追討の達人。
・タコシェで既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』、『唐沢俊一検証本VOL.2』、『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』、『唐沢俊一検証本VOL.3』、『唐沢俊一検証本VOL.0』、「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。タコシェの店頭でも販売しています。
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●12月19日に朝日放送で放映された『探偵! ナイトスクープ』に唐沢俊一が電話出演していたようなのだが、自分が住んでいる地域ではまだ放送されていないため残念ながら中身をまだチェックできていない。MXテレビでは再来週放送なのかな。詳しいスケジュールが分かったらあらためてお知らせしたい。ナァァァイスクゥゥゥゥゥゥ(ここでCM入る)。
●11月25日11時からTBS系列で放送された『ひるおび!』内のコーナー「常識クイズ どっちがホント!?」で唐沢俊一が解説役で出演していたが、特に書くべきことはなかった。
●『週刊新潮』12月18日号に掲載された『東京情報』第97回より。同誌P.125より。
こんな話を聞いたことがある。
1922年、アインシュタインが来日した際、日本では『アインシュタイン相対性原理講話』がベストセラーになっていた。ところが、致命的な誤植が見つかる。そこで版元は本の交換に対応できるように態勢を整えたが、返品はほとんどなかったという。つまり、多くの人は話題になっているから買ったのであり、内容はどうでもよかったのだ。
「一学楽校Navi」で唐沢俊一が担当している「楽校コラム」12月4日更新分より。
ただし、日本人が本当に彼の相対性理論を理解していたかどうかは疑わしい。ある出版社が来日にあわせて相対性理論の解説本を出し、大変な売れ行きを見せたが、実は大きな落丁(印刷ミスでページが飛んでしまっていること)があった。しかし、交換してくれと書店に申し込んできた人はほとんどいなかったそうだ。つまり、話題になっているからと買っては見たが、さっぱり中はわからず、落丁に気がつかなかったということである。
唐沢俊一とヤン・デンマンには共通の友人がいるのか、あるいは唐沢さんがデンマンさんにこの話をしたのか。まあ、唐沢俊一だって相対性理論を理解しているのかどうか疑問なのだが(2010年5月31日の記事を参照)。ついでに書いておくと、別のコラムで出てくる『告発の危機』という映画は『告発のとき』なのでは。
●本題。今回は唐沢俊一が夏コミで出した同人誌について取り上げる。…もうすぐ冬コミなのに今頃やるあたり、自分がいかにサボってきたかを痛感させられるが、それでもやらないよりはマシなので遅ればせながらやっておく。
同人誌のタイトルは『R.I.P 2013.1 ─ 2014.6』。唐沢俊一がネット上(旧公式サイト・Facebook等)で2013年から2014年上半期にかけて発表した追悼文をまとめたものである。とらのあなとCOMIC ZINでは入手できるようなので、興味のある人は今からでもゲットしよう。
以下、本で取り上げられている人物を挙げておく。なお、旧公式サイトで出典を確認できるものはリンクも貼っておく。
・スチュワート・フリーボーン
・マーガレット・サッチャー
・ブライアン・フォーブス
・リチャード・マシスン
・アイリーン・ブレナン/カレン・ブラック
・森浩一
・梶田興治
・岩谷時子
・コリン・ウィルソン
・高橋昌也
・永井一郎
・シド・シーザー
・宇津井健
・蟹江敬三
・ボブ・ホスキンス
・逢坂じゅん(レツゴーじゅん)
・林隆三
・イーライ・ウォラック
以上。同人誌収録にあたって書き改められた部分がいくつかあるが省略。
これはいつもの唐沢俊一の追悼文にも言えることだが、正直なところピンとこない部分が少なくない。いかんせん唐沢と自分は20歳近く年齢が離れているため経験や感覚を共有できていないことが大きいのだろう。だから、唐沢と年齢の近い方からこの本の感想を聞いてみたいものだが、今のところは「そういう見方もありますかねえ」といった感想にとどまっている。もっと前向きにとらえてみれば、「この本で取り上げられている人について深く知るようにしよう」くらいは思えるが、もし本当に知れば知ったでまた別の問題が生じる予感がないでもない。思うに唐沢が本書のまえがきで書いているように唐沢の追悼文を商業出版する企画が何度も頓挫しているのも、結局のところ受け手が少ないからなのではないか。商業出版するなら、唐沢俊一と直接関わりのあった人間の追悼に絞るとか、ある程度限定しないと難しいように思う。
もうひとつ、これもいつもの唐沢の追悼文にも言えることだが、時々入る「最近の役者は」「最近の声優は」といった愚痴が面倒くさい。自らも演劇に携っている唐沢俊一ならではの責任感だと解すべきなのだろうけど。細かい点では、P.25に「ノリエガ大統領」とあったのだが、マヌエル・ノリエガは大統領になってたっけ。NORIEが将軍!?
実のところ、この同人誌で一番おもしろかったのはまえがきである。P.2より。
若いうちは自分は誰の手も借りず、1人でオトナになったと考えがちである。しかし、ある程度の年齢になったとき、それは大きな勘違い、夜郎自大のナルシスティックな考え方であり、本当の自分は実にちっぽけな存在で、ただ、その回りに、さまざまな先人の功績をパッチワークしてまとっているに過ぎない、ということに気がつく。(後略)
私がそのような、自分の構成要素の喪失を初めて痛切に感じたのは1982年、当時大ファンであった藤村有弘(中略)の死を耳にしたときであるから、ずいぶん早いうちから私はナルシズム(原文ママ)には縁がなかったとみえる。そして、もう20代も終わりに近いし、安定を考えなくちゃと考えて医療事務の仕事についていた1988年、天才レスラー、ブルーザー・ブロディの突然の死(中略)の衝撃が、
「どんな凄い才能の持ち主でも、この世から消える」
という無常観に私を落とし込み、現世を自分の意志通りに生きなければ、それは単なる無駄になる、と考え、正業を捨て、文筆業という不安定な世界に飛び込んだ。それから四半世紀、何とかこの業界の隅っこに生きているが、もし、あのブロディの予想だにしなかった死がなければ、私は今でも札幌の薄暗い病院事務室の片隅で処方箋をパソコンに打ちこんでいたかもしれない。
ここへ来て新たなデビュー秘話である。まさかブロディが切っ掛けだったとは。でも、『奇人怪人偏愛記』に書いてある話とは違っている(トンデモない一行知識の世界)。
ただ、ここに書かれていることには違和感を持たざるを得ない。唐沢の追悼文が「追討」と呼ばれるのは、故人をタテにして他者を批判する、自らのナルシシズムを充足させる行為にほかならないからではないか、と思うからだ。それに故人を無理に不幸にしようともしているし。ナルシシズムから離れたつもりでいたのに気がつけばピッタリ寄り添ってしまっている、そんな感じ。
このまえがきで思い出したのは、『色川武大・阿佐田哲也エッセイズ』2巻(ちくま文庫)の唐沢俊一による解説である。同書P.365より。
年をとってから若いモンにしてやれる意地悪というのはいくつもあるが、その中に、古い、彼らの知らない芸人の話をえんえんと話して聞かせてやる、というのがある。
出来れば、同世代で、そういう話のわかる人物がもう一人、いればいい。そして、もう何年も前に死んだ、若い連中には名前すらよくわからない噺家とか色物とかの話をえんえんとして、二人だけでひたすら盛り上がり、周囲の若者どもを置いてきぼりにするのである。
これは楽しい。聞いている連中は私よりもずっと後まで生きるだろうが、たとえ何十年私より長生きしたって、彼らにはその芸人の高座を見ることは絶対出来ない。タイムマシンでも発明されない限り、後からくるものは自分たちより先に寄席に通い、高座に接していた者を決して追い越せないのである。指をくわえているしかない若い人たちの前で、そういう話をするのは老人の特権だろう。
この人はリアルギミノリだな、マジで。この人と一緒に酒飲みたくねー。
唐沢俊一は若い人たちを置いてけぼりにするのを「意地悪」と言っているが、それは「意地悪」ではなくて「甘え」でしかない。年長者を敬って耳を傾けようとしている真面目な若い人に甘えているだけである。自分などはきわめて不真面目だから、「二人だけでひたすら盛り上がり」って、勝手に盛り上がっていればいいじゃん、としか思えない。…っていうか、唐沢は自分が同じことをされたら嫌だと思わないのだろうか。つまり、最近の流行りを語る若い人たちに置いてけぼりにされて不愉快ではないのか、と。いずれにしても、他人に理解できない話をして得意がる態度というのがそれこそ理解できない。雑学のマウンティングにも困ったものだが、少しは会話のキャッチボールをしようよ。
あと、唐沢俊一の理屈だと、後に生まれた人間は先に生まれた人間を「決して追い越せない」のだから、突き詰めて考えると原始人最強になってしまいそうである。「お前らマンガ肉喰ったことねえだろ?」とか言われてしまうのか…。ただ、そう言っている唐沢俊一が先人を敬っているかというとそうでもなくて、自らの世代を「オタク第一世代」と言いつつも、年長者を「プレオタク」などと呼んで排除してしまっていて、これはズルい振舞いだと言わざるを得ない。おそらくは、唐沢自身が若い頃に年長者から置いてけぼりにされたことがあって、その仕返しを今になってしようとしているのではないか、という気もする。もしそうだとしたら、まことに気の毒だとは思うが、負の連鎖はどこかで止めてほしい、と思うばかりである。
最後に少しだけ『色川武大・阿佐田哲也エッセイズ』の解説に話を戻すと、色川の芸能にまつわるエッセイを集めたこの本を唐沢俊一は「文化的アジテートの書」と呼んでいるのだが、個人的には違和感を持たざるを得ないフレーズであった。色川武大のエッセイがどれもよかっただけに、余計そう感じた。まあ、唐沢さんは常日頃誰かしらをアジっているつもりなのかもしれないが…。
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