唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

1958年=唐沢暦元年?

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karasawagasepakuri@yahoo


 唐沢俊一鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン)には、「唐沢的メルクマールFILES」というコラムが合計12本掲載されている。今回はそのうちからP.19に掲載されている「諸悪の根源はこの年に」を紹介する。唐沢俊一が生まれた1958年について書かれたものである。

(前略)オタク元年ともいわれ、岡田斗司夫とり・みき坪内祐三などが大挙して生まれたこの年に、いったいなにがあったのか。項目を見てみると、日食が起き、見事な金環食が観察されたとある。思うに、このときの食から発せられた特種な(原文ママ宇宙線が、この年完成したばかりの東京タワーによって日本中に発信され、胎児、または乳幼児であったわれわれに影響を与えた結果、その後の趣味嗜好に大きな影響を与えたのではないかと思われる(ウソ)。

 「オタク元年」で検索してみたが、1958年を「オタク元年」としているところはないような…。ササキバラ・ゴウ氏によると、唐沢は以前に1977年を「オタク元年」としていたようだけど。それから、坪内祐三は『SPA!』の連載対談で「唐沢俊一が俺のことをオタクだって言ってるけど、俺はオタクじゃないから!」などと福田和也に愚痴っていた。なお、唐沢俊一『唐沢俊一のトンデモ都市伝説探偵団』第1回でも「オタク第一世代」と東京タワーを関連づける説を書いている。

 その他、売春防止法が実施され、江戸時代からの伝統ある吉原の遊郭が廃止されたのもこの年。以後、われわれはなにかというと、われわれの生まれた年を境に、いわゆる“オトナの遊び”はその歴史を閉じた、といわれ続けてきた。オトナの遊びができないのなら、子供のころの遊びをずっと続けていればいいのではないか? という、子供心に芽生えた素朴なギモンが、後に子供の娯楽であるアニメや怪獣映画を、大人になってもずっと見続けることを選択させたのかもしれない、というのも、あながちウガチ過ぎとはいえない推理なのではないでしょうかね。

 …えーと、「お前の生まれた年に遊郭がなくなったんだ」「売春防止法が施行されたんだ」「また赤線に行きたいなあ! ほんほんほん」とか「なにかというと」言われてきた、ってどういうことなのか。しかも子供相手に。シチュエーションがわからん。あと、吉原には現在でもソープランド街がありますよ。唐沢俊一はその手のお店に行ったことがあるのかどうか。

 とまれ、若者はもはや戦場にかり出される心配もなくロカビリーの狂騒に走り、米は豊作が続き、皇太子妃に平民出の美智子さまが決まってミッチーブームが巻き起こり(だから同い年のオンナノコには、美智子というあやかり命名の子がやたら多かった)、戦後はすでに昔話となり、飢えもなく、まだまだ貧しいけれども先行きは決して暗いものではないという、日本が世をあげて高度経済成長に向けて邁進を始めるその寸前の、なんとも希望に満ちた明るさのなかでわれわれ第一世代はウブ声をあげた。
 自分の周りを見渡してみても、第一世代には基本的に楽天家が多いような気がするのは、こういった幼少時の社会認識が大きく尾を引いているような気がする。

 1955年の神武景気の発生から高度経済成長がスタートしたとする見方もある。それと、安保闘争が激化したのは「戦場にかり出される心配」があったことも一因ではないだろうか。

 もちろん、一方で日米安保警職法案などの反対闘争は激化し、米兵発砲事件、小松川高校女子生徒殺人事件など、戦争の傷あとは癒えるどころか、日本という国の内部に深いしこりを残しているのだ、ということも、後にわれわれは十分に思い知ることになる。

 「米兵発砲事件」というのはいわゆる「ロングプリー事件」のこと(「事件史探求」を参照)。米兵が起こした事件としては前年(1957年)の「ジラード事件」の方が有名だけれども。しかし、直前に「戦後はすでに昔話となり」って書いてあったのに…。唐沢は「戦争の傷あと」をどのように思い知ったのかなあ。
 また、「警職法案」というのは岸内閣が警察官職務執行法改正しようとして激しい批判を浴びたこと。「デートもできない警職法」ってやつ。あと、安保闘争が盛り上がったのは1959年から60年にかけて。

 なんにせよ、オタクというのはこういう時代に産声を上げた連中だ、ということをきちんとおさえておいてほしい。

 唐沢俊一という人はある意味とてもうらやましい人だと思う。自分の生まれた年をこれほどまでに特別視できるのだから。どうせなら「長嶋茂雄のデビュー」も入れておけばいいと思うが(西鉄ライオンズ日本シリーズ3連敗4連勝もこの年)。
 いいことひらめいた(『ぱら☆いぞ』のヒラメキさん風に)。唐沢さんは血液型や星座みたいに「生年占い」をやればいいんじゃないかなあ。「1958年生まれの貴方。今日のラッキーアイテムは2日前のつくねバーガー」といった感じ。もしくは林家ペーみたいに有名人の生まれた年を即答する芸を身につけるとか。
 
 …しかし、この時点でも「時代と出来事を無理矢理関連づける論法」がキツかったわけだけど、最近の「追討」や「古い映画を見ませんか」では余計にひどくなっている、というかそれしかできなくなっている。故人の生涯や映画の内容そっちのけで時代背景のことばかり書いているのでビックリする(しかもウスい上に間違いが多い)。抑制が利かなくなっているんだろうなあ。正直見ていてつらい。


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