唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

シュメールの日曜日。

立花晶『サディスティック・19』を思い出す。



 唐沢俊一鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン)に収録されている唐沢俊一のコラム「唐沢的メルクマールFILES」その5、「原点がここにある……らしい」より。蛭児神建ロリコン大全集』が紹介されている。

 一九七〇年代末、コミケに真っ黒い表紙の(後にここから“黒本”と呼称されるようになる)マンガ同人誌が出品され、販売された。その内容は、アニメやマンガのヒロインをネタにした少女ポルノ。某有名プロ作家も、変名を用いて執筆していた。その名は『シベール』。少女と脱走兵の友情を描いたフランス映画『シベールの日曜日』からとられた誌名である。この気取った命名からもわかるように、それまで、インテリ知識人のちょっと変わった性的傾向、というような意味あいだったロリータ・コンプレックス、略して“ロリコン”のムーブメントは、この黒本に影響された同人誌の爆発的増加によって、一気にオタクの代名詞にまでなり、それは産業として確立され、他の創作物すべてに影響を与え、日本の若者のアイデンティティにまで変化をもたらし、そしてあの“宮崎勤事件”によって許されざる存在と烙印を押されるまで、大暴走を続けることとなる。

 「他の創作物すべてに影響を与え」はいくらなんでも話を膨らませすぎだと思うが…。「インテリ知識人」というのは杉本五郎を想定しているのだろうか。あと、『シベールの日曜日』の説明がヘン。あれに出てくるのは傷痍軍人であって脱走兵ではない。吾妻ひでお先生はDVDを欲しがっているようだけど。

 なぜ、ロリコンというものとオタク的嗜好が結びついたのか、それは真実、死に至る病なのか、というような問題はまた場を改めて語るとして、この大全集は第一次ロリコンブームがおさまったあたりの総まとめという意味で編集されたもの。巻頭にある吾妻ひでおの、仁義なき戦いのパロディのロリコン関係者名鑑マンガが、わけがわからない展開なりに、当時のロリ業界の複雑怪奇ぶりをよく表していてむちゃくちゃにオモシロイ。原丸太こと志水一夫とか、岡田斗司夫とか、編集の緒方(小形)克宏だとか、知った名前がボロボロ出てくるのが実になんとも。

 いや、今からでもロリコンについて語ってほしいものですが。同性愛には知的好奇心をおぼえるのにロリコンには興味がないなんてことはまさかないと思うし。どっちも唐沢言うところの「性のフリンジ」ですよ? まあ、ロリコンについてヘンなことを言ってるし(2009年12月16日の記事を参照)、児童ポルノ法の問題でも妙に改悪反対派に冷ややかな態度を取っているのが謎なのだけど。それと、志水一夫岡田斗司夫は80年代には業界に入っていたのに、唐沢俊一出発が明らかに遅かったのだな、と改めて感じたり。


 いまやロリコンブームは、世の識者たちによって、そういう時代があったことさえ記憶から抹殺せしめられようとしている。あたかも、ナチスに関連したことを語ることすら、ドイツではタブーとされているように。しかし、後世の若い世代の人格形成にこれほど大きな影を落とした事象を記録にとどめておかなくては、ついに二十世紀末の日本という国の、大きな部分が欠落したままになってしまうだろう。
 ヒステリックな糾弾ではなく、ロリコンという現象に、なぜああまで多くの若い世代が没頭し、狂乱したかを考証することで、現代日本人のアイデンティティの危機は、あるいは回避され得るのではないかと、これは大袈裟ではなく、マジでそう思っていたりするのであります。

 そうかなあ。ロリコンブームについてはわりと語られていると思うけど。最近でも高月靖ロリコン 日本の少女嗜好者とその世界』(バジリコ)という本が出ているし、つい先月も米沢嘉博記念図書館『シベール』に関するトークイベントも行われている。というか、ロリコンブームをなかったことにすると、宮崎勤の事件もかえってわかりにくくなると思う。
 でも、「ロリコンという現象」を考証している斉藤環戦闘美少女の精神分析』をどうして悪しざまに言うのだろう(3月1日の記事を参照)。ロリコンブームの記憶を「抹殺」しようとする動き(本当にあるのかどうかは知らない)に立ち向かっているわけだから、評価してもいいのではないか。出来ることなら、唐沢には斉藤以上の論考をしてもらいたいものだけど。


 もうひとつ、『ブンカザツロン』P.106〜111に収録されている、唐沢俊一鶴岡法斎の対談「ハイストレンジ・マンザイ」第二幕も紹介しよう。ここでは「エロ」をテーマに2人が良く言えば味のあるトークを、悪く言えば緊張感を欠いたダラダラした話をしている。あまりにも内容がないので困ってしまうのだが、一ヶ所だけ引用してみる。P.110より。

唐沢 でもねえ、だいたいオタクのセックスは嫌われるというのは、いろんなことをやってみたいっていうそれですね。要は。


鶴岡 ですね。


唐沢 いろんな女とやってみたいとか、いろんな体位試してみたいとかっていう。昔つきあってた女の子に、大学時代怒られましたもんね。なんでそう毎回新しい手を考え付くんだって(笑)。


鶴岡 そうですねえ。


唐沢 だって図とかいろいろ雑誌で見てこういう手があったかと思ったらそれを一応それを(原文ママ)試してみようとか思うじゃないですか。


鶴岡 思いますね。やってみて意外と楽しくないことが世の中、九割を占めてるんですがいろいろありますよね。


唐沢 なにかの本でね、乳首を指で弾くと女はメロメロになる、って書いてたのがあってねえ。まさかこれで喜びやしねえだろうと思いながらこうぽーんぽーんと弾いてみたですよ。そうしたらオモチャにするなって怒られましたね、やっぱり。


鶴岡 あと鎖骨を舐めるとかね。ほうどないなもんだろうと思ってね。


唐沢 ああ、女は実は指と指の間がいちばん感じるとか書いてあるとね、そうかそうかってポンと膝を打って、という感じでね。


鶴岡 なるほど確かに敏感である、とかね。


唐沢 そんなのただ単にくすぐったいだけだよな(笑)。感じなきゃなんにもならないのに。

 …常日頃、「唐沢俊一検証blog」を楽しみにしてくださっているみなさんに残念なお知らせをしなければいけませんが、『ブンカザツロン』という本は全編こんな感じです。本当に大変な本です。
 それにしてもまあ、唐沢俊一は一体何を言っているのだろうか。そりゃ鶴岡氏も超適当な相槌しか打たないわけだ。ものすごい耳年増を相手にしたら誰だってそうなるよ。
 …もうねえ、飲み屋でこういう話をしているんだったらそれなりの対処も出来るわけだけど、本で読まされたんじゃこっちも何も言えませんよ。北島康介ばりに何も言えねえ。


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・初めての方は「唐沢俊一まとめwiki」「唐沢俊一P&G博覧会」をごらんになることをおすすめします。
・1970年代後半に札幌でアニメ関係のサークルに入って活動されていた方、唐沢俊一に関連したイベントに興味のある方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。

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シュメル―人類最古の文明 (中公新書)

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サディスティック・19 (白泉社文庫)

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ロリコン大全集

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ブンカザツロン (ファミ通Books)

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ロリコン

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