唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

1968への片想い。

 「フィギュア王」№129掲載『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第42回「68年のパンドラの箱」は実にヘンな文章である。以下説明する。

 私は現在のカタチの日本社会の基礎となるものが出そろったのは、1968年だと認識している。いや、出そろった、という言葉ではまだ表現不足である。
「凄まじい勢いで一気に出現してきた」
 と言っていい。
 いったい、68年に何があったのか、後から思うと不思議で仕方ないくらいに、今につながるものが、どどっと現れた。どこか、知らない世界で、パンドラの箱が開いたのではないか、と思えるくらいである。丁度、今年2008年はそれから40年。今の日本は、この年に出そろった“素材”により、40年かけて作り上げられたもの、と言えるだろう。

 こう前置きしたうえで、1968年の出来事を列挙している。


霞ヶ関ビル完成
ボンカレー発売
・カール発売
・『あしたのジョー』『タイガーマスク』連載開始
・『巨人の星』『ゲゲゲの鬼太郎』アニメ化
・『少年ジャンプ』創刊
・『ねじ式』発表
・TVドラマ版『男はつらいよ』放送
・『2001年宇宙の旅』『猿の惑星』封切り


…なるほど、これだけの出来事があったのか、と一応感心してみるが、ちょっと待て。今回のコラムのタイトルは「68年のパンドラの箱」で、本文中でも「どこか、知らない世界で、パンドラの箱が開いたのではないか、と思えるくらいである」と書いている(読点が多すぎるのが『血で描く』みたいだが。詳しくは9月23日の記事を参照)。「パンドラの箱」について毎度おなじみgoo辞書を引いてみよう。

パンドラ-のはこ 【―の箱】
ゼウスがすべての悪と災いを封じこめて、人間界に行くパンドラに持たせた箱。パンドラが好奇心からこれを開いたため、あらゆる罪悪・災禍が抜け出て、人類は不幸にみまわれるようになり、希望だけが箱の底に残ったという。

…すると何か?ボンカレーや『あしたのジョー』や『2001年宇宙の旅』は災いなのか?さすが、2007年にパンドラの箱を開けてガセやパクリを飛び出させた人は言うことが違うね(希望は残っているんだろうか?)。そして、本文にもおかしいところが多々ある。

68年には、今なおCMが口づさまれている銘菓『カール』が明治製菓から発売される。尤も、あのCMがテレビで放映されたのは69年からであるけど。

 「口ずさむ」だよ。「尤も」とか書く前に気づこう。それに口ずさむのは「CM」ではなく「CMソング」だ。あと、自分は『カール』は大好きだけど「銘菓」ではないと思う。どこかの名産品じゃないんだから。

 マンガにも、大きな改革の嵐が吹き荒れていた。梶原一騎の原作になる『あしたのジョー』と『タイガーマスク』は、どちらもこの年の一月に連載が開始(つまり発売は前年の12月だが)である。

 「この年の一月に連載が開始」「発売は前年の12月」って一体何が何やらわからない。『あしたのジョー』は「少年マガジン」1968年1月1日号、『タイガーマスク』は「ぼくら」1968年1月号からの連載開始、と書けばずっとわかりやすいのに。しかし、そうだとしても、どちらの作品も1967年12月には発表されているわけだから、1968年の出来事に入れていいものかどうか。細かいことを書くと、『あしたのジョー』は高森朝雄名義である。

新人・永井豪の『ハレンチ学園』が大きな話題になり、スカートめくりブームなどの流行は社会問題になった。

 『ハレンチ学園』の中でスカートめくりが登場したのは1969年。それから、スカートめくりの流行には「Oh!モーレツ」で有名な丸善石油のCMも大きく関係しているはずだが、このCMが放映されたのも1969年

 そう、高度経済成長も頂点に達した感のあるこの時代に、それに背を向ける主人公フーテンの寅が初登場したのも68年。

 ちゃんと「男はつらいよ』の主人公」って書こうよ。

…しかし、このコラム、1968年である必要がないんじゃないか?と思う。たとえば、1967年や1969年であってもかまわないと思う。ためしに1967年の出来事を列挙してみる。


・『オールナイトニッポン』放送開始
・『天才バカボン』『あしたのジョー』『タイガーマスク』連載開始
・『ウルトラセブン』放映
・『マッハGoGoGo』放映
・リカちゃん人形発売


次に1969年の出来事。
東名高速が全線開通
アポロ11号の月面着陸
・『水戸黄門』放送開始
・『ドラえもん』連載開始
・『真夜中のカーボーイ』『イージー・ライダー』封切り
・映画版『男はつらいよ』第1作封切り
UCC缶コーヒー発売
・『サザエさん』アニメ化
・スカートめくり流行
・「カール」のCM放映開始


…何が言いたいのかというと、こんな具合に出来事を列挙していけば「私は現在のカタチの日本社会の基礎となるものが出そろったのは、19○○年だと認識している」というコラムを簡単にでっちあげることができるということだ。1960年代にはまだ生まれていない自分にだって余裕で書けてしまう。そんなコラムに一体どんな意味があるんだろうか。

 こうして見ると、今の日本社会は1968年の申し子、といっても過言でないだろう。50年代ブームの次には68年ブームが来る、と予想したいのである。

 はっきり言って過言だし、60年代ブームならともかくそんなピンポイントのブームが来るのかどうか疑問である。

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1969の片想い

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