アイアン名言。
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karasawagasepakuri@yahoo
gurenekoさんからご指摘を受けたのでいくつか訂正させていただきます。
まず、45ページの下線は編集過程で生じたミスです。申し訳ありません。
次に、76ページの「ガセその81」については、ご指摘通り「プリンス・オブ・ウェールズ」に触れるべきであって、不十分な記述でした。
それから、28ページの「ガセその48」は、「原文」ではなく「アインシュタインの発言とされるもの」とすべきでした。元の記事通りにしておけばまだよかったのかもしれません。
その他、ガセビアの指摘に関して出典がついていないことを指摘されましたが、自分でも不十分だと思った部分については後日プロフィール欄の方で出典を追記しておきます(過去の同人誌の訂正部分も合わせて書いておきます)。ご指摘に感謝いたします。
本題。『週刊プレイボーイ』2003年8月5日号掲載の『魂の一冊!!』というコーナーで唐沢俊一『壁際の名言』(海拓舎。後に『ダメな人のための名言集』と改題されて幻冬舎文庫より発行)が取り上げられ、唐沢がインタビューに応じている(担当は近藤邦雄記者)。
唐沢は子供の頃から名言に興味があったという。
例えば、ピカソの言葉で、なにかに対してコンチクショーみたいなことを言った言葉がありました。それを読んだら絵のほうは理解できないのに、なんだかピカソがとても偉大な人物に思えてきたりしたんです。
いくらなんでも漠然としすぎ。「なにか」が一番大事だと思うんだけど。インタビュアーもよく流したものだ。
―この中に、唐沢さんのピンチを救った名言はありますか?
『生まれることは不幸であり、生きることは苦痛である。死ぬことは厄介である』ですね
―56ページに出ている聖バーナードという人の言葉ですね。この言葉とはどこで出会ったのですか?
大学の教材で見つけたんですよね。自分も仲間も、右に行くべきか左に行くべきか、自分の立ち位置はどこにあるんだろうなんて悩み多い青春時代を送っていたんです。その時にこの言葉に出会いました。そしたら、なんだ、もともと人生はうまくいかないものなんだと気が楽になったんですね。こうした毒のある言葉のほうが、いざという時には役に立つんですよ
―それはなぜですか?
人生は明るく希望に満ちているとか、世の中の人はよくしてくれる、助けてくれるとか思っているから、いざピンチに陥ると傷つくんですよ。だから言葉の毒でもっと耐性をつけるべきですね
これは唐沢俊一が青山学院大学に行っていたときのことなのかな。青学はキリスト教系だから聖人の言葉が教材で出てきてもおかしくない。「悩み多き青春時代」の話は漠然としすぎだけど。
※追記 開高健『オーパ!』の中で「生まれるのは偶然、生きるのは苦痛、死ぬのは厄介」という聖ベルナールの言葉が紹介されているとのこと(「ごぞんじ開高健」を参照)。
※追記2 これが聖ベルナールの言葉らしい(英語版)。
“It is a misery to be born, a pain to live, a trouble to die.
”
それと、「毒のある言葉」を吐くことを正当化しようとしているが、自分からすすんで言葉の毒で耐性をつける必要なんてあるのだろうか。たとえば、不慣れな人が2ちゃんねるを見てもあまりいいことがあるとは思えない。それに「毒のある言葉」というのは吐いている方にもその毒がまわっていくものなので、「毒」を安易に用いていいものではない。当ブログでも唐沢の「ブーメラン」を数多く取り上げてきたしね。まあ、唐沢俊一には各検証サイトを見て耐性をつけてほしいものだけど。
―話は変わりますが、唐沢さんは『トリビアの泉』のスーパーバイザーでもあります。番組で取り上げられる役に立たない知識と『壁際の名言』には共通点はありますか?
どちらも常識に反していて、ひねくれているところかもしれないですね。毒のある言葉は常識ある言葉としては流通しないだろうし、例えば、“芥川龍之介はブリの照り焼きが好物だった”なんて知識が学問の本流で扱われることもないはずです
トリビアは別に常識に反していないのでは。作家の食生活も十分研究対象になり得ると思うし。ある物事をトリビアで終わらせるか、知識としてつながりを持たせていけるかは、紹介者の技量にかかっているわけで。
なお、このインタビューの模様が「裏モノ日記」2003年7月11日に掲載されているが、『トリビアの泉』に対して不満タラタラなのが興味深い。
―へえ〜(笑)。やっぱり唐沢さんてかなりの「ひねくれ者」なんですね。
もう40年以上、ひねくれ者をやってますよ(笑)。ブッシュ大統領をみんなが批判するからホメてみようとか、今年は阪神が強いから巨人を応援してみようとか…。私は、世の中のみんなが同じ方向を向いてしまうのはマズいと思うんです。『トリビアの泉』もゴールデンになりましたけど、番組の人気が高くなると、あの知識がスタンダードになってしまうかもしれない。次は『トリビアの泉』の裏バージョンみたいなことをやってみたいですね
要は逆を張っているだけだよなあ。ただ、「世間の流れに反した意見」「人気者への批判」というのはいつでもそれなりに需要があるものだから、商業的に見れば必ずしも間違っていないのかもしれない。さしたる定見もなくひねくれてばかりだと、あまりいいこともなさそうだけど。アニドウで『ルパン三世 カリオストロの城』が絶賛されていると批判するようになった(2008年12月20日の記事を参照)のだから筋金入りではある。
ところで、この記事の唐沢俊一のプロフィールが面白い。
1958年、北海道生まれ。
カルト物件評論家として、学術書からオカルト本まで膨大な執筆量を誇る。
主な著書に『B級学 マンガ編』『トンデモ一行知識の世界』などが。
戦争をオタクッぽい目から語る『戦争快楽論』(仮題)が近刊の予定。
この記事から7年以上経った現時点でも、『戦争快楽論』という唐沢の著書は出ていない。唐沢がどのような「戦争」の「快楽」を語るのか興味深いところだが、それにしても、唐沢俊一が「戦争」の何を知っているのか?と思ってしまう。言うまでもなく、唐沢は戦後生まれだし、戦地の取材などしたこともないわけで。頭でっかちで体験を伴わない快楽というのはきわめて貧しいものでしかないと思うし、実際戦争になったら唐沢俊一は「被害者」になる可能性が高いと思う。まあ、唐沢は『社会派くんがゆく! 怒涛編』(アスペクト)P.392で次のように言っているわけだけど。
そろそろ今回のこの本のまとめが見えてきた気がする。要するに、戦後の日本が、ひたすらそれを求めて突っ走り、また、その成果をある程度出してきた“平和”が続き、国民の暮らしが総体的に豊かになり、昔とは比べ物にならない情報や知識を国民が自由に選択できるようになり、個人の人権と自由が何よりも尊重されるようになった時代(つまり現代)というのが、いい時代とは決して呼べないということである。いつ戦争があるか分からず、おしなべて国民が貧しく、個人の選択肢が限られており、個人より上位の価値観があった時代の方が、人々は心落ち着いて暮らすことができていたのである。もちろん、医学や福祉の進歩や充実の恩恵を山ほど受けているものの、対比してみて、今の時代というのは、それの代償として幸福を享受するのに値する時代か?という疑問を持たない人はおるまい。過去の時代にあって現代にないものは何か。ただひとつ、“希望”である。希望だけあれば、人間は心豊かに生きていける動物なのだ。
読者諸君。今こそ革命を。平和と、豊かさと、グローバリズムと自由こそわれわれの敵だ。戦火にまみれる権利を取り戻そう。貧乏になることを認めよと迫ろう。情報なんかそんなにいらないと叫ぼう。不自由の楽しさを手に入れよう。そこで初めて、われわれは、希望というものを手に入れられるのである。
「脳天気」、いや「能天気」と言うしかない。…あ、でも『戦争快楽論』は読んでみたいので、頑張って書いてください。
※聖バーナードの言葉が確認できたので、文章を訂正しました。
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