唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

人生の座談会。

タコシェで既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』『唐沢俊一検証本VOL.2』『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』『唐沢俊一検証本VOL.3』『唐沢俊一検証本VOL.0』「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。タコシェの店頭でも販売しています。
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・当ブログにコメントされる場合には誹謗中傷および個人を特定しうる情報の掲載はおやめください。守られない場合には厳正に対処する可能性があります。
・1970年代後半に札幌でアニメ関係のサークルに入って活動されていた方、唐沢俊一に関する情報をご存知の方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
karasawagasepakuri@yahoo.co.jp



●前回紹介し忘れた情報。今年も「日本トンデモ本大賞」が開催決定とのこと(と学会公式Twitter)。会場は去年と同じお台場のカルカル。去年のレポートは2013年6月9日の記事を参照。
 私は行けないが盛り上がってほしいものだ(行けない理由については2011年6月17日の記事を参照)。



1月28日11時からTBS系列で放映された『ひるおび!内のコーナー「常識クイズ どっちがホント?」の解説役として唐沢俊一が出演していた。
 今回の1問目は池上本門寺の仁王像のモデルについて出題されたのだが、その解説の際に唐沢が「長崎の平和祈念像のモデルは力道山と発言していた。このトリビアは『史上最強のムダ知識』(廣済堂ペーパーバックス)でも紹介されているが、当ブログの2008年7月13日の記事で検証している。『ひるおび!』のクイズ自体はそれなりに下調べしてあるようなのだけど。



「雑学王・唐沢俊一の楽校コラム」が昨年末に大量に更新されていたのに今頃気づいて驚いた(2013年7月9日の記事を参照)。で、残念ながらケアレスミスを見つけてしまった。「郵政の父は電話の父でもあった」より。

なお、郵便制度開設当時(1873)は、配達する現金を狙って強盗が発生したため、配達員には拳銃の所持が認められていた。この慣習は第二次大戦の終わった3年後、1848年に廃止されるまで続く。


 コラムの最後に参考にしたサイト・ブログのリンクを貼っているあたり、一応気を使っているのだろうか。




●本題。正月に帰省した時に見つけた空前絶後のオタク座談会」シリーズの単行本3冊『ヨイコ』『ナカヨシ』『メバエ』(ともに音楽専科社)を引き取ってきた。
 一応説明しておくと、「オタク座談会」はかつて『hm3』で連載されていたもので、初期は岡田斗司夫田中公平山本弘の3人がオタク関連の話題を暴露やら下世話なネタやらを多量に含んだ面白トークを繰り広げていて、これらは「史上最強のオタク座談会」シリーズとして単行本3冊にまとめられている(『封印』『回収』『絶版』)。後期は田中氏が抜けた代わりに、岡田・山本両氏がゲストを招く形式に変更して、ゲストと面白トークを繰り広げる、という内容になっている。ゲストの一覧を書きだしておくと、


『ヨイコ』=小牧雅伸大槻ケンヂ柿沼秀樹大地丙太郎
『ナカヨシ』=伊藤秀明かないみか原恵一渡辺宙明
『メバエ』=眠田直宮脇修一開田裕治・川口克己


 となっている。あらためて見るとかなり錚々たる面々である。今、このような座談会をやるとしたらニコニコ生放送USTREAMでそのまま流しちゃうのだろうか。


 自分が「オタク座談会」を読んでいたのは唐沢検証をする前だったので、再読してみるとまた違った印象があるかもしれない、と思ってヒマを見て拾い読みしているのだが、いくつか興味深い箇所があったので紹介しておく。


 その1。開田裕治氏がゲストの回より。『メバエ』P.160より。

岡田   テーマ、今日決まってました?


開田   いえ、聞いてないです。



岡田  じゃあ、今話して決めれる(原文ママ)と思います。あの、お薦めがいくつか。開田さん呼んでするんやったらこれがええかなというのが、「関西人に生まれて」という事(笑)。関西でオタクであるというのはどういう事やということと、あとね、「近ごろの若いモンは」(笑)。


開田  アハハハハハ。う〜ん、それだったら唐沢さんとか呼んで来た方がいいんじゃないの?


岡田  唐沢さん、マジになるから、「近ごろの若いモン」の話だと(笑)。


開田  同じ話を何度もするという(笑)。


  この「唐沢さん」が弟さんである可能性も一応考慮しておく必要があるが、芸風から考えるとお兄さんだろうなあと。「同じ話を何度もする」のはキツそう。ちなみに、この回は「怪獣話」がテーマになっているが、山本会長が『ウルトラマン』を「ハードな怪獣との対決」と捉えているのに対し開田画伯が異を唱えるくだりなどは再読してもやはり面白かった。特撮ファンにもいろいろあるみたい。



 その2。伊藤秀明氏がゲストの回より。『ナカヨシ』P.22より引用。

伊藤 (前略)僕、もともと北海道の札幌育ちなんだけども、「あ、『ヤマト』がやってる!」っていう感じで高校ん時(原文ママ)見てて、「あ、すごいなあ!」と。で、ファンクラブ活動みたいのもやって、「東京にすごいヤマト・ラボラトリーっていうファンクラブがあって、いろんな人たちが集まって、すごい資料集めてやってるんだ」みたいな部分があってね。(後略)


 伊藤氏は1957年生まれだから唐沢俊一より1歳年上になる。つまり、2人はほぼ同時期に札幌で『宇宙戦艦ヤマト』のファン活動をしていたことになるわけだが、伊藤氏は唐沢のように「『ヤマト』のブームは札幌から起こった」などと言っておらず、東京に「すごい」ファンクラブがあったと言っている。
 一方、唐沢は『ブンカザツロン』(エンターブレイン)内のコラムで伊藤氏を貶めるようなことを書いている(2011年3月7日の記事を参照)。同書P.133より。

第一オタク世代に、“ひょっとして、世の中は自分たちの方に大きく向きはじめたのかもしれない”と思わしめたのは、天下の商業雑誌であった(今、思えば情けないものであったが)みのり書房の『OUT』が、創刊時はただの総合サブカル誌であったのに、突如『宇宙戦艦ヤマト』特集号を出して、それから一挙にオタク雑誌に変貌していったことであった。私の札幌同人活動時代の先輩であるケダマンという男も、この『OUT』で下手くそなセルマンガを連載し、帰郷した折などは東京で大成功した先達、という扱いを受けていた(いま、どうしているのか……)。


 その後、伊藤氏の訃報に接した唐沢は2013年7月31日の日記で以下のように書いている。

http://togetter.com/li/541470 ケダマン(ケッダーマン)こと伊藤秀明氏死去。札幌のアニメファン活動草創期における出世頭(いち早く上京してプロになった)だった。私がそういう活動に入ったときはもう雲の上の存在みたいな人だった。なのでかなり年上と今の今まで思い込んでいたが、まさか同年齢とは。逆に言うと、同年代のこの人がさっさと札幌を去ってしまっていたので、残ったこっちが頑張らないといけなかったわけだが。

正直言って、この人の文章も絵も編集物も、素人っぽくてダサいなあ、と最初はバカにしていた。しかし、後で本人から、田舎から出てきて東京で好きなジャンルで仕事するためには、得意不得意を言わず何でもやらなきゃいけなかったんだ、と言うのを聞いて、ジャンル草創期の開拓者の使命感みたいなことを感じてちょっと感動した。オタク第一世代が最近次々と若くして亡くなっているのは、その頑張りのツケが回ってきているのだろうか。だとすると哀しいことであるな。


 「出世頭」「雲の上の存在」だと思っていた人にあんなコラムを書くのはいかがなものかと思うし、「ケッダーマン=伊藤秀明」をいつ知ったのかも気になる。それにしても、この文章も「追討」だな。あと、伊藤氏が唐沢に先行して札幌で『ヤマト』のファン活動をしていたとなると、唐沢の持ちネタである「『ヤマト』のために1年浪人した」という話の意味合いも変わってくるような気がする。


 さて、『ナカヨシ』で伊藤氏は業界に入った経緯を語っていて、それによると親に頼み込んで東京にアニメーションの勉強をしに行ってたくさんのオタク仲間と知り合い、そのつながりで『OUT』に参加したり『ファンロード』の表紙を描くようになったことなどがわかる。興味深いことに伊藤氏はなみきたかし氏とも知り合いだったようである。
 これを読んでいて感じたのは、「唐沢さんよりも伊藤さんの方がオタクらしいなあ」ということである。ファン活動が昂じて業界へ入るという、いわゆる「オタク第一世代」の人たちによく見られるパターンを伊藤氏もたどっているのだ。岡田斗司夫もそのパターンなわけだが、他ジャンルのライターから出発した後に、「昔アニメのサークルに参加していました」とオタクジャンルに転入してきた唐沢の在り方は実はレアケースなのではないか?と思ったり。
 それによく考えてみると、唐沢俊一が何故東京の大学に行ったのか、いまひとつハッキリしない。古本蒐集か演劇かオタク活動か、このうちのどれかなのだろうが、本気でどこかの業界に入ろうとした形跡はこれまでの唐沢の文章あるいは発言からは見当たらない。大学の講義にはほとんど出ていなかったと本人が書いているしなあ。東京で劇団なりアニメ・特撮系のサークルなりに入ろうとして嫌な思いをしたんじゃないか? とたまに邪推してしまうのだが…。
 ついでにもうひとつ邪推すると、唐沢が伊藤氏を妙に貶めるような書き方をしているのは、「好きなものに情熱をかけられる人」を理解できないからではないか? と思う。手塚治虫をたびたび貶すのも同様。もしかすると、理解できないからではなくて、いわゆる「すっぱいぶどう」なのかもしれないけれど。




 その3。小牧雅伸氏がゲストの回より。ちなみに、この回では、岡田斗司夫と小牧氏がSF大会に来た筒井康隆が一緒に連れて来た家族の部屋まで要求してきた、とボヤくくだりがあるのだが、岡田が『噂の眞相』で筒井氏にイヤミを言っていたのはこの件が原因かもしれない(2013年7月25日の記事を参照)。
 それはさておき、この回では岡田が1982年に開催されたアニメック』のファン大会に行った時の思い出話をしていて、それに関連してこんな発言をしている。『ヨイコ』P.62より。

岡田  (前略)僕はその頃、なんかアニメ・エリート論だったから、アニメなんか見るヤツは人一倍賢いヤツだと思ってたんだ。なんかいい歳してアニメなんか見るからには、もうそれはよっぽどひねくれてる知性がないとできないって思って(笑)。



山本   わかる、わかる、わかる。


 当ブログでも何度か取り上げている「オタク=エリート」論はだいぶ年季の入ったものだったようだ。「いい年してアニメなんか見る=幼稚」というよくある見方を「いい年してアニメなんか見る=ひねくれた知性がある」と逆転させているわけだが、今になってみると大人がアニメを観るのにわざわざ理論武装しなければならなかった面倒臭さに同情するしかない。その点、俺なんか開き直っちゃっているからなあ。オタクにとって今はいい時代なんだろうな、きっと。
 もうひとつ重要なのは、岡田の発言に会長が同意しているところで、もしかすると、岡田言うところの「アニメ・エリート論」が当時の「オタク第一世代」のみなさんに広まっていた可能性がある。…まあ、「この2人が変わっているだけだから!」と反論される方もいらっしゃるかもしれないので、決めつけはしないけれども。


 で、上の発言の後で、岡田は『アニメック』のファン大会で上映された『魔法のプリンセス ミンキーモモにファンたちが熱狂するのを見てショックを受けた話をしているのだが、…えーと、これって要するに「萌え」だよなあ。『オタクはすでに死んでいる』(新潮新書)で岡田は「萌え」自体と「萌え」がもてはやされることへの違和感を語っているわけだが、「オタク=エリート」論と同じくこの問題もだいぶ年季の入ったものだった、ということになりそうだ。なお、余談だが、岡田の発言の後で小牧氏が「大会で上映した回は作画が良くなくて失敗した」とちょっとズレた反省をしたり、「“空モモ”はいいけど“海モモ”はダメ」という主旨の発言をしているのが面白かった。アニメファンにもいろいろあるみたい。


 『ヨイコ』P.63より、さらに『アニメック』のファン大会の話。

岡田  (前略)実際アニメ自体を俺そんなに好きじゃないんだなって、あの時思ったんですよ。眠田直先生と同じく、アニメを愛してるんじゃなくて、SFを愛してて、SFの映像化としてのアニメっていうのが好きなだけで、アニメ自体そんなに好きじゃないな。まあ、『ガンバの冒険』とかね、なんか好きな作品はあるんだけども、それはちょっとイレギュラーで、基本的にはSFが好きなんだと思って。


山本   僕もそれに近いかもしれないねー。


 また会長が同意しているがそれはさておき。…まあ、「オタク第一世代」にはオタクとSFファンを兼ねたような人が多かったみたいだし、そーゆー立ち位置の人からすると後続のオタクの在り様に違和感をおぼえても無理はないわけで、「オタクはすでに死んでいる」と言いたくなるのもわからなくはない。ただ、『オタクはすでに死んでいる』を読んでいて気になるのは、岡田による「オタク」の定義はどの程度正確なのか? という点なのだが、オタクを一種の「エリート」として捉えたがり、「萌え」に拒否感を示したり、といった岡田の個人的な資質にかなり引っ張られた本なのではないか? という気がしてならない。岡田とは逆に『ミンキーモモ』を喜んで観ていた人のオタク観なりオタク史を聞いてみたいような。
 「オタク座談会」から面白い情報を見つけたら、このブログでまたあらためて取り上げるかもしれない。


 岡田のオタク関連の言説についても考えをまとめておきたいので、唐沢検証に早いところ区切りをつけねばなあ。



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オタクはすでに死んでいる (新潮新書)

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