唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

Another One Bites the Dustbox.

「地獄へ道づれ」はある意味唐沢俊一問題を象徴する言葉のような。



 今回は、唐沢俊一が夏コミで発行した同人誌『DUST BOX 思考の護美箱』を紹介する。現在、公式サイトとらのあなCOMIC ZINで通販を受け付けているので、興味のある方はぜひ購入してほしい。


 今回の同人誌のタイトルについて、唐沢は「あとがき」で次のように書いている。『DUST BOX』P.60より。

 例によって雑文集である。Facebook中心に、ネットで書きつけたものにちょこちょこと手を入れた。

 もともと私の本業は(いろいろやりすぎて何が本業かわからなくなっているが)雑文書きであり、雑文でお金をいただいているのだから、金のとれないネットのSNSでこういう文章を発表するというのは不経済なのだが、雑文というのは一種、思考の覚え書きみたいなところがあり、ニュースなどを見てふと浮かんだ感想を、その時に書きつけておかないと、実際の依頼仕事でそれを文章に出来る機会がいつくるかわからない、というところがある。と、いうわけで折りに触れ、書いたものどもを始末しないと頭がいっぱいになってしまう。たまった思考のゴミ箱といったところだろう。書名の由来、かくの如し。


 かつての唐沢俊一のファンは「裏モノ日記」のファンでもあったわけで、ネット上で無料の文章を継続して発表するというのは実はライターにとってさほど不経済ではないのでは、と思う。だからこそ、「裏モノ日記」の休止は痛かったようにも思う。
 なお、上で書かれているように『DUST BOX』に収録されている文章の多くはFacebookで書かれたものだが、P.50〜51の『虹の世界のサトコ』の感想はAmazonのレビューが元になっている。こんなのやっていたんだねえ。



 「あとがき」は下のように締め括られている。同書P.60より。

 モノカキとしての私の立ち位置も、最近ふと思うと、さほど売れているわけでもないし、さればとて消えていった、というほど売れていないわけでもない。ちょうど、昔高座で雑談でお茶を濁していたあれとかあれみたいな芸人さんの立ち位置に似通ってきたな、と自嘲している。それでも、彼らの存在は、寄席という場にはなくてはならない貴重なものだった。私はどうだろうか、と、ときどき考えるのである。

 寂しいなあ。あんまりションボリされると応援しなきゃ、という気になってくる。『トリオさん』の大喜利ドリルでパンサー・尾形貴弘があまりにも不出来なのでケンドーコバヤシがだんだん優しくなってしまった気持ちがわかるような。



 さて、肝心の内容といえば、公式サイトでアピールしているレナード・ニモイの追悼文は力の入ったものだったし、石橋雅史小林清志のインタビューはそれぞれなるべく早く本にまとめてほしいと思ったのだが、それを除いては気になるところが目についた。
 たとえば、デモを批判する文章の中で次のような箇所がある。同書P.48より。

 良識ある日本国民の大半の脳裏には、60年安保、70年安保時のあの騒憂がいまだに刻まれている。

 正しくは「騒擾」、「そうじょう」と読む。誤変換ではありえないので読み方を知らなかったのだろうか。


 次にP.28より。

 wikipedia『スーパーマン』の項目で笑った一節。
【コミック・ドラマでの共通のキャッチ・フレーズは、「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」(なお、2番目、3番目のせりふを言った人物は、いったい何故騒いでいるのか不明である)】

 とはいえ、この解説文は時代状況を考慮していない。wikipediaにもあるように、『スーパーマン』のコミックが連載を開始したのは1938年、アニメ映画化は1941年のことである。これらの年がどういう年だったか。そう、戦争が大きく関わってくる。1939年、第二次世界大戦が勃発した。アメリカはまだ参戦していなかったが、ドイツ、そして日本による爆撃の恐怖におびえていた。


 悪名高いゲルニカ爆撃が1937年にあったとはいえ、1938年の時点でアメリカが「爆撃の恐怖におびえていた」というのは疑問(日本軍による重慶爆撃は1938年末)。一応、日本軍も戦争中にアメリカ本土を爆撃してはいるが、あくまで散発的なものである。富嶽が完成していれば話は別だったか?

 
 で、この後の続きを読んで思わず大笑いしてしまった。同書P.28〜29より。

(前略)スーパーマンも、それまでの恐竜やロボット、マッドサイエンティストばかりでなく、日本人スパイなどと戦うようになる。いや、それどころか1042年のアニメ作品『Eleventh Hour』では、自らがアメリカのスパイとして日本に潜入し、横浜の海軍基地に対し破壊活動を行うのである。(後略)


 1042年! 平安時代!! 『鳥獣戯画』よりも早く作られたアニメって…。1042コロンブス? それは450年早い。
 


 次は「殉国のエロス」と題された文章から。同書P.52より。

 フロイトの言うエロス(愛)とタナトス(死)は表裏の概念である。エロス(性行為)の果てに小さな死の瞬間があるように、死の疑似体験においてもまた、性の絶頂が体感できる。三島由紀夫を例にとるまでもなく、死、ことに自ら選ぶ死には誰しも官能の匂いを感じ取る。



 なぜならば自らの死に立ち会う人間の脳内には最大級に脳内麻薬が分泌され、恐怖心(苦痛)は快感と同居し、脈拍、血圧ははねあがり、呼吸は荒くなり、瞳孔は最大限に見開かれる。この身体的反応が、性の絶頂とアイソモーフィックであることは誰でもわかる。感情の錯誤で、肉体はこの相反する2つの反応を、同一と受け取ってしまうのである。



 愛の究極の形が自我を捨て去って完全に相手のために尽くすことであるように死もまた、最も官能の度合が高いのは相手に殉じての死、ことに母国のために自らの命を捨てる行為である。己れの持つ価値を全て相手に与え尽くす、命のポトラッチとでも言うべき滅私行為こそ、最も脳内麻薬を分泌させる快感行為なのである。かつてのキリスト教の殉教者たちの行為の歴史を見れば、それは明らかだろう。



 殉国行為を非人間的となじる人たちは、ここをよくわかっていない。理想化された脳内世界において、国家に命を捧げる行為、その死の瞬間はまさにエクスタシーの極み、人間性の噴出なのである。

 “isomorphic”は「同形」という意味。長々と引用したが、まあ、頭でっかちがいろいろと理屈をこねているなあ、という以外の感想が出てこない。「国のために死ぬのって超キモチイイらしいじゃん!」などと唐沢さんがあらぬ行為に出やしないか心配になってくる。あと、瞳孔は「開く」が「見開く」わけではなかろう。アイズ・ワイド・オープン!
 死の間際に苦痛がやわらいで気持ちよくなることは実際にあるようだ。しかし、いわゆる臨死体験にも言えることだが、体験者は結局のところ死んではおらず、生き残ったからこそ体験談を語ることが出来るのである。本当に死んだ人間が何を体験しどのように感じたかを生きている人間が知ることは出来ないのではないか。
 それに、唐沢自らキリスト教の殉教者」を持ち出しているように、国に限らず宗教でも思想でも個人でも、それらのために殉じることは出来るだろう。君は人のために死ねるかでありあいつの名はポリスマンである。

よくネタ扱いされるがいい歌だと思う。



 もうひとつ困ったのはP.10〜11に今朝みた夢の話を書いていること。他人の夢の話を聞かされるのはただでさえツラいのに、身銭を切って聞かされるツラさときたら(身銭云々については前回の記事を参照』)。身銭ワールドで身銭マンになっちゃいそう。

プレイ動画があるのか。



 …でも、ここまではまだいい。ヘンな文章だろうと夢日記だろうと、自分で書いているのだから。


 P.20〜21の「エジンバラ公失言録」を以下に全文引き写す。

 Wikipediaエジンバラ公エリザベス女王の夫君)失言集があまりに面白かったので。というか、これは失言というよりモンティ・パイソン風なブリティッシュブラック・ユーモアじゃないのか?

「英国人女性は料理ができない」(1966年)


「国民は、我々の生活にはもっと休みが必要だと言ってたくせに、今度は仕事がないなどと文句を言っている」(1980年代の不況時に発言)


「あなたは女性ですよね?」(1984ケニア訪問時、現地人女性に質問)


「ここに長くいたら、(中国人みたいに)目が細くなりますよ」(1986年中国訪問時、西安に留学中の英国人学生に向かって)


「生まれ変わったら、死のウイルスになって人口問題を解決させたい」(1987年、著書の序文で)


「あなたたちはほとんど海賊の子孫なのではないのですか?」(1994年ケイマン諸島訪問時、現地人に質問)


「なんとか食べられずに済んだのですね」(1998年パプアニューギニアを探検した学生に発言)


「うん、この工事はインド人がやったに違いない」(1999年スコットランド訪問時、ワイヤーが外れたヒューズの箱を見て発言)


「きみは太りすぎているから無理だろう」(2001年「将来宇宙飛行士になりたい」と語った12歳の少年に返答)


「まだ槍を投げ合っているのですか?」(2002年オーストラリア訪問時、オーストラリア先住民ビジネスマンに質問)


「どうやって免許取得試験中、スコットランド人は酒を飲まないようにするんですか?」(スコットランド訪問時、現地の自動車教習所の教官に質問)


「このくそったれ!」(相手がフィリップと気付かず、駐車違反の切符を切ろうとした警察官に対して)


「耳が聞こえない? このバンドの近くにいたら、不思議じゃないですね」(打楽器のバンド演奏の際、聴覚障害者に発言)


「おお嫌だ。酷い病気にかかるかもしれないじゃないか」(オーストラリア訪問時、コアラを撫でるように頼まれた際の返答)


 以上の文章は、ウィキペディアのエジンバラ公の項目からコピペしているので、リンク先をごらんになってほしい。


 それから、P.30〜32の「オタク嫌い主婦のTwitter日記」では、佃お母さんのツイートを多数コピペしている。さすがにネタアカウントだと気付いてはいるものの。




 …何はともあれ、いつもの唐沢さんのように出版の概念やモラルにとらわれない自由な同人誌であることは確か。でも、「思考の護美箱」というタイトルが謙遜になっていないのはマズいと思う。「こんなに面白い話がたくさんなのに“ゴミ”だなんて!」とはとても思えず、「ああ、本当に“ゴミ”だな」と思っちゃうもの。とにかく同人誌とはいえウィキペディアのコピペでお金を取る発想が理解できない。学生さんのレポートでも許されないというのに。その一方で「1042年」みたいなミラクルを起こすあたりは相変わらず「持っている」ような気もする。あれだけで身銭を切った甲斐があったというものだ。
 もうひとつ気になったのは、文中でも取り上げたデモ批判や「殉国のエロス」の他にも昭和天皇の御製を好意的に取り上げた文章もあるあたり、唐沢さんの保守化が一層進んでいるように感じた。いや、本当にガッツリ保守派になっちゃった方がいいと思うんだけどなあ。



タコシェで既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』『唐沢俊一検証本VOL.2』『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』『唐沢俊一検証本VOL.3』『唐沢俊一検証本VOL.0』「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。タコシェの店頭でも販売しています。
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