唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

メルクマールで眠くなる。

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karasawagasepakuri@yahoo


 今日21時からスタート『豪STREAM』『クイック・ジャパン』での唐沢俊一のインタビューの件が話題になるかもしれないので、興味のある人はチェックしてみよう。吉田豪さんは一応話すつもりのようです。


 本題。今回も唐沢俊一鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン)に収録された唐沢俊一のコラム「唐沢的メルクマールFILES」を紹介していく。
 P.31の「七大幹部の総攻撃」では、山田風太郎がテーマになっている。

『おぼろ忍法帳』は、その山風忍法帳の中でも最高傑作とされており、いまの若者にも熱狂的な信者を有しているが、はたして彼らはこの小説の面白さをどれくらい味わえているか、となると少々疑問である。少なくともわれわれの世代くらいまでは、ここで魔界の剣士に転生した剣豪たち、田宮坊太郎や荒木又衛門(原文ママ)、さらに黒幕の軍師森宗意軒などという人名を、子供向きの講談小説やチャンバラマンガで知っていた。この作の面白さは、そういう、チャンバラマンガファンにおなじみの剣豪たちをもし、一堂に介せしめて戦わせたら、という、戦前の立川文庫にあった寛永御前試合ものの現代の換骨奪胎のアイデアにあり、伝奇ロマン云々という昨今の評価は、むしろ後から付け加えられたものなのだ。昨今の『スーパーロボット大戦』など、みな、アイデアの根本はこの『おぼろ忍法帳』からきている、と思うのである。

 この文章に関する検証は藤岡真さんが既にされているが、『おぼろ忍法帖』または『忍法魔界転生』における「歴史上の英雄を集めて戦わせる」というアイディアは永井豪が『黒の獅士』でそのまんまやっているし、『ブンカザツロン』が出版された後には、『Fate/Stay Night』が大ヒットし、平野耕太ドリフターズ』も異世界に召喚された英雄たちが戦う話である。あと、神崎将臣『鋼-HAGANE-』も「魔界転生」ジャンルに入るかな。まあ、忘れているだけでたぶんまだまだあるはず。凄いアイディアだもんな。
 …で、これらの作品はストーリー自体が面白いから人気を博したのであって、読者が史実を知っているかどうか、というのは実はあまり問題ではない(むろん知っているのに越したことはない)ので、唐沢の心配ははっきり言って取り越し苦労である。『魔界転生』といえば深作欣二の映画版も石川賢のマンガ版も原作とは別物になっているのだけど(どっちも素晴らしいと思います)。あと、風太郎さんは立川文庫を読んでいないとどこかで発言していたような。


 続いてP.43「大怪獣絵巻の逆襲」にはこのようにある。

 ウルトラマンの怪獣を総出演させたドラマ『なぐりこみバルタン連合軍』という話の中に、こういうくだりがあった。バルタン星人にフラッシュビームを奪われて変身できないハヤタ隊員のピンチに、ピグモン(“ちびっ子怪獣”)がそれを届けて、危急を救う。怒った親玉のバルタンが「おのれピグモン 裏切ったな!」と叫ぶと、ピグモンが「裏切ったんじゃない、表返ったんだ!」と(しゃべるんだよ、こいつが)答える。

 そして、唐沢俊一は後になってマキノ正博の『浪人街』の中にピグモンのセリフのモトネタがあるのに気づいて驚いた、という話になるのだが、コラムで書かれている『なぐりこみバルタン連合軍』のあらすじは実際のものとはだいぶ違う。ウルトラマン』の怪獣は総出演していないし、劇中でハヤタはフラッシュビーム(ベーターカプセル)を奪われない…っていうかそれ以前にハヤタは出てこない。ピグモンはバルタン星人率いる宇宙怪獣軍団の襲来を地球の怪獣たちに告げたことをバルタン星人に「裏切ったな!」と責められるのである。ちなみに、この『なぐりこみバルタン連合軍』は登場する怪獣のチョイスがなかなかマニアックで、ラストのウルトラマンとバルタン星人の対決もアッと驚く展開になる。怪獣ファンの楽しみを奪っても悪いのであえて詳しく説明しないでおく。個人的にはこういうの大好き。

登場する怪獣のラインナップとラストから考えると、『ウルトラマン』放送初期に録音されたものだと思われる。


 P.77の『栄枯聖水……いや盛衰』では、裏本にまつわる思い出がテーマになっていて、浪人生の時に吹雪の中裏本を買いに行って危うく凍死しかけた話などが書かれている。裏本といえば、 「裏モノ日記」2000年6月4日には、

俺はビニ本裏本でも第一世代なんだなあ、と改めてわがトシを思う。

という一節が出てくる。…エロ本でもアピールするのか。
 それから、『栄枯聖水……いや盛衰』には気になる記述もある。

 仙台に一時いたときは、駅の裏側にあった裏本屋を贔屓にしていた。ここの店番は七〇くらいの婆さんで、自分の選択眼に自信を持っており、「これがおすすめ。なかなかポーズなんかも多くていいわよ」などとこっちに勧め、それがまた、案外確かだったこともあって、ちょっと仲良くなったりした。店は繁昌して、今度駅前再開発で別のところに移るから、というあたりでこちらが仙台を離れてしまってそれきりになったが、あの婆さんはまだ存命だろうか。だとすると九〇くらいになっているはずだが、もしその年でまだ裏本屋をやっていたら、国は叙勲くらいしてしかるべきではないかと思っている。

 1980年代に仙台駅前が再開発された時期を調べれば、唐沢がいつ東北薬科大学に通っていたわかるかも。また、仙台駅前の裏本屋については「裏モノ日記」2007年11月18日にも記述がある。

駅の近く、ユニクロの巨大なビルが建っているあたりがまだ
せせこましい商店が建ち並ぶ一角だった頃、そこに月替わりで貼られる
全日本プロレスのポスターを飽かず眺めていた23歳の暮れを
しみじみ思い出す。小さい古本屋があり、そこに修正前の
平井和正『狼男だよ』が出た(あの有名な改悪版である)、
という噂が流れて飛んでいったこともあった。結局、違ったが。

「あと、三畳くらいの狭いビニ本屋があってねえ」
と言ったら、あのつくんが吹き出した。彼も通っていたらしい。

 唐沢俊一は一浪しているから、「23歳の暮れ」にはまだ東京にいたはずなのだが…。



 次回以降に続く。


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