唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

イギリスの知識は問題ガイ?

唐沢俊一のトンデモ事件簿』(三才ブックス
CASE17「イギリス人とテロの深い関係」P.163より

思えばイギリスというのは妙な国で、爆弾テロを、お祭りの日にしてしまうのである。 
 イギリスの毎年11月5日はガイ・フォークス・デイといって、花火を盛大に打ち上げたり、子供たちが花火を持って町中を走ったりして祝う。このガイ・フォークスという人物は、やはりアイルランド出身のカトリック教徒で、1605年のこの日に、カトリック教徒たちが上院の開式に合わせて議事堂に爆弾をしかけ、開院式に参加する国王ジェームズ一世を暗殺しようとしたテロ計画の実行犯であった。
 計画は仲間内から密告者が出て未遂に終わり、ガイ・フォークスは拷問の末、反逆罪で四つ裂きの死刑に処された。いわば国家転覆を図った重大犯なのだが、彼はまた伊達男として有名で、いわゆる“ナイス・ガイ”のガイというのは彼の名前から取られたといわれているくらいのハンサムだった。その一事で、本来大逆罪犯の、天も許さぬこの男を、イングランド人はヒーローとしてまつり上げ、彼の名を冠した祝日を設けて、爆弾テロにちなんで花火をどっかんどっかん打ち上げて祝うのである。何を考えているのか分からない。

 イギリスで11月5日が祝日になったのは、ガイ・フォークスGuy Fawkes)たちが計画したとされるいわゆる「火薬陰謀事件」(Gunpowder Plot)が未遂に終わったことを祝うためであるガイ・フォークスは英雄視されているわけではなく、11月5日にはガイ・フォークスの人形が町中を引き回され、最後には燃やされてしまうのである。それから、ガイ・フォークスアイルランド出身ではなくヨーク出身である。「イングランド人」というのもどういう意味で用いているのかよくわからない。もうひとつ付け加えると、「火薬陰謀事件」には当時のイギリスの宗教問題が深く関係していることを書いていないのもダメである。ガイ・フォークスが「カトリック教徒」であることに触れているのに、「ガイ・フォークスはハンサムだったからヒーローになった」と下世話な話題に落しているのはいただけない。
 ただ、どうしてこういう話の流れになったのかはなんとなく想像がつく。この「イギリス人とテロの深い関係」というコラムは、イギリス人はIRAのテロのせいで爆弾騒ぎには慣れっこになっていて、2005年7月にアルカイダがロンドンでテロを起こした際にもロンドンっ子は特に慌てなかった、という話から始まり、次にガイ・フォークスはテロリストなのに英雄視されているという話、そして、イギリスの国民的俳優であるショーン・コネリーIRAを支援してもイギリス人は特に批判もしないという話に続いていく。IRAショーン・コネリーについては10月4日の記事で書いた通りガセであったが、要するに「イギリス人はテロに強い」という話をしたいがために事実を歪めているのではないか?と思われてならないのである。

唐沢俊一のトンデモ事件簿

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