地獄のデビル・ドラッグ。
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『読売新聞』2002年12月4日朝刊にこのような記事が載っていた。
薬物乱用の低年齢化、一般市民層への浸透に歯止めをかけようと、「県薬物乱用防止県民大会」がこのほど、静岡市駿府町の市民文化会館で行われた。県や県警、県教委で組織されている県薬物乱用対策推進本部の主催。
約千二百人が参加して行われた式典では、薬物乱用防止功労者やポスター・標語コンテスト入賞者などの表彰が行われた。
また、作家で評論家の唐沢俊一さんが「心の弱さだけでドラッグに手を染める訳ではなく、ドラッグに対する崇拝のようなものがある」などと、青少年文化と薬物について講演した。(以下略)
「こんなこともやっていたのか」とちょっと笑ってしまった。「裏モノ日記」2002年11月30日に講演の模様が書かれているが、もしかすると『読売』の記者は記事にするのに苦労したかも、と思ったり。実体験に基づいて著作権についても講演してくれないかなあ。
おそらく、『薬局通』などクスリ関係の文章を書いていたために起用されたのだろうけど、「ヒロポンが戦後の芸術の傑作を生み出した」という話もしたのだろうか(「トンデモない一行知識の世界」を参照)。
唐沢は『社会派くんがゆく!』でもヒロポンを賛美している。『社会派くんがゆく! 維新編』(アスペクト)P.394より。
いや、日本が敗戦のどん底から高度経済成長までよみがえったのは、みんなでヒロポン打ってガンバったからだと、オレもかねがねいろんなところで力説してんのよ(笑)。お祖父さんお父さんたちがヒロポン打って気合入れて、汗水流して働いた結果が、いまの日本経済につながっているわけだから。
ホントにシャブ漬けなんかにすると逆効果だけど、なんか適度な労働意欲が沸いてくるような(原文ママ)打ち方を教えてやればいいんだよな。
「適度」な打ち方なんかあるのかなあ。そういう方法があると思うことで中毒・依存へと進んでいってしまうのでは。
それだけでなく、同書P.400では「ヒロポンの恩を忘れるな」というコラムまで書いている。
ヒロポンはまったく、悪役としてしか昭和史の中で取り上げられていない、気の毒な存在なのである。終戦から約十年がヒロポンの流行時代であったが、貧しく、敗戦により国民としての誇りも失い、明日の食べ物さえ手に入るかどうかさだかでない時代の日本人をヒロポンがどれだけ慰めたか。確かにそりゃポン中の起こした深川通り魔事件などという殺人も起こったが、ヒロポンが無くなってからこういう事件は起きなくなったかというとちゃんと起こり続けているのだから、ヒロポンにばかりその罪を押し付けるのは酷であろう。昭和二十九、三十年の大々的取り締まりでヒロポンは姿を消したという風に資料には書かれているが、実際にヒロポン旋風が収まったのは、日本の景気が上向きになり、人々がヒロポンに頼らなくとも、明日を心配しなくてもよくなったためである。それを思うと、どこかにヒロポン塚でも建てて供養してやりたくなるほどだ。その恩を忘れてはいけない。
ヒロポンは「労働意欲」をもたらすのか「慰め」になるのかよくわからない。それにしても、粗雑な論理である。「覚醒剤中毒だけが猟奇事件の原因ではない」と言ったところで覚醒剤の害が見逃されるわけではない。だいたい「ちゃんと起こり続けている」ってなんなんだ。それと、唐沢は『昭和ニッポン怪人伝』(大和書房)P.220では次のように書いている。
1958(昭和33)年に公開された、『巨人と玩具』という映画がある。開高健原作、増村保造監督で、当時の広告業界の加熱した宣伝合戦を徹底して皮肉った作品だ。
キャラメルの売り上げ増に命をかける宣伝部長・合田(高松英郎)が、くたびれ切った表情で薬をのむ。部下の西(川口浩)はそれを見て、
「覚醒剤ですか」
と何気なく言う。現代の目で見ればひっくりかえるセリフだが、日本でも、覚醒剤取締法が実施される1951(昭和26)年までは、覚醒剤は処方箋さえあれば薬局で簡単に手に入った。この映画の時代にはすでに禁止されていたものの、闇では普通に出回っていたのである。
高度経済成長期を調べれば調べるほど、当時の社会全体が、まるで覚醒剤を服用したかのようにハイで、常軌を逸した行動も平気で行われていることに呆れ、驚かざるを得ない。何か日本中が、
「自分たちにはできないことはない」
という万能感に支配され、浮かれまくっていたかのような感じである。
映画の中の話とはいえ、「高度経済成長期」に覚醒剤が使われていたことを肯定的に評価していることに驚かされるが、結局のところ、ヒロポン(覚醒剤)は「慰め」になるのか「労働意欲」をもたらすのかはよくわからないままだ。どうして麻薬に甘いのか不思議である。
最低映画館を参照。『底抜け超大作』で中原昌也にバカにされてたっけ。
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