唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

油断した! 九段下!

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 『月刊少年ガンガン』8月号に掲載された第18回スクウェア・エニックスマンガ大賞受賞作品が小説から盗用していたとして編集部が謝罪した(公式サイト)。詳しい検証については萌えオタニュース速報を参照していただきたい。冲方丁からパクったか…。


 唐沢俊一『スコ怖スポット・東京日帰り旅行ガイド』ごま書房新社VM)の検証を再開する。今回は「スコ怖スポット10 九段下(靖国神社)」を取り上げる。
 靖国神社を扱うのであれば面白い話題には事欠かないだろう、と思うのだが、どうも『スコ怖』に出てくる話題がいまいちウスいのが気になる。唐沢は靖国神社「バラエティに富んでいる」として、招魂社時代に花火大会が行われていたことや大砲や戦艦のミニチュアが並べられていること(唐沢の文章ではわかりにくいが遊就館のことか?)を挙げているのだが、靖国神社の「バラエティに富んでいる」面の考察については、既に坪内祐三靖国』(新潮文庫)という労作が存在していて、特に目新しいものではない。奉納プロレスだって開催されているくらいだもんね(『スコ怖』ではスルー)。また、『九段の母』の話題が出てくるのにそれに関連して小松左京『くだんのはは』が出てこないのも不思議だ。唐沢は小松左京に影響を受けたと言っていたのに(2010年10月21日の記事を参照)。その一方で、(入江)紗綾の写真のおかげで中国の反日運動が収まった話を書いていて、情報をチョイスするセンスに疑問を感じざるを得ない。紗綾と反日運動の話は2005年当時の週刊誌でも紹介されていたから、知っている人は結構多いだろうし。


 さて、唐沢俊一はこの章の中で、稲川淳二のすご〜く恐い話Ⅱ』リイド社)に載っている靖国神社に関する怪談を紹介している。…「スコ〜し怖いスポット」がテーマの本で「すご〜く恐い話」を紹介するのはどうか、と思うのだが、『スコ怖』P.81〜P.82から引用する。

俳優の岡崎友紀さんの体験。 神田生まれの岡崎さんが幼かったころ、靖国神社が遊び場だった。若いお手伝いさんと一緒に、 いつものように靖国神社の鳥居をくぐると、右手にある大きな木に祠のような大きな穴が開いていて、岡崎さんとお手伝いさんは中へ入ってみることにした。長いトンネルを抜けるように、少し歩いていると先が明るくなってきた。洞窟を出ると、そこは千鳥ヶ淵。とても、そんな時間で行ける場所じゃない。長い距離を歩いて、家まで帰った二人は、次の日その木のところまで行ってみたが、もう、そんな大きな穴はどこにもなかったという……。

 実はこの部分は、「お霊参り2」というブログの2010年7月5日のエントリーから大部分をコピペしたものである。

俳優の岡崎友紀さんの体験。
岡崎さんが幼かったころ、靖国神社が遊び場の一つだった。
若いお手伝いさんがいて、岡崎さんが遊びに行くとついて行く・・・
お嬢様付きのお手伝いさんだったのでしょう。
いつものように靖国神社の鳥居をくぐると、右手にある大きな木に
祠のような大きな穴が開いていて、岡崎さんとお手伝いさんは中へ入ってみることにした。
長いトンネルを抜けるように、少し歩いていると先が明るくなってきた。
洞窟を出ると、そこは桜で有名な千鳥ヶ淵
とてもじゃないが、今まで歩いた距離で行ける場所じゃない。
長い距離を歩いて、家まで帰ったそうです。
次の日には、祠のような大きな穴はなかったとのこと。

 …例によって例のごとく、ですね。
 もちろん、オリジナルの文章も見てみる必要がある。『稲川淳二のすご〜く恐い話Ⅱ』P.155〜P.159より。

岡崎友紀ちゃんという女優さんがいらっしゃいますよねえ。

その、岡崎友紀ちゃんがかつて、あの靖国神社の近くに住んでました。
お嬢様だったんですねえ。
お手伝いさんがいたんですから。
やんちゃな友紀ちゃんが、遊ぶのが、その靖国神社ってわけです。
お手伝いさんもまだ若いものだから、ついてくるわけです。
十代のお嬢ちゃんだったわけですよ、そのお手伝いさんも。
何回も何回も何回も、遊びにきている靖国神社なのに、ヒョイと見たら、初めて気がついたんですね。
鳥居を入ったすぐ右側に、大きな木があるんですが、
「そこに祠があった。穴が開いていた」と言うんですねえ。
「あっ、こんなに大きな穴がある」
そうしたらお手伝いさんも気が付いて、
「あらあ、こんなに大きな穴があるの」
「かくれんぼしようか…ねえ、入ってみよう」って言って、友紀ちゃん、その穴に入ったそうです。
お手伝いさんもね、続きました。
そうしたら、ずーっと奥につながってるもんだから、
「おもしろいから行ってみようか」って言って、その長〜い洞窟を、トットトットッと歩いて行ったんですね。
そうしたら、明るくなって、きたんですよ。
「でも、距離からすると、まだ明るくなるような、そんなもんじゃなかった」って言うんですね。
(フッ)と思って、気が付いた。
目の下には、なんとですねえ、「水が見えた」って言うんですよ。
(どこ、ここ?)と思ったら、こともあろうにですねえ、彼女らは、江戸城の、それもちょうど、あの、桜で有名な千鳥が淵ってありますよねえ。
あのそばの、石垣の上にいたそうですよ。
でも、待ってくださいよ、靖国神社から、あの千鳥が淵。
確かに、近いといえば近いけれども、トットトットッと歩いていく距離じゃないんですよ。
まして、そんな長い地下道が、あそこには、ないわけですよね。
それで、お手伝いさんがびっくりして、
「どうしましょうどうしましょうどうしましょう」って言うんです。
もちろん、友紀ちゃんも、なんで自分が、ここにいるか、わからない。
しかもですよ、まわりを見ても、今、自分が出てきたトンネルなんて、どこにもなかったんですよ。
それで、ふたりはしょうがないから、千鳥が淵の白い壁にひっつく様にして、石垣の上を、恐る恐る、横に“ズッズッ”とずれながら、やっと、路に着いて、歩いて帰った、という話があるんですねえ。
で、岡崎友紀ちゃんが言うんです。
「一体、私とお手伝いさんが体験したものはなんなんだろう?」
で、あらためて、気持ちが落ち着いてから、
「ねえ、確かめにいかないか」って言って、ふたりで、靖国神社の鳥居をくぐって、その右側にある大きな木のところに行ったんですよ。
ところが、“グルグル”回ってみても、そんな大きな穴はなかったそうですよ。

 おそらく稲川淳二の話をそのまま文字に起こしたのだろう。だいぶクセのある文章になっている。嫌だなあ、嫌だなあ。怖いなあ、怖いなあ(モノマネ)。
 そして、そのようなクセのある文章を別々に要約すれば、当然かなりの違いが出てくるはずである。にもかかわらず、「お霊参り2」と『スコ怖』の文章は酷似しているのだから、唐沢は原典に当たらなかったのではないか?と疑ってしまう。以下、細かいポイントを挙げておく。


1)「お霊参り」『スコ怖』では「祠のような大きな穴」という表現が同じ
 原典にはそのような表現はなく、一般的に「祠=穴」というわけでもない。

(2)原典では「石垣の上」から「路に着いて」という描写があるのに、「お霊参り2」『スコ怖』はともにスルー

(3)「お霊参り2」『スコ怖』では「次の日」見に行ったことになっているが、原典ではそのように書かれていない


 あと、「お霊参り2」『スコ怖』はともに原典のタイトルを『稲川淳二のすご〜く怖い話Ⅱ』と誤記している。そこまで一緒にしなくても。 


 岡崎友紀の体験について、カラサワ探偵長は以下のように分析している。『スコ怖』P.82〜P.83より。

科学的に謎を解明するならば、靖国神社のこの灯籠などがえんえんと立ち並ぶ情景は、特に子供や若い女性などには生理的な催眠効果をもたらす作用がある。敷地内を歩き回っているうちに岡崎さんもつきそいの女性も、方向感覚や距離感覚がマヒしてしまい、記憶に空白ができてしまったんじゃないか

 靖国神社ってそんな危ない場所だったのか。まさに「スコ怖スポット」だ。なお、稲川淳二岡崎友紀の体験を「タイムスリップ」ではないか?と推理している。


 今回は事情が事情なので無理でしたが、次回以降はできるだけ褒めていこうと思います(本当)。


スコ怖スポット―東京日帰り旅行ガイド

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