二十四の瞳が浮雲をみる。 - 唐沢俊一検証blog

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　前回『サイエンス・サイトーク』に岡田斗司夫が出演したことについて少し触れたが、実は岡田はダイエットの話をした後で、資料を整理する方法を話している。…『本を捨てる！』は既に先を越されていたのであった。さくら姐さんが美少女クラブ21の福田沙紀に「おめえの席、ねえから」と言い放ったのを思い出した。唐沢俊一は岡田斗司夫とカブらない道を模索する必要があるんだろうなあ。頭髪の話はカブらないかな。

　本題。唐沢俊一がまたもや「追討」したり、古い映画の話をしている。「プロジェクト」はどうしたんだろ。

山下敬二郎
 高峰秀子

『怪談おとし穴』

　また女の子と一緒に映画に行ってフラれてるよ！　と呆れてしまうが、どう考えても映画のチョイスに問題があるよなあ。

　その中から、今回は高峰秀子の「追討」に触れる。読む前にまず「やめておけばいいのに」と思った。高峰秀子は今でも多くの人から愛されている女優さんなのだから、迂闊なことは書けないはずなのだ。そして、読み終わった後「やっぱりやめておけばよかったのに」と思った。

　まず、一番変なのは「女優」としての高峰秀子についてほとんど触れられていないこと。まあ、彼女はエッセイストとしても高く評価されていたのだけど、せめて出演作について一本くらいは具体的に触れてほしいところだ。
　そのわりには黒澤明とのスキャンダルについてはやたら細かく書かれているのだが、ヘンな記述がある。

……高峰秀子の自伝『わたしの渡世日記』その他から再構成したが、
秀子の母の横暴ぶりはともかくとして、黒澤明という人間の冷たさ
にちょっと疑問が残る。この冷たさは、後に彼の元を去った
本木荘二郎プロデューサーや、『トラ・トラ・トラ！』で反発した
レイ・ケロッグプロデューサーなどに対する態度にも見てとれる
もので、天才・黒澤明の心の中にはよほど深い人間不信があった
ことを意味するような気がする。いや、ひょっとして、その人間不信が
最初に芽生えたのは、このときの事件が元なのかもしれない。

　ダウト。レイ・ケロッグは『トラ！トラ！トラ！』のアメリカ側第二班監督。『トラ！トラ！トラ！』のプロデューサーはエルモ・ウィリアムズである。田草川弘『黒澤明vsハリウッド』（文春文庫）の終盤で、黒澤がアカデミー賞名誉賞を受賞した時に、会場に居合わせたウィリアムズが黒澤にお祝いの挨拶をしようとしたところ、黒澤はウィリアムズを無視して通り過ぎてしまう、というとても哀しいエピソードがある。黒澤がウィリアムズを無視したのは、必ずしも黒澤の「冷たさ」によるものではないのではないか、と思う（『トラ!　トラ！　トラ！』撮影の経緯を考えると尚更）。冬コミで挨拶しようとした竹熊健太郎さんをスルーした唐沢には黒澤の気持ちがわかりそうなものだけど。
　なお、余談だが、レイ・ケロッグはB級映画マニアには『大蜥蜴の怪』『人喰いネズミの島』（最低映画館を参照）を監督していることでも知られている。何故かジョン・ウェイン主演の『グリーンベレー』も監督している（友成純一がムック時代の『映画秘宝』で酷評していた）。…唐沢俊一も知っていたのかな？

　その後は内容以前に文章がおかしくなっている。

そして、彼女の文章の中にはそのまま、日本の昭和文化史になる
というくらい、その日常には凄い有名人が続々と登場する。
「私は決して有名狂でない」
というその言葉にウソはなかろう。
別に吹聴しようとしないでも、彼女の回りには凄い人ばかりが
ワンサといたのである。映画監督たちは当然のこととして
省略するにしても、谷崎潤一郎、東海林太郎、藤田まさと、志賀
直哉、池島信平、梅原龍三郎、徳川夢声、古川緑波、宮城道雄、
大河内伝次郎、志賀直哉、川口松太郎……
自伝に出てくる綺羅星の如き名前を見ているだけでクラクラする。