わふーっ。
今日発売の「フィギュア王」№135に『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第48回『北の国の有人宇宙船計画を考える』が載っていた。…前回の盗用についてはどうなったんだろうなあ(詳しくは3月27日の記事を参照)。
さて、今回の『トンデモクロペディア』は先頃行われた北朝鮮のミサイル発射実験がテーマになっている。…が、あちこちに間違いがある。
(前略)たとえ、人工衛星であったにせよ、ぼこぼこ勝手に打ち上げていい、ということにはならない。人工衛星を打ち上げるためにはまず“宇宙条約”に調印しなければならないことになっている。
これに調印・加盟していない国は、もし事故が起こり、他国に損害を与えた場合に、正式に定められた賠償を行うという保証もないわけで、そんな国に人工衛星を打ち上げられては危なっかしくて仕方がない。
このようにあるが、北朝鮮は今年の3月に宇宙条約に加入している。日本やアメリカが北朝鮮を批判していたのは、今回の実験が国連安保理決議に違反するからである(2月にクリントン国務長官が「北朝鮮は宇宙条約に加盟していない」と批判しているので、北朝鮮の条約加盟はそれへのリアクションなのかもしれない)。
さらに、北朝鮮の言う『金日成将軍の歌』が勝手に流されているとなると、これは国際電気通信連合(ITU。これには北朝鮮も加盟している)の規定に違反している。
歌を流すかどうかは関係なく人工衛星を打ち上げる場合にはICUに衛星で使う電波の周波数などを届け出る必要がある。今回の「光明星2号」については届出がないために「本当に人工衛星を打ち上げるつもりだったのか?」と疑惑を持たれているわけだ。…っていうか、ITUの規定と国際法は別物だろう。
また、さらに人工衛星打ち上げは国際民間航空機構(ICAO)にも発射計画の通報が義務化されている。飛行中の他国の民間機やロケットに危害が及ばないように、安全を保障することが必要になるわけで、その報告をしないまま、他国の領空を飛べば、これは領空侵犯になる。
今回の発射実験にあたって、北朝鮮は国際民間航空機関と国際海事機関に事前に通告している。…しかし、飛行中の「民間機」はわかるが「ロケット」ってどうなんだろう。
実際、北朝鮮政府は、中国政府に対し、中国が2003年から2008年にかけて打ち上げた有人宇宙船『神舟号』の技術提供を要請していたという。
中国初の有人宇宙船である「神舟5号」が打ち上げられたのは2003年だが、「神舟」計画がスタートしたのは1992年、「神舟1号」が打ち上げられたのは1999年である。
…どうにも間違いが多すぎるので、これでコメンテーターがつとまるのか不安になる。そもそも、北朝鮮のミサイル発射実験についてはテレビや新聞でさんざん報道されていたんだから、『フィギュア王』であらためて扱う必要があるのだろうか?ディープな情報があるわけでもないし。しかし、今回のコラム、この後も問題が山積みである。
人工衛星から一気に有人宇宙船は無理だろう、と思うかも知れないが、あのソ連がスプートニク1号を打ち上げたのは1957年の10月。その、わずか一ヶ月後の11月に、もう犬を乗せたスプートニク2号の打ち上げが行われ、世界をアッと言わせている。北朝鮮が世界に自分の国の科学技術を誇りたいのなら、そして人工衛星打ち上げがウソッパチであるといういわれなき(?)非難に反論したいのであれば、有人宇宙船を打ち上げるにしくはないだろう。
…正直、開いた口が塞がらない。どうして「有人宇宙船」の話をしているのに「犬を乗せたスプートニク2号」の話になるんだ?「人間」と「生物」をいっしょくたにしてしまうとは。しかも、「スプートニク2号」に乗せられた「ライカ」(クドリャフカ)は生きて帰ってこられなかったというのに。マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ!
ソ連のスプートニクに乗せられたワンちゃん(ライカという愛称で有名)は、実は帰還が予定されていなかった特攻犬であり、打ち上げ10日後に安楽死させられたというのが公式発表になっている。実は打ち上げの直後にカプセル内の温度が原因不明の故障から急上昇し、数時間であわれゆだって死んでしまったという。
「打ち上げの直後」に死んでしまったとしたら、ライカがスプートニクに乗った意味がなくなってしまう。ライカは少なくとも打ち上げから数時間は生存していたことがわかっていて、宇宙空間の無重力下においても生物が生存できることを証明したのである。
で、この後、北朝鮮の有人宇宙船の乗組員に最適な人物として唐沢俊一は金正男の名前を挙げている。唐沢が言うには、金正男が宇宙飛行士になることによって、北朝鮮の国威を発揚するヒーローとなり、金正日の後継者争いに一発逆転することができる、ということだ。…完全に思いつきで書いてるな。
そして、もうひとつの理由として、
なにしろ彼は、人に知られたディズニーランド好きである。
として、
ディズニーランドとくればスペース・マウンテンである。北朝鮮宇宙開発局は、有人宇宙船・光明星3号の内部を、スペース・マウンテンそっくりに改造すべし。生スペース・マウンテンを体験できるとならば(原文ママ)、金正男氏、大喜びで乗り込んでくれると思うんである。
としているのだが…、これって単に唐沢俊一が金正男を宇宙船に乗せたいだけなのでは?「ディズニーランド好き」がどうして「宇宙飛行士」につながるのかわからない。それだったら、金正日だって『ゴジラ』が好きなんだから、ムーンライトSY-3みたいな宇宙船なら乗りそうなものだ。…そんなのがあったら俺も乗りたいけどw
というわけで、前半で扱っているニュースについては間違いだらけ、後半では自分の書きたい話のために無茶なこじつけをする、という「唐沢俊一らしさ」にあふれたコラムであった。…まあ、2回続けて盗用がなかっただけまだマシなのかな。
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