唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

ぱくりン子シュンイチ。

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・1970年代後半に札幌でアニメ関係のサークルに入って活動されていた方、唐沢俊一に関連したイベントに興味のある方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。

karasawagasepakuri@yahoo


 今日発売のパチスロ必勝ガイドNEO』4月号掲載の唐沢俊一『エンサイスロペディア』第47回ではじゃりン子チエが取り上げられている。

 今でこそ大阪発信のコテコテギャグがある程度、東京でも認知・許容されているが、1970年代前半までは、大阪は東京以北に住む人間にとって、かなり異文化の地であった。お笑いに関しては東西交流がさかんであったとはいえ、やすし・きよしなら許容できる東京人も、カウス・ボタンはコテコテの大阪風すぎてダメ、という壁が厳然としてあったのである。

 唐沢俊一は以前「箱根以北」というワードでお笑いを語って唐沢俊一ウォッチャーの間で物議を醸したが(藤岡真さんのブログを参照)、今度は「東京以北」である。神奈川のみなさんが除外されてしまった。
 
 では、なぜ関西のお笑いが東京で許容されるようになったかというと、唐沢によると1978年に連載がスタートした『じゃりン子チエ』の「大阪人のメンタリティ丸出しでくり広げる(原文ママ)ナンセンスギャグ」が人気を博した影響があるという。

80年代に入って起った(原文ママ漫才ブームとこのチエ人気は合体し、81年にはやす・きよや紳助・竜介などが声をアテた劇場版アニメも制作されたが、もともと、大阪漫才が若い世代にあれほどウケたのも、『じゃりン子チエ』が地ならしをしていたためだと思う。

 …そうなのかなー。マンガで文字として大阪弁を読むのと、漫才で大阪弁を耳にするのとでは結構違うんじゃないかなー。
 あと、現在でもお笑いに関しては、関東と関西で受容のされ方が違うし、自分は「東京以南」の人間だけど、大阪の文化をさほど理解できてはいない。まあ、雑な話よね、ということだ。

 いったい、チエのどこがこんなにウケたのか。ディープ大阪出身の作者による、観光旅行的大阪風景とはまったく異なる光景描写が関西圏の読者の感性をとらえた、というだけではないだろう。1978年と言えば、円高不況などで日本が不景気にあえいでいた年である。テツや、その仲間のチンピラややくざたちのような、社会の底辺の人間は、イヤでも庶民の目につくところにいた。しかし、作者の目は、そういう人種を忌避せず、むしろ彼らの持つバイタリティを、読者たちが元気を取り戻す、その手本として描いたのである。

 「ディープ大阪」って格闘技イベント?と思ったらはるき悦巳は西成の出身だった。あの辺のことをそう呼ぶのだろうか。「ディープ東京」とかあるのかな。
 それにしても、毎度おなじみの「作品が人気を得た理由」を「時代状況」に無理矢理見出そうとする論法である。しかし、『じゃりン子チエ』の連載がスタートしたのは1978年だが、「関西じゃりン子チエ研究会」が作成した年表を見ると、本格的な人気が出たのは1980年のことである。どうせならそのあたりも考慮したほうがいいのでは。
 もうひとつ気になるのは、唐沢俊一がテツに対して妙に厳しい書き方をしている点である。上に引用した文章の中ではテツを「社会の底辺の人間」と呼んでいるが、コラムの中ではテツのことを他にも、

チエの父親ながら不良でどうしようもない男

無職のゴロツキ

などと呼んでいる。自分はテツは愛すべきキャラクターだと思っているから、唐沢の見方が厳しいのが気になってしまう。やはり「関西じゃりン子チエ研究会」にあるはるき悦巳のコメントからは登場人物を「忌避」するどころか愛情が感じられるんだけどなあ。

チエは、「ウチは日本一不幸な少女や」を口癖にはしているものの、決して自分の境遇を否定しない。むしろ周囲の大人たちよりずっとしっかりと現状を把握し、そこに立ち向かっていく。社会改革などというお題目より、子供にはまず、今日を生きるという切実な問題がある、ということを、70年代末に堂々と主張したのがこの作品なのである。その、大阪らしい現状肯定主義が、不景気の中にいる当時の人々を元気づけ、チエに共感を感じさせたのである。

 これは呉智英先生の得意分野だな。「庶民のしたたかさ」を称揚するインテリ(エセも含む)という。呉さんは吉本隆明の「大衆の原像」も批判してたけど。世間一般のインテリの中には、「庶民」とか「弱者」とか「少数派」に弱い人がいるけど、唐沢の「鬼畜」「裏モノ」好みも実はそれに近いのだろうか。テツへの論評を見る限り、唐沢に「庶民」への「共感」があるとも思えないが。

 さて、パチンコやオイチョカブなどのゲームもこの作品には時折顔を出す。テツがこっそり教える秘伝のようなものもあった。この機種を打とうとする人は、まず原作(かなり分量があるが)を全巻読破してからチャレンジしてみてはいかがだろうか。

 『じゃりン子チエ』はアクションコミックスで全67巻、文庫版で全47巻である。…えらく高いハードルを読者に課すものだ。
 というか、それ以前に唐沢俊一が『じゃりン子チエ』を全巻読破しているのかどうか。コラムにもネット上で拾える情報しか出ていないのだけど。


 なお、唐沢俊一は『漫画アクション』は『嗚呼!! 花の応援団』の成功を受けて「大阪漫画」の第二弾として『じゃりン子チエ』を「満を持して送り出した」としているが、他誌ではあるが水島新司あぶさん』(連載開始は1973年)もその初期は「大阪漫画」に含めていいのではないだろうか。

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