唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

モンキー・ビジネス。

ロフトプラスワンのイベントで町山智浩さんに『唐沢俊一検証本VOL.1』を渡してくださった方がいらっしゃるようで。どうもありがとうございます。本当は自分が献本すべきだったんでしょうね。


 さて、今回は『ラジオライフ』10月号掲載の『唐沢俊一古今東西トンデモ事件簿』第49回「世の中のヘンな商売」を取り上げる。今号の『ラジオライフ』の特集が「カネを生み出すスレスレ手口」なので「世の中のヘンな商売」も特集とギリギリリンクしている、と言えるのかどうか。
 しかし、今回の文章は冒頭にいきなり間違いがある。

 日本法制史の大家である尾佐竹猛(おさたけ・たけき)に、『下等大百科辞典』という本がある。

 そんな本はない。正しくは『下等百科辞典である。参考文献にも『下等大百科辞典』とある。…唐沢も担当の続木順平さんもお仕事をちゃんとしようよ。ね?
 で、『下等百科辞典』の中から「地見」という商売について紹介しているのだが、その内容が「松岡正剛の千夜千冊」とだいぶカブっている。『下等百科辞典』には多くの珍商売が載っているのだから、わざわざ同じテーマにしなくても。しかも、残念なことに先に書かれた松岡氏の文章の方が内容が濃いから困る。

 その後で、唐沢はアジアの珍商売について取り上げている。

 現代の日本では、大都会もギスギスし始めているので、珍商売はあまり流行らないかもしれない。アジアだとまだまだそういう商売の成立する余地があるようで、例えば中国には“キス屋”というのが北京の市内にあるという。公園など、カップルがデートしているところに店を出す。柵をつくって、カーテンで中が見えないようにする。カップルがデートで盛り上がり、キスをしたくなっても、中国人には路上でキスをする風習がないので、照れてできない。そういう時に、この中に入って一目を避け、思う存分キスをするのである。1回3分で、チューインガムをおまけにくれるという(焼肉屋みたいだ)。中国語でそのものズバリ“接吻処”。ネットを検索すれば写真も見られるが、ませたガキが店番のようなことをして、カップルから料金をとっていた。

 「インターネットでこんな面白ニュースを見たよ!」とか言われても困るのだが、唐沢俊一が見たのはBackchinaの記事だろう。…よもやこのニュースを日本語訳したブログを見ただけではあるまい。しかし、この記事をよく読んでほしいが、「接吻処」が現れたのは深圳の蓮花山公園である。なぜ「北京市内」?
 次に紹介されているのはタイの「体重計屋」で、これには唐沢俊一がタイを訪れた際の体験談が書かれているのだが、実は「体重計屋」はタイだけでなくアジア中で広く見られる商売なのである。唐沢の分析では「オモライが法律で禁止されているためタテマエとして体重を量らせてお金をとることにしている」というのだが、広い地域で行われているとなるとその分析は正しいのかどうか。
 最後に台湾の「泣き屋」を紹介しているのだが、これはNHKの番組で取り上げられたテーマで、さしてマニアックとはいえない。

今回の文章は以下のように締めくくられている。

 これなどは、日本人の目から見ると明らかな珍商売だが、その国では、昔からの伝統を守る、立派な正業である。…とはいえ、文化の違いがあまりにはなはだしいと、それが珍商売に見えてしまうのも仕方ない。幕末に日本にやってきた外国人は銭湯を見て、珍商売だと驚いたという。こんな珍談ばかり集めて文章を書いて稼いでいる私なども、どこかの国の人から見れば珍商売に思われるかもしれないんである。

 幕末の銭湯の話は、銭湯が混浴だったから驚かれたのではなかったっけ。
 それにしても、「ガセやパクリばかり集めて文章を書いて稼いでいる」人は日本人の眼から見ても十分珍商売だよ。っていうか、そんな商売が正業として成り立っている国があるのか。


 なお、今回の『古今東西トンデモ事件簿』については後日改めて取り上げるつもりである。

※追記 藤岡真さんからご指摘を受けたが、唐沢俊一は『博覧強記の仕事術』(アスペクト)で「常備したい本三〇冊」のひとつとして、『下等百科辞典』を挙げているが、ここでも『下等百科事典』と誤った表記をしている。

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