四畳半ドラマの逆張り。
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・1970年代後半に札幌でアニメ関係のサークルに入って活動されていた方、唐沢俊一に関する情報をご存知の方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
karasawagasepakuri@yahoo.co.jp
●唐沢俊一公式サイトの「事務所所属のお知らせ」より。
さらに、アールスタイル企画の演劇公演に文芸スタッフとして
参加することも決定しております(第一回は今年12月、下落合
TACCS1179にて公演)。個人企画の公演は今後とも続けて参ります
が、スタイルの異る若手中心の公演と平行することで、舞台に幅が
出せればと考えています。
唐沢が書いている通り、TACCS1179公式サイトの12月のスケジュールにはアールスタイルの公演予定が入っていたのだが、「もうすぐ12月なのに全然情報がないなあ」と思ってもう一度チェックしてみたら、アールスタイルがおさえていたはずの日時が空欄になっていたのでビックリ(魚拓)。10月7日の記事にある別の魚拓と比較してもらえればわかりやすいかと。自分は演劇には疎いのだが、こんなことってよくあるのだろうか。
さらに、「世外今是」の公式サイトが見られなくなっているのにも気づいて2度ビックリ。Twitterは一応まだある。唐沢の演劇活動の実態まで検証する気はないが、少し心配になってきた。
●本題。唐沢俊一が『週刊新潮』の匿名連載コラム『東京情報』の中の人(ヤン・デンマン)なのでは?という疑惑については以前書いた(5月30日および6月1日の記事を参照)。そんなこともあって、『東京情報』を毎週チェックするようにしているのだが、『週刊新潮』10月17日号P.122〜123に掲載された第39回「ドラマ狂騒曲」が、唐沢イズムを感じさせるなかなかの傑作だったので紹介してみたい。
この回は、タイトル通り最近のTVドラマがテーマになっている。P.122より。
部下のラッセル君が店に入ってきた。
「すいません。取材が長引いてしまって。え、『半沢直樹』ですか? 一応チェックはしてますが、『あまちゃん』も含めてB級ドラマですよ。2つのドラマの共通項は、“オーバーアクト”、つまりくどい演技にあると思います。『あまちゃん』なら能年玲奈の『じぇじぇじぇ』、『半沢直樹』なら堺雅人の『倍返しだ!』という台詞と共に行われる演技は悪ノリに近いものでした」
無理に貶そうと思えば観てない人でもこの程度は言えるなあ、という感じ。「じぇじぇじぇ」も「倍返し」も今年の流行語大賞の候補になっているしね。『ドクターX』の「私、失敗しないので」があまり流行らないのは上のふたつに比べると使いどころに困るからだろうか。本当に観ていてこれくらいのことしか言えないとしたらラッセル君の能力に疑問を感じざるを得ない。『あまちゃん』を論じているのにクドカンをスルーしているしなあ。
ただ、仮にヤン・デンマン=唐沢俊一だとすれば、かつて『B級学』『B級裏モノ探偵団』なる著書を出していた唐沢が「B級ドラマ」を批判的な意味合いで使っちゃダメなのでは?と思ったり。まあ、半沢直樹が「悪ノリ」だとしたら古美門先生はどうなるんだ、という気もする。
同じくP.122〜123より。
ラッセル君が頷く。
「マスメディアは総絶賛ですよ。読売新聞では、40代の男性記者が『僕も、これを見るために毎朝しっかり起きるようになったからね』と述べています」
いい大人が恥を知らないのだろうか。NHKの朝ドラは15分の番組である。オープニングの曲の時間を除けばそれ以下だ。小間切れのドラマを続けるためには、視聴者が次回も見たくなる仕掛けをつくらなければならない。
人生を描くためには、音や色の無い世界を表現することも必要だが、それでは間が持たないので、合成着色料や甘味料を使う。その結果、極彩色のお子様ランチのような番組ができあがる。そんなものは味覚が未発達な子供を喜ばせるだけのものだ。大人は2時間かけてじっくり味わう懐石料理のようなドラマを見るべきだろう。
このくだりを読んだ時に思わず「じぇじぇじぇ!」と叫んでしまった。…すみません、一度使ってみたかったんです。
それにしても、デンマンさんの話はかなりユニークである。要は「15分番組は大人が見るものではない」と言っているわけだ。朝の連続テレビ小説を全否定しちゃったよ…。でも、「15分だから集中して観られる」とも考えられるから、さすがに決めつけが激しすぎるのではないか。そもそもデンマンさんは『あまちゃん』の何処が「お子様ランチ」なのかちゃんと指摘できていないうえに、「人生を描くためには」云々とふわふわした話を長々と書いているので、「ああ、ちゃんと見ていないんだな」と微笑ましくなってしまう。よく知らないのにあれこれ言うあたりはいかにも唐沢イズムを感じさせる。…しかし、「15分番組は大人が見るものではない」はやっぱりすごい論法だ。昔の方が「15分ドラマ」「30分ドラマ」は多かったから、デンマン流に考えれば日本人は成熟していっているのかもね。
P.123より。
われわれは小声で喋っていたつもりだが、後ろのテーブル席にも聞こえていたらしい。白髪の社長風情が口を開いた。
「そちらの外国の方になにか飲み物を差し上げて下さい」
遠慮なく赤ワインをグラスでいただいた。
「戦争が終わって7年後、『君の名は』というラジオドラマが爆発的なヒットを記録したんです。菊田一夫原作で、映画版の主役は岸惠子。当時は『番組の放送時間になると銭湯の女湯から人が消える』などと言われたものでした。しかし、今放送をしても視聴率は稼げないでしょう。AKB48のような学芸会レベルの出し物が売れる時代なんですから」
まーたこのパターンか(6月1日の記事を参照)。デンマンさんたちは外食の時によほど騒がしくしているらしい。にしても、一体何語で喋っているのか、やはり気になる。
そういえば『半沢直樹』の最終回放映直後にこんな画像が出回っていたっけ(togetter)。『君の名は』がウケないとしたら、ネットやケータイが当たり前の世の中で「すれちがい」をリアルに感じられるか?という問題があるような気がする。まあ、「アイドルの演技=学芸会レベル」という見方は陳腐すぎてアクビが出ちゃうけれども。アイドルは演技が下手でもかわいければ(かっこよければ)十分なんじゃないかなあ。ところで、「社長風情」ってどんなヒトなんだろ。
P.123より。
なにかを言おうとした30代女子を制し、社長風情が語り出した。
「戦後の日本には、さまざまな国民の共通体験がありました。戦争、闇市、高度成長、安保闘争……。ところが、ビートルズがヒットしたあたりが最後でしょうか。同じ時代を生きたことを確認するようなイベントが現れない。今の若者はバブル時代を知りません。また、情報量が増えたことで、ひとつの出来事への関心が薄れたということもある。長嶋茂雄が天覧試合でホームランを打ったことは、当時は大人から子供まで脳裏に刻みこまれましたが、今ではマー君が23勝しても他のニュースに埋もれてしまう」
はい、ここにも唐沢イズムが滲み出ていますね。「特別な出来事を体験してこなかったからサブカルチャーでアイデンティティを形成するしかなかった」という話を唐沢俊一はたびたびしていて、その中で「共通体験」なるワードも過去に出てきている(2010年9月6日の記事を参照)。ビートルズが日本国民最後の「共通体験」だとは驚きだが、その割りに唐沢はビートルズに疎いような…と思っていたら、以前はグループサウンズが「共通体験」だったと言っていた(2010年10月18日の記事を参照)。
で、「天覧試合」云々については、あれは瞬間最大風速として盛り上がったと言うよりも、その後長い時間をかけて伝説化していった出来事なので、今年の田中将大の活躍と単純に比較するのは不適当だろう。だいたい、田中が記録を更新するたびにスポーツニュースでは大きく取り上げられていたし、このコラムが載った後に行われた日本シリーズが近年になく盛り上がったのもデンマンさんにとっては不運だったろう。あんな展開、凄すぎて誰も予想できないよ!
個人的な話をすると、日本シリーズ第7戦が行われた日の夕方に自分はとある温泉に行っていたのだが、そこで男の子が「今日の試合、どっちが勝つかなあ?」と父親に聞いたのを目撃している。…「国民の共通体験」は今でもあるんじゃないの? ちなみに、唐沢俊一は野球にかなり疎い(2009年5月14日の記事を参照)が、デンマンさんが野球に詳しいかは不明。
P.123より。
40前後の男が追従する。
「昔の紅白歌合戦は、誰もが知っている曲ばかりでした。でも、今は知らないジャリタレばかり。だから紅白も国民の共通体験になりません。一方、オタクがAKB48にはまるのは、狭い範囲で共通体験を求めるからでしょう。アイドルと握手するためにCDを買うことが馬鹿馬鹿しいことくらいは彼らも自覚している。でも、大勢で一緒に馬鹿なことをやるのが目的になっているのです」
これはよしりんの出番だな、という冗談はさておき、「オタクがAKB48にはまる」ってそうか? 俺はオタクだけどAKBにはあまり興味ないなあ(そもそもアイドルに対する感度が鈍い)。「共通体験」したいからAKBにハマる、というのも変な話で、AKBにハマっている人が多いから結果として「共通体験」になっているだけ、という気がする。世の中には流行りものが数多くあるわけで、その中からAKBをチョイスすることに、たとえ傍から馬鹿馬鹿しく見えたとしてもその人個人にはそれなりの意味があるのだろう。「馬鹿馬鹿しいことくらいは彼らも自覚している」も、オタク趣味に対してシニカルに振舞う唐沢俊一っぽいけれど。自分の好きなものの価値を素直に認められないと結局つらい思いをする、という気もする。
そして、「今は知らないジャリタレばかり」と感じるのは、それは彼が歳をとったからにすぎないのではないか。紅白じゃなくて『笑ってはいけない』を観てればいいじゃん。俺は『笑ってはいけない』を録画してボクシングを観るけど。「内山高志と山中慎介がいるから日本は大丈夫」という根拠レスな思い込みが自分の中にあったりする。井岡一翔vsローマン・ゴンサレスは実現してほしいような実現するのが怖いような。
P.123より。
人間は社会的な動物なので本能的に横のつながりを求める。行列に並びたがるのも、周囲に付和雷同するのも同じ原理だ。共有しているものが共鳴に変わると、自分たちの盛り上がりが社会の総意であるような錯覚を起こす。
現代はその範囲が極度に狭くなり、かつ多様化している。『半沢直樹』も『あまちゃん』も実際に騒いでいるのはほんの一部なのかもしれない。
結局のところ、自分が乗れなかった流行を見下したいだけなんじゃ?と思われてならない。流行なんかに乗るのは「共通体験」を求めているからに過ぎないんだ、一部の人間が騒いでいるに過ぎないんだ、と。なんでもかんでもステマだと言い募る人をネット上でたまに見かけるが、デンマンさんも似たようなものなのかも。流行をわざわざ腐さずにいられない人の心中には流行に乗り遅れる恐怖があるのかもしれない、となんとなく感じた。
ラスト。P.123より。
鴨のローストが運ばれてきた。これは凄すぎる。蕎麦屋の鴨南蛮に載っている申し訳程度の鴨の5倍の厚さはある。それが20ピースほど。濃厚な赤ワインと辛子のソース。焼き野菜も添えられている。噛めば噛むほどに味が出る。
ラッセル君がため息をつく。
「こんな旨い鴨にはB級ドラマの話題は合いません。フェリーニやヴィスコンティでないと釣り合わない」
カッコいいなあ。イタリア映画といえばモンド映画とホラーくらいしか思いつかない俺とは違うね。もっとも、ドイツ人のラッセル君が何故イタリア映画推しなのかは謎。貴方の国のラングやムルナウやヴェンダースやヘルツォークではダメなのか。TVドラマに対して世界的な映画監督の名前をわざわざ持ち出すおとなげなさには「そんなの比較しようがないじゃん」と笑ってしまうけれど。「裏モノ日記」を読む限り、唐沢俊一は『ベニスに死す』が好きなようなので、「でしょうね!」と頷いてしまった。
以上。
流行を皮肉ったり批判する、それらの行為自体が悪いわけではない。流行に追随し体制に迎合してばかりではマスメディアの存在意義が失われかねないし、TV番組を「毒舌」「辛口」に批評するナンシー関になれなかった人たちの文章を週刊誌の誌面でよく見かけるところを見ると、流行批判に一定のニーズがあることは確かだろう。
したがって、流行に乗るか背くかというのはあまり大きな問題ではなくて、物事をいかに深く掘り下げるか、もしくは他では見られない斬新な見方を提供できるか、といった仕事がメディアには求められているように思える。その点、今回紹介した『東京情報』は、『半沢直樹』と『あまちゃん』を観ているか極めて疑わしいにもかかわらず「B級ドラマ」とこきおろすあたり、ある意味斬新ではあった。こんな斬新な文章を『週刊新潮』もよく載せたものだと感心しないでもない。
唐沢俊一=ヤン・デンマンと断定されたわけではないので、『東京情報』を毎回取り上げはしないが、今後も唐沢イズムを感じさせる回があればその際にはまた紹介したい。
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