唐沢商会『東方見物録』について。
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karasawagasepakuri@yahoo
明日(3月12日)13時30分から日本テレビで放送される『半径3mの解体新書』に唐沢俊一が出演します。雛壇に座ってますね。みんなも観よう!
快楽亭ブラック師匠のブログで2月11日の「天才ライブ」の模様が書かれている。当日は雪だったからお客さんも来なかったっぽいけど、気になるのはブラック師匠がライブの後で『柳生旅ごよみ 女難一刀流』を観ていること。唐沢俊一と一緒に観たのだろうか。唐沢の『柳生旅ごよみ 女難一刀流』の感想については藤岡真さんのブログを参照されたい。
本題。唐沢俊一初の連載、より正確に言えば唐沢商会初の連載である『NEWパンチザウルス』の『東方見物録』について、先日図書館で『ザウルス』のバックナンバーを確認してきたので、今回はあれこれ書いておく。
まず、この『東方見物録』で「唐沢商会」というユニットが結成されたものと思われる。『ザウルス』の前身である『平凡パンチ』1988年1月7日・14日合併号に『鋼鉄人間28号』というマンガが掲載されているが(『近未来馬鹿』所収)、そこでは唐沢俊一となをきの名前が別々に記されている。また、『東方見物録』のタイトルページには毎回「唐沢兄弟商会提供」と書かれていて、唐沢俊一初の単著である『ようこそ、カラサワ薬局へ』(徳間書店)のプロフィール欄にも「唐沢兄弟商会」とあったことを考えると、もしかするとユニットの正式名称は「唐沢兄弟商会」なのかもしれない。
なお、連載第1回目ではタイトルが『東方見聞録』となっていたが、第2回目からは『東方見物録』となっている。第1回目で誤植してしまったのか、マルコ・ポーロ側から抗議があったのかはわからない。
次に、『東方見物録』は『NEWパンチザウルス』創刊号から15号まで連載されているが(『ザウルス』は19号で休刊)、『脳天気教養図鑑』(幻冬舎文庫)に収録されていない回がいくつかあるので、以下にタイトルを挙げておく。
第1回「唐沢兄弟登場す」
第5回「ストレス&バイタリティ」
第8回「ブレイン・ダメージ」
第9回「EAST IS EAST」
第12回「未来世紀トキオ」
以上5本は『脳天気教養図鑑』未収録である。そのほか、単行本に収録されている作品でも、雑誌掲載時からかなり修正されているので、唐沢なをきマニアの方は比較してみるといいかもしれない。また、『東方見物録』連載終了後の『ザウルス』17号にも唐沢商会のマンガ『明日に向かってツッパレ』が掲載されているが、おそらくこれも単行本未収録なのでは(『ザウルス』最終号に掲載された『聞き書き 怪談』は『唐沢商会のマニア蔵』に収録されている)。
唐沢俊一と唐沢なをきはともに「取材が苦手」と言っているだけあって、単行本未収録の作品の大半が取材ものである。だから、『ガロ』に移籍してから持ち味が出たのは確かだと思う。
それでは、単行本未収録の作品について気になった点を簡単に取り上げておこう。
第5回で、唐沢兄弟は阿佐ヶ谷のホルモン酒場に取材に出かけ、そこで居合わせた客から競走馬を下痢させてイカサマを仕掛けた話を聞かされている。実は『社会派くんがゆく! 乱世編』(アスペクト)でも唐沢俊一は同じ話をしているのだが(藤岡真さんのブログを参照)、そこでは「二十代」のころに「人生の師」から聞かされたことになっている。…どういうことなんだろうなあ。
あと、第12回で唐沢俊一は「昔からSF小説を読む時にはロボット・ロケット・光線銃以外の用語を飛ばして読んでいた」という内容の告白をしている。…「エスパー」とか「ベム」とか「ナノマシン」とかもダメなのだろうか。SF小説を読むときにはその手の用語を読むのが楽しいと思うのだけど。「ジョウント」とか見るとワクワクしない? さらに唐沢俊一は「ワープやハイパードライブをみんな理解して使っているのか」という内容の発言もしている。山本弘会長に説明してもらえばいいのに。この後「銀背はほとんど読んでいる」とも言っているのだが、それまでSF心のまるで感じられない発言をしているおかげで説得力がまるでなくて困る。そんな人がどうしてSFを読んでいたのだろうか。
以下は余談。『NEWパンチザウルス』や末期の『平凡パンチ』を読んでいると実に面白くて、「船木優治の初々しさに注目!」という見出しを見つけて吹き出してしまったり、マキノ雅裕と牧野アンナの対談(つまり祖父と孫娘)なんてものを発見して驚いたりして、本当に楽しかった。時間があればこういう昔の雑誌をじっくり読んでみたいものだ。
一番ビックリしたのは藤田和日郎が『ザウルス』で投稿ページのイラストや自動車のPRマンガを描いていたことで、「富士鷹ジュビロ先生もこんなことをやっていたのか」となんだかお得な気分になった(この翌年に『うしおととら』の連載がスタート)。
あと、『ザウルス』最終号の恐怖特集に掲載されている日野日出志『奇胎の海』が本当に不条理かつグロテスクな傑作で、図書館の中で「キター!」と内心こっそりと大フィーバーしてしまった。『怪奇曼荼羅』(桃園書房)に収録されているので興味のある人は探してみよう。個人的に日野作品からは人格形成に多大な影響を受けているものの、「あまりにも凄すぎて逆に怖くない」という感じ。伊藤潤二も同様。…あ、そういえば、朝日ソノラマの『伊藤潤二コレクション』で唐沢俊一が解説を書いていたっけ。当時は唐沢に興味が無かったから「ふーん」と適当に読んでしまったけど。もう一度チェックしてみるかな。
話がかなり脱線してしまったが、今後もこんな感じで単行本に収録されていない唐沢俊一の作品をチェックしようと思います。いよいよマニアックになってきた…。
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