがっていることによって証明された、と氏は言っている。
 中央線の自殺率が高いのは、直線コースが多く、駅の間隔が新宿以西では長くなってスピードも上がるので自殺を達成しやすいこと、さらに中野より先だと駅のホームにおける周囲の人目がぐんと減って、自殺を決行しやすいことなどがまず、考えられると思うのだが……。


 『トンデモ本の新世界』に初めて目を通した時点で、このくだりにひっかかった。唐沢は玉木の説明をそのまま受け入れているが、まずはそこから疑う必要があるのではないか。
 「My News Japan」の記事によると、中央線では2008年度に21名の死亡者が出ているとのことで、確かに多い。ただ、御茶ノ水で3名亡くなっているそうなので、「中野より先」=自殺が多いというのは疑わしくなる。また、「My News Japan」の別の記事では、2002年度から09年度までで中央線で一番自殺者が多いのは八王子―西八王子間(14名)だが、以下、荻窪(13名)、新宿(13名)、三鷹(10名)、阿佐ヶ谷(9名)、四ツ谷(8名)、中野(8名)、東小金井(8名)と、新宿・四ツ谷・中野の各駅でも自殺が多いことがわかり、「中野より先」=自殺が多いというのはやはり疑わしい。
 それから、電車のスピードがあるから自殺しやすい、というのも妙な話で、それが本当なら園子温の『自殺サークル』みたいに自殺志願者が大挙して新幹線めがけて飛び込みそうなものだし、ウィキペディアを見る限りでは「駅の間隔」が「新宿以西」で長くなっているわけでもなさそうだ。あと、「新宿以西」「中野より先」の中央線の駅が過疎っているかのような言い回しにはひっかかってしまう。高尾山にハイキングに出かけるついでによく観察してみるといいよ。


 これだけ調べた後で、玉木の『音の後進国日本』『純正律は世界を救う』をチェックしてみた。最初に『音の後進国日本』に収録されている「JR中央線自殺多発の怪」を読むと、中央線の自殺の謎よりもむしろ中央線と山手線の駅のメロディへの批判の方に重点が置かれているのに気づく。玉木はわざわざ山手線と中央線の各駅のホームでメロディをチェックしていて、『うるさい日本の私』(新潮文庫)の中島義道にも言えることだが、音を気にする人はかなり執拗な性格なのかもしれない、などと思ってしまったが、4年以上検証を続けている人間が言えた義理ではないか。
 続いて『純正律は世界を救う』をチェックしたのだが、同書P.32を見てショックを受けてしまった。

前著(引用者註 『音の後進国日本』)の、やや牽強付会な文章(以下略)


 つまり、中央線の自殺の多さとホームで流れるメロディを関連付けるのはこじつけめいていると玉木本人もわかっていたのである。ここを伏せるのはアンフェアではないか。そこまでしてトンデモ度を高める必要も無かろうに。



 以上。文中に原発の話題がいちいち出てくるあたり、「唐沢さんは放射能を気にしているんだなあ」と思われてならなかった。俺も唐沢さんを見習って少しは気にしようかな。




バラード・ヴァージョンを先に聴いていたからインディーズ・ヴァージョンを聴いたときはかなりビックリした。

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