唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

やおい珊瑚礁。

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唐沢俊一公式サイトにて「日本トンデモ本大賞2012」の開催が発表された。これまでと比べると縮小開催になるが、やはりニコニコ生放送で放映された「日本トンデモ本大賞2011前々月祭」の評判が悪くなかったことを考えると、新たなファンを集めるいい機会になると前向きに考えるべきなのだろう。…っていうか、レポートを見て思い出したけど、唐沢俊一の「追討本」はどうなっているのか。
 当日は自分もニコ生で観覧するつもりだけど(会場に行くと芝崎淳氏に見つかる可能性もあるので)、できれば候補作以外の本にも投票できるようにしてほしい。『スコ怖スポット』と『トンデモ非常時デマ情報レスキュー』、どっちに投票するかすごく迷う。



唐沢俊一のトンデモ事件簿』三才ブックス)に収録されている「裏大河『篤姫』」を読み返していて、ミスを発見したので指摘しておく。P.115より。

 彼(引用者註 徳川家定)の最初の妻(正妻)は関白鷹司政照の娘、綾姫であったが、彼女は結婚して間もなく死んだ。


 正しくは鷹司政。「たかつかさまさひろ」とルビが振られていたのに字を間違えている。



P.120より。

 一方の篤姫は、家定の死後、天璋院と名乗って大奥に隠然たる影の勢力を誇っていた。直弼の教育で、彼女は直弼に匹敵する大陰謀家となっていたのである。家定の死後、一橋家から将軍を迎えようと主張していた斉昭らが失脚したので、自分の意向通り、13歳の徳川家茂(11代将軍家斉の息子)を14代将軍に据えて、目的を達成し、家茂を徹底的に可愛がった。

 徳川家茂は家斉のである(家斉の六男・斉順の子)。家茂が生まれたのは1846年だが、家斉は1841年に死んでいるので、家斉が家茂の父親になれるはずがない。それから、家定が死ぬ前に家茂は後継者に決まっている。…それにしても、一度調べたものでもまだ見落としがあったのだから、全部チェックし直すべきなのかなあ。気が遠くなる。


●本題。『唐沢俊一のトンデモ事件簿』は『月刊ラジオライフ』に連載されていた唐沢俊一古今東西トンデモ事件簿』をまとめたものだが、単行本に入っていない連載分も多数存在する(未収録リスト)。
 せっかくなので未収録分も調べてみたのだが、『唐沢俊一のトンデモ事件簿』に見受けられたケース(その1その2)と同様に、ネット上で発表されている文章と酷似したものがいくつか見つかった。とはいえ、まるまるコピペしているわけではなく、編集技術が未熟なために下敷きとなった文章を昇華できていない、とした方がいいような気もする。特徴のある一節をググってみたらすぐにモトネタが見つかる、というパターンが何回もあったのは困ったものだが。
 だが、「さすがにこれはちょっと…」というケースも中にはあるので、今回はそれを紹介しておく。コピペ疑惑以外にも問題がある回でもある。
 『月刊ラジオライフ』2007年3月号に掲載された『唐沢俊一古今東西トンデモ事件簿』第18回「南洋やおいシンポジウム」の巻は、冒頭で1963年から1964年にかけて東京都杉並区で発生した少年通り魔事件について紹介されている。『月刊ラジオライフ』2007年3月号P.148より。

 1963年3月から1964年10月の、およそ1年7か月にわたって、東京都杉並区で、少年による少年の殺人事件が起こった。昆虫採集をしていた11歳の男の子が襲われて縛られ、猿ぐつわをされて押し倒され、下腹部をナイフで切りつけられ2週間の怪我をしたり、杉並区西田町の草原で、通行中の13歳の少年が両手を縛られ猿ぐつわをされたうえで押し倒され、陰部をナイフで切られるといった事件が連続して起こったのだ。1年後に杉並区内の、16歳の少年が逮捕された。彼は警察などに犯行声明を送ってきていたのだが、その筆跡の幼稚さなどから中高生程度の少年と推測がなされ、彼が捜査線上に浮かんだのであった。
 彼は取り調べで、犯行の動機を次のように供述した。
「雑誌を読んでいるうち男が女に切りつける話があり、小学生の男の子を狙ってやってみたら、その瞬間スーッとした快感を覚えた」


 この文章、「オワリナキアクム」で紹介されている「杉並・16歳の連続通り魔事件」にソックリである。

1963年3月から1964年10月の1年7ヶ月にわたって、杉並区周辺で小さな男の子が殴られたり、ナイフで切り取られたりされる通り魔事件が相次いで起こった。

(3)7月15日午後4時10分頃、同区堀の内の雑木林で、昆虫採集中の男児(当時11歳)が男に縛られ、猿ぐつわをされたうえで押し倒され、下腹部などをナイフで切りつけられる。2週間の怪我。

(6)12月26日午後0時10分、同区西田町の草原において、通行中の少年(当時13歳)が両手を縛られ猿ぐつわをされたうえで押し倒され、陰部をナイフで切らられる。少年は性器切断で全治2ヶ月の重傷。

ちょうど1年後、12月26日、一連の通り魔事件の犯人として、杉並区内の高校2年生A(当時16歳)が逮捕された。犯人は挑戦状を送ってきており、筆跡などから中高生程度の少年とされ、Aが浮かんだのだった。

 Aは犯行の動機を次のように供述した。
「雑誌を読んでいるうち男が女に切りつける話があり、小学生の男の子を狙ってやってみたら、その瞬間スーッとした快感を覚えた」


 いやー、ソックリ。犯人の少年の供述は一字一句同じだし、「下腹部」「陰部」と統一されていないのも同じ。
 もっとも、唐沢俊一は「少年による少年の殺人事件」と書いているが、この通り魔事件で死者は出ていない。「オワリナキアクム」でも「死亡事件はなかった」とされているのに、そこは違っている。



 …しかし、この回の奇妙さはこれだけではない。唐沢俊一は犯人の少年の供述を紹介した後で次のように書いている。P.149より。

 この供述に、いわゆる“やおい”の匂いを嗅ぐのは私だけではないだろう。女に切りつける話を自分の脳内で男の子を切りつけるように改竄しているのである。


 …そうかなあ? むしろサディズムの問題じゃないかなあ。神戸連続児童殺傷事件とよく似ているし。だが、唐沢は「やおい」の問題として『現代』1995年3月号に掲載された「大シンポジウム 性の人類学」からニューギニアのファス族の「儀礼化された同性愛」を紹介している。唐沢は「性の人類学」がお気に入りらしく、いくつかの本でネタにしているが(「トンデモない一行知識の世界」)、この座談会が増補改訂されて『性と出会う―人類学者の見る、聞く、語る』(講談社)にまとめられていることを知っているのかどうか。なお、唐沢はこの座談会に出席している松園万亀雄氏を「松岡万亀雄」と誤記している。


 ファス族の「儀礼化された同性愛」においては男性的な要素を高めるために少年が様々な手段(フェラチオ・肛門性交・マスターベーション等)で体内に精液を注入される、という栗田博之氏の発言を紹介した後、唐沢俊一は次のように書いている。P.150より。

 フェラチオだのマスターベーションだのといった“やり方”が“報告されています”って、どこの誰から報告されるのか、その様子を考えるだけで何か楽しい。
 とはいえ、そういう、AVそのままの行為を、ニューギニアの原住民男性たち(原文ママ)が少年に対して行っていて、それが重大な儀式になっているというのはなかなか興味深い。やおい同人誌を大量に販売するコミケ文化を持つわれわれは、いったいどこがどれだけ進化したのであろうか?


 唐沢俊一ノリノリである。この手の話が本当に好きなんだなあ。
 …それにしても、だ。この回の冒頭に紹介された少年通り魔事件とニューギニアの「儀礼化された同性愛」って全然違う話だろう。もちろん「AV」「やおい同人誌」とも違う。だが、唐沢はこの回の最後でも強引にまとめてしまっている。P.152より。

(前略)文化は必ずしも、西欧文明から南方に伝わるとは限るまい。むしろヨーロッパ人たちの方が、南方の彼等からホモ・セックスの楽しさを教わったのではないだろうか? やおいの起源は南太平洋に求めるべきなのかもしれない。
 昭和の少年愛猟奇は、別に爛熟と退廃の果ての文明が生んだ特殊なものでなく、健康的な南の島が伝えた“文化”の行きついた果てなのではないかと思うのである。


 うん、やっぱ、ノリノリだ。…いや、だから、少年通り魔と「儀礼化された同性愛」は違(以下略)。男性的な要素を高めるための儀式から少年の性器を切断する通り魔にどうやったら行き着くのかが真剣に謎。あと、座談会の中で、栗田氏はファス族とヨーロッパ人が接触した後で「儀礼化された同性愛」は廃れていったと発言している(『性と出会う』P.215)のに、どうしてそれをスルーするのか。



 「昔の本や雑誌に書かれていることをそのまま紹介する」のは唐沢俊一の得意なパターンだが(上で紹介した「裏大河『篤姫』」もそのパターン)、そこから外れて自分なりにネタをまとめようとするとこのような散らかった文章になっちゃうのかなあ、と思ったり。


唐沢俊一のトンデモ事件簿

唐沢俊一のトンデモ事件簿

性と出会う―人類学者の見る、聞く、語る

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