唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

超禁止! 錦糸町。

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 今回も唐沢俊一の新刊『スコ怖スポット・東京日帰り旅行ガイド』(ごま書房新社)の書き下ろし部分を紹介。「スコ怖スポット12」の錦糸町を取り上げてみよう。

 最初に「おいてけ堀」錦糸町にあった、という話が出てくる。『スコ怖』P.94より。

すばる おいてけの声の正体は堀に住む河童なんだそうで、その河童の像も錦糸町公園には建てられているんですけど、その回りが韓国バーやフィリピンパブだったりして、探偵長の言う昭和の錦糸町のあやしげな雰囲気が少し味わえます


カラサワ 河童ならぬ日本語のあやしげなお姉ちゃんたちが、オカネ、オイテケーと常に囁いているのだな、現代は

 河童の像があるのは錦糸堀公園すみだこどもサロン)。錦糸町という地名は錦糸堀に由来しているとのこと。

 P.94より。

カラサワ (前略)まあ、ともかく、錦糸町は明治時代にはあの『牡丹灯籠』や『真景累ヶ淵』を作った落語家・三遊亭円朝が住んでいたり、さらに遡って江戸時代には同じく怪談物として有名な歌舞伎の『小幡小平次』の原作を書いた山東京伝が住んでいたり、怖い話にはかなり縁のあるスポットなのだよ

 「錦糸町の歴史」というサイトを見ると、錦糸町にゆかりのある歴史上の人物はかなり多い。山東京伝=怪談の作者、というイメージはあまりないのだけど。…あれ、このサイトの「おいてけ堀の河童像」の説明文が上に書いたすばるとカラサワ探偵長のセリフと似ているような。もちろん偶然だろうけど。

 続いて、錦糸町駅前にある「セキネ楽器店」の店頭でイベントを行った歌手はブレイクする、という伝説が紹介された後で、次のような話になる。P.95〜P.96より。

すばる (前略)……そう言えば錦糸町駅前で2006年に華原朋美さんが睡眠薬中毒のモウロウ状態で保護された事件がありました。彼女は隣の江東区出身だし、歌手の本能でこの駅前に来たのかな


カラサワ かも知れん。堀が多かったということは、かつてはこの地は水路の合流点であったということだ。さらに昭和期の錦糸町は都電の系統が5つも集まった、人の流れの交錯点だった。そういうところには歓楽街が出来、ホテル街が生れ、ギャンブル施設が建つ。おのずと人間のさまざまな欲望や希望や失望が集積され、濃縮され、化学変化を起こす。セキネ楽器のようないい話もあれば、華原朋美のような切ない話もある。それらのドラマが地層のように折り重なって、街のイメージが形づくられる。パワースポットという言葉の中にある“パワー”とは、街が持つ人間ドラマの重みを、敏感な人が感じ取った表現なのだな

 …このくだりを読んですぐ、いったん本を閉じて表紙カバーにある「と学会創立20周年記念マーク」を凝視してしまった。…いいのか? この話を公認していいのか?
 まず、華原朋美錦糸町駅前で保護されたのは2009年1月17日なので、3年もズレている。この事件を報じた『毎日新聞』の記事に使われた華原朋美の写真は2006年に撮影されたものなので、そのせいでズレが生じたのでは?と推理。『社会派くんがゆく!』でもこの話題をちゃんと扱っているのになあ(『疾風編』に収録)。その時唐沢は「オレも錦糸町に書庫を持っているよ」というノンキな話しかしてないけども。
 だが、それ以上に華原朋美が「歌手の本能」で錦糸町駅まで来たというのがトンデモない。だいたい「セキネ楽器店」は、『スコ怖』の中でも触れられているように、主に演歌関連の商品を扱っている店である。小室ファミリーだった華原朋美ならタワーレコードHMVに行きそうなものではないか。…っていうか、ミュージシャンが危なくなると「歌手の本能」でCDショップに来るとしたら大変なことになりそう。
 その後のカラサワ探偵長による話はもっともらしいことを言っているように見えて本当に意味がない。昔、都電の系統が集まっていたおかげで事件が起きたり「パワースポット」になるのだとしたら、今現在ターミナル駅のある場所なんかどうなるのか。東京はパワースポットだらけになってしまうよ。

 この後、2000年9月に亀戸で発生した女性漫画家殺人事件が取り上げられている(ウィキペディア)。カラサワ探偵長は被害者の女性がコミケで人気のある作家だったことに注目する。P.97より。

カラサワ 都市の周縁部には、中央部と対立する者たちが集まっていく。吉良上野介が元禄当時は江戸の外れだった本所松坂町に追いやられたのもそうだし、同人オタクという現代の人々も、周縁部であるお台場にある意味隔離みたいな形で追いやられているだろ?


すばる そうか、作者が殺された亀戸のマンションも、彼女が同人誌で人気作家になったお台場の国際展示場(ビッグサイト)も、どっちも江東区なんですね


カラサワ 江戸の中心で醸され濃縮された“現代”が、堀(水路)や電車で流れて、周縁部で事件という形で噴出する。元禄も平成もそのパターンは変わらんようだな

 江東区って「追いやられて」行く場所なのか? 唐沢俊一は中野に住んでいるから別に追いやられてないし、被害者の女性がどのような事情で亀戸に住んでいたのかもわからないのに。同人オタクが「異人」であるかのような書き方もひっかかる。そもそも「同人オタク」って何? 中途半端に民俗学をかじるとタチが悪くなることを実感させられる。元禄時代と現代をいっしょくたにしているのも無茶すぎるしなあ。あと、「現代」って濃縮されたり流れたりするものなのだろうか。

 …いやー、破壊力あるなあ。書かれている話はさっぱり怖くないけど、こーゆー話を書いている人がいることと、この本が出版されたことは結構怖いかもしれない。