唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

『HAKAISHAくんがゆく!』は面白かったのに。

 唐沢俊一が「裏モノ日記」でアフガニスタンでの日本人ボランティア殺害事件について不適切なことを書いていた件については、8月30日の記事でも取り上げたが、その後、唐沢は村崎百郎との対談「社会派くんがゆく!」でも、この事件について語っている。どうせロクなことを言わないだろうとは思っていたが、予想を超えるヒドさだったため、ツッコミをいれておくことにした。

村崎 (前略)唯一、それを補填するかのように流れてきたのが、アフガンでNGO職員がタリバンに殺されたっていう理不尽な鬼畜ニュースなんだけど、この殺された伊藤って人は、イラクで人質になった超三バカとは違って、現地でかなり長期間にわたって熱心に活動してたんだってな。

唐沢 いや、本人はいいんだけどね、彼を現地に送り込んだNGO「ペシャワール会」の中村代表、ありゃ殺人者も同様だと思うよ。あんなに危険な場所であることを承知で、武器も持たせずに若い人をどんどん派遣しているわけでしょ。情勢がここ一年で急変しているのに、「ここで撤退したら負けだ」みたいなことを言ってる。勝ち負けじゃねえって。送り出されるほうの身にもなってみろよ。

村崎 ほ〜、それもまたある種の「鬼畜」って感じで良いキャラじゃん。オレは嫌いじゃないぜ、そういう「悪意のない善意の人でなし」という迷惑な野郎は(もちろんイヤミ)。また、伊藤クンを殺したタリバンの犯行声明も、悪びれもせず堂々としててイイんだよ罪。「彼がアフガンにとって役に立つことをしていたことは知っているが、西洋の文化をわれわれの国に運んできた時点ですでにスパイも同様だ」「我々は外国人が一人残らずいなくなるまで殺し続ける」ってさ。

唐沢 どう考えてもキチガイの言ってることだよね。こっちの常識なんか通用しない連中なんだ。それを「憲法九条さえ守っていれば、タリバンもわれわれには手を出せないだろう」とか言ってるNGOはホントにバカじゃないかと思う。

村崎 遠く離れた異国での「バカとキチガイの出会い」がもたらした不幸な事件かあ……(しみじみ遠い目)。もっとも、これは日本人にとっては因果応報みたいなもんだと思わなきゃアカンよ。いまのタリバンが外国人を片っ端から殺すっていうのは、要は幕末の日本人の攘夷思想みたいなもんでさ(笑)、「とにかく外人を見たら殺してしまえ」っていうか、西洋文化が入ってきただけで神聖な我が国の国土が汚される、みたいな感覚だと思うんだよ。生麦事件から146年たって、ようやく日本人もよその国へ啓蒙に出かけて理不尽に排斥される立場になったかと思うと、じつに感慨深いものがあるよな、ウン。

唐沢 そのくせ、伊藤さん殺害に使った銃は、西洋文化の象徴みたいな道具なんだよな(笑)。もっとも昔の日本も「和魂洋才」とか言っていたから、「アフ魂洋才」か(笑)。

村崎 これはもう、外から何を言っても無駄で、タリバンの中から坂本龍馬みたいな進歩的で合理的な精神を持った人材が出てくるのを待つしかないのかも(笑)。だからまあ、要するに今回の事件はヒュースケンが攘夷派に暗殺されたみたいなもんだと思って、良い墓を建てて丁重に弔ってやるしかないな。異文化交流ってのは、こういうコミュニケーション不全の問題を乗り越えて、みんなで仲良くしてきゃいいんだろ、オレは一切関わりたくないけどな。

唐沢 それにしてもこの伊藤さん、今までどうやって暮らしてきたのかね。NGOの活動なんて、ほとんどボランティアだろうし。

村崎 現地で農業に熱心だったっていうから、自給自足みたいな生活だったのかね? あんなクサそうなとこで赤の他人どものために5年も頑張ったってのは大したもんだよ。

唐沢 貴重な青年期を犠牲にしてアフガンの人たちのために費やしてきたわけだよね。そう考えると、この結末も「男子の本懐」なんじゃないかと思うよ。だから彼については言うことは何もないんだけど、中村代表については、それこそ「死に神」って言ってやりたいところがある。犠牲になるのは他人の命なんだからね。

村崎 それでも懲りずに、まだどんどん若い連中を送り込もうとしてるんだってな。

唐沢 二百三高地の乃木将軍じゃねえんだから(笑)。少しは手を考えろっての。

村崎 まあ、これでさすがに若い連中も警戒するだろうから、今後は死を覚悟した気合いの入った奴しか行かないんじゃないの? そういう覚悟を持った立派な奴らが日本から出ていってしまうのは惜しい気もするけどな。っていうか、そもそも何で、あんな汚くて臭そうな場所に、好き好んで行きたがるのかね? だから言っちゃなんだけど、これも大義名分というよりは、個人の趣味の問題だと思うんだ。三バカの高遠がイラクの少年に萌えてたのと同じだよな(笑)。

唐沢 困っている人たちを救いたいという気持ちはわかるけど、日本国内にだって救うべき人間はたくさんいるんだからさ。どうして対岸の火事ばかりしか見ないんだろうね。三バカのときも「テレスコープ人道主義者」ってオレは表現したが、遠くの他人の不幸はよく見えるんだけど、身近のトラブルには目をつぶる、みたいなね。

村崎 飢餓や貧困は世界中にごまんとあるけど自分の身体は一つしかないから、ボランティアをやるにしても、どこか一つを選ばないといけない。その選考基準は何かというと、やっぱり最後は趣味の問題というか「自分の好きなとこ」なんでしょ。だから本質は命がけで自分の趣味に生きる奴らと同じだと思うぞ。それに、今回の件でわかっただろうけど、いくら善行のつもりで頑張ったって、その報いは決していい形で現れるわけではないってことな。こっちがいくら誠意を尽くして頑張ったって、タリバンにとっては全部アメリカ人と同様の「排斥すべき鬼畜外国人」としか見てないわけだ。

唐沢 そもそも、何で今回の件で日本に「タリバン許すまじ」という声が沸き起こらないのかね。これが米兵に殺されたとなったら、日本全国で反米運動が活発化するはずだよ。死人を出してまでもアフガン支援を続けたいっていうのなら、よっぽどおめでたいとしか言いようがない。

村崎 ああ、そういえばオレも今回は彼を殺したタリバンには全く怒りを感じないどころか同情さえしてるよ(笑)。あんなムチャクチャな理由の殺人は、殺す方も寝覚め悪いっていうか、伊藤さんが良い人だと分かっていても思想上の理由で殺さなきゃならないってのは、辛いだろうし嫌だったろうなあ。「皆から慕われていた善人を殺してしまった罪悪感と汚名」が一生付きまとうわけだし、そこを原理主義の信仰心で完全にカバーできればいいけど、どうかねえ(笑)? まあ、タリバンって明確な主義主張を持ったゲリラ兵士だとみんな思いがちだけど、コチコチのイスラム原理主義者で西洋的な合理思考が一切通用しないって意味じゃ、きっとパプアニューギニアあたりの巨大ペニスケース族のような未開人とメンタリティはたいして変わらないんだよ。未開人の行動にいちいち目くじら立てちゃやっていけないよ。人食い人種に食われたって聞いたら、みんな「ああ、お気の毒に」って思うだけだろ(笑)? そういう意味で日本人もみんなタリバンにそれほど腹を立てない気がする。だからまあ、単純にタリバンってのは「外国人殺し」をする奴らなんだと理解しておこう。

唐沢 NGOの人たちはみんなイスラムの民衆は「話せばわかる」人たちだと思って接しているんだろうけど、宗教が異なるとホントに人間ってお互いを理解できなくなるからね。思えば昔、エヴァンゲリオンの信奉者どもの言ってることが全くわけがわからなくて、そのときに“アニメでさえこれなんだから、宗教にハマっている奴らの言うことがわからないのは当然だよな”と思ったもんだったが(笑)。

村崎 おまけに今回の件は町村官房長官にインド洋での給油活動を続ける格好の大義名分を与えちゃったようなもんだろ。どのみち個人の善意だの崇高な使命感や諸々の想いってのは、本人の意志とは関係なく、結果的に政治に利用されるのがオチだって証明されちゃったようなもんだよ。

唐沢 まあ、ご両親にも「向こうで死ぬ可能性があるので覚悟はしてほしい」みたいなことは出国する前に伝えてあったみたいだし、何度も言うけどこの青年本人はたいしたものだと思うよ。

村崎 ホント、あんなクッセえところで5年間も他国の人間のために働いていただけでも勲章ものだよ。後で政治家に立候補しそうなスポーツ馬鹿選手にくれてやるくらいなら、国民栄誉賞は伊藤さんにやった方がいいぞ。「他国の人のために身を粉にして働き、虫けらのように殺された日本の青年」は、利己的なだけの「エコノミックアニマル」と呼ばれたかつての日本人のセコいイメージを消し去るのにも一役買うというか、こういう若者こそ国の誇りだろ。ただ、もう一度言うけど、何でそれを日本でできなかったのか? 要するにボランティアってのは、ホントは崇高な精神とか偉い偉くないはまったく関係ない、趣味の問題だってことなんだよ。どっかのビジュアル系バンドにハマる女子高生も、イラクの危険地帯に行きたがるボランティア青年も、好きでやっているという意味では全く同じ地平なんだってことな。

唐沢 そう考えると、何で好き好んであんな場所に行きたがるのかもわかるよね。「あんな美人がなんであんな男と」ってのと一緒なんだ(笑)。要は個人の趣味嗜好なんだよね。

村崎 だから伊藤クンも彼の地で死んで悔いはなかったと思うよ。それにしても、数十発も撃ち込まれたそうで、死体なんかとんでもないことになっていたそうだよ。ニュースで中村代表が死体のシーツを上げてチラリと見ている映像が流れていたけど、そういう時も日本のマスコミは中村代表の顔しか映さないんだよ。ちゃんと伊藤さんの顔まで映せよな!

唐沢 相変わらず日本のジャーナリズムは死んでますな(笑)。

…くりかえしになるが、ヒドいとしか言えない内容である。
 まず、ペシャワール会の中村医師を「バカ」「殺人者」などと呼んでいるが、結局のところいちゃもんをつけているにすぎない伊藤和也さんを殺害したのはタリバンなのだから)。中村医師について問題視する意見は少なくないが(たとえば、ペシャワール会の活動が結果的にタリバンを助けることになってしまっているとか)、唐沢ももう少し勉強してから意見したほうがいいのではないか。だから、ペシャワール会について発言するのは「唐沢には高度すぎるからやめておいた方がいいと思う」と前もって書いていたのだが。それから、唐沢は「「憲法九条さえ守っていれば、タリバンもわれわれには手を出せないだろう」とか言ってるNGOはホントにバカじゃないかと思う。」と言っているが、確かに中村医師はアフガニスタンでの活動について憲法9条の力が大きいと語っている。しかし、その前にこのようなことを言っていることを見逃してはいけない。

日本は、軍事力を用いない分野での貢献や援助を果たすべきなんです。現地で活動していると、力の虚しさ、というのがほんとうに身に沁みます。銃で押さえ込めば、銃で反撃されます。当たり前のことです。でも、ようやく流れ始めた用水路を、誰が破壊しますか。緑色に復活した農地に、誰が爆弾を撃ち込みたいと思いますか。それを造ったのが日本人だと分かれば、少し失われた親日感情はすぐに戻ってきます。それが、ほんとうの外交じゃないかと、僕は確信しているんですが。

この発言を素直に読めば、中村医師が武力だけでは問題は解決しないということを現地で実感したということがわかる。憲法9条について語った部分だけで唐沢は中村医師を「バカ」だと考えたのだろうが、はたして、本当に「バカ」なのはどっちなんだろうか。この後も唐沢は中村医師を「死に神」と呼ぶなど口を極めて罵倒しているが、おそらくは、亡くなった伊藤和也さんのことをバカにするのはさすがにマズいと考えて、中村医師にターゲットを変えたというだけなのではないかと思う。鬼畜を自称しながらも意外と小心な人たちなのである
 とは言うものの、唐沢が内心で伊藤さんのことをバカにしているのはハッキリと分かる。またしても伊藤さんの死を「男子の本懐」と心にも無く持ち上げているし、今回は伊藤さんのことを「テレスコープ人道主義者」と呼んでいる。ディケンズの小説『荒涼館』に登場する「望遠鏡的博愛」という表現を覚えそこなったのだろうが(8月10日の記事も参照)、伊藤さんは「望遠鏡」をのぞきこんでいたわけではなく、現地まで行ってボランティアとして働いていたのだ。それに「望遠鏡的博愛」という表現は、「自分は関係ない遠くの問題には関心を示すのに身近な問題には無関心なこと」について用いられるが、伊藤さんが身近な問題をほったらかしにしていたとでもいうのだろうか。まあ、唐沢は「DAICON7」で「大阪府立国際児童文学館を救え!」というイベントに出たのだが(その帰りに藤岡真さんから逃亡した)、そのイベントに一体どんな意味があったのか?と大野典宏さんに突っ込まれている唐沢俊一には「ボランティア」という存在そのものが理解できないのかも知れない(これからも児童文学館を救うために何かするんだろうか?)。それから、唐沢は今回の「社会派くんがゆく!」で他にもこのような発言をしている。

変な話、これもアフガンの危険地帯で働きたいと思うのと同じでさ、のんべんだらりと平穏な都会生活をしていると自分が生きていないような気がして、好んでいつ殺されるかわからないような危険と隣り合わせの環境に自分を置くことで、自らを常に興奮状態に追い込むっていうか、そういうピリピリした感覚を感じていたい、っていう願望だよね。

人間ってやっぱり、非日常的な刺激がないと生きていけない生き物なんだ。それこそ毒蛇を飼うっていうのと、(あえて言わせてもらうけど)アフガンの危険地帯に赴くってのも、つまりは平凡な日常でない何かが必要だってことなんだ。

つまり、伊藤さんが刺激を求めてアフガニスタンまで行ったと言いたいのだろうか。…えーと、そんな話はまったく聞いたことがないんだが。当然なんらかの根拠があって言ってるんだろうな。でなければただの妄想である。(あえて言わせてもらうけど)って、あえて言うほどのことでもないよ。それにしても、このようなことを言うところを見ると、「裏モノ日記」に「アフガン狂時代」というタイトルをつけたのはやはり本気だったのだなあと思わざるを得ない。結局のところ、「男子の本懐」などと持ち上げたところで、伊藤和也さんが何のためにアフガニスタンまで行ったかを理解しようともしていないのだ。ついでに書いておくと、「エヴァンゲリオンの信奉者どもの言ってることが全くわけがわからなくて」と言ってるけど、伊藤剛さんは唐沢について「話がちょっと抽象的になると理解すらできず」と仰ってるので、「エヴァ」のファンではなく唐沢自身に問題があるのかもしれない(8月28日のコメント欄を参照)。しかし、ずっと「エヴァ」とそのファンをバカにしてきた唐沢が伊藤剛さんに「逃げちゃダメだ」と言われているのは、なかなか考えさせられる。

 たぶん、もっとツッコミどころはあるのだろうが(タリバンのところとか)、精神的に疲れてきたのでこの辺でストップ。しかし、「社会派くんがゆく!」というのは実際のところ毎回この程度の内容なのである。この程度の内容なので当然批判も多いらしいが、文句を言われると唐沢・村崎の二人は「シャレがわかっていない」「大丈夫か、そんなに素直で」などと開き直るのがいつものパターンである。要するに、かつてのビートたけしの芸風をやってるわけで(たけしほど愛敬もセンスもないのは言うまでもないが)、一体何番煎じなんだろう?と気が遠くなる思いがするが、はっきり言わせてもらうと、シャレだとわからないことを言う方が悪いに決まっている。「社会派くんがゆく!」でも、失言をした政治家に対して「自分の発言がどのように受け取られるかを考えていないバカ」と罵倒していなかったか?他人に言っていたことが自分に跳ね返ってくるのって、毒舌や悪口をウリにしている人間にとって一番カッコ悪いことだと思う。唐沢・村崎の二人にはいかに自分がみっともないことをしているか早いところわかってほしいものだ。

追記 kokada_jnetさんのご指摘で、事実誤認があったことに気がついたので記事の一部を訂正しました。

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