『影なき狙撃者』の別題。
もうひとつタイトルがあるなんて知らなかったので、昔レンタルビデオ屋でVHSを見つけた時すごく驚いた(ヤフオク!よりLDのジャケット)。…でも、何故このタイトル?
とても面白い映画なんだけど、このシーンと岸信介の写真が出てくるところは笑ってしまう。
唐沢俊一の文章を見かける機会は今やあまりなくなってしまったが、週刊誌等でコメントしているのはわりとよく見かける。今回は自分が見つけたものを紹介していくが、唐沢はコメントやインタビューについてこまめに告知する方ではないので、実際問題唐沢のコメントを見つけるのはなかなか難しい。もしかしたら、自分が見逃しているものもあるかもしれないので、唐沢のコメントをどこかで見かけた方がいらっしゃったら、当ブログまでご一報していただけるとありがたい。
(1)まず、「ハピズム」で猟奇犯罪について語っている(その1、その2)。でも、「大柄」というだけで木嶋佳苗と角田美代子をいっしょくたにしちゃうのはいかがなものか。木嶋に関しては昔『婦人公論』でしていた話も参照。
僕の知り合いの女性声優が70㎏を超えちゃってね、「ダイエットします」って宣言したら、事務所の社長に「痩せる必要はない。もっと太って100㎏になれ」って言われたそうなんですね。「100㎏になると今までとは違うファンがつく」と(笑)。
違うファンって何かというと、童貞でなく、ヒッキーでなく、大人の、金回りのいいファンだと(笑)。声優のファンでもリア充になると、二次ロリの妄想から離れ、実質的な快楽を求める。するとデブ女にたどりつく。
「二次ロリ」から「デブ女」へと至る理屈がよくわからん。極端すぎやしないか。本当に「リア充」が「デブ女」好きならば、世の中はもっと違ったものになっていそうなものだが。それに、「デブ女」好きな男には破滅願望がある、とも唐沢は語っているが、木嶋の事件に関してはexcite.ニュースに違う話もある。まあ、途中で特に必然性も無く出てくる『用心棒』や矢追純一の話を見る限り、その場のノリで話している感じがアリアリなので読者も深く考えない方がいいのかもしれない。『用心棒』に関しては「あのシーンを観てそんなことを考えるかね?」と不思議な気分になった(ちなみに三十郎に助けられる百姓・小平を演じているのは土屋嘉男)。手塚治虫ほどではないけど、黒澤明もクサすなあ、この人。「耳年増に“名器”の話を聞かなくても…」と思ったのは内緒。
(2)『週刊現代』9月21・28日号の特集記事「昭和の性生活」に唐沢俊一が「作り物にない生々しさ、いかがわしさを今こそ味わおう」というコメントを寄せている。同誌P.199より。
昭和期に多数出された性愛告白雑誌の先駆けは、『奇譚クラブ』や『裏窓』などのSM系マニア雑誌です。『月刊スウィンガー』のような夫婦交換専門誌の投稿告白もそうですが、作り物には出せない、仲間を真剣に探す“生々しさ”がそこにはありました。
多様な性を自由に楽しむことこそ権利であると、誰もが思い始めた時代です。読者は、フィクションよりも、素人のリアルな体験を求めましたし、自らも積極的に投稿したんです。
デザインの美しさばかりを求める今の雑誌には見られない毒気やいかがわしさも、そんな素人くささに由来します。昭和の投稿雑誌には、熟成したワインのような滋味がありますから、レトロ・エロの郷愁に駆られて、再評価してみてはいかがでしょうか。
「昔を持ち上げ今を落とす」という唐沢俊一のスタイルがよく出ているコメント。「昔=いかがわしくてパワーはある、今=キレイなだけでつまらない」という思考法はデビュー以来一貫していると言ってもいい。狙っているわけじゃなくて、自然にそうなっちゃっているんだろうなあ。まあ、『熱写ボーイ』という平成の投稿雑誌に連載を持っていた人(何故かそれを公言していないが)がそーゆーことを言うのはどうかと思う。
ついでに書いておくと、「昭和の性生活」という特集自体にも疑問があって、「昭和」はひとくくりにするには長すぎるのではないか。記事の中で紹介されている投稿雑誌も「昭和37年」のものだったり「昭和63年」のものだったりする。25年も違うのに。
(3)『週刊新潮』7月11日号の記事「色情狂時代に警察が摘発した「超熟女風俗」最前線」に唐沢俊一が老人のセックスを持ち上げる風潮に批判的なコメントを寄せている。同誌P.129より。
また、「江戸から綿々と築かれてきた美学が崩れかねません」
と警鐘を鳴らすのは、評論家の唐沢俊一氏である。
「古来、日本には年齢を重ねて段々枯れていくことに美学を感じる文化がありました。『年寄りの冷や水』との言葉もあるほどで、横丁のご隠居は表にはしゃしゃり出ませんが、決して何もしないわけではなく、『乙な』『渋み』などの見事な価値を作り上げてきたのです。年をとれば体が衰えるのは当然で、性欲を表に出すのは野暮だとされていたところ、医学の発達で、“高齢者だからと楽しみを抑えるのは理不尽だ”という考えが広まり、往生際の悪い人が増えてしまいました」
さらには、そこから生じかねない事態も案じて、
「『歳をとっても浮気はやまぬ やまぬはずだよ先がない』という都々逸がありますが、先のない人間が性に狂うとトラブルのもとです。人間は本能を司る部分が脳の中心にあり、理性を司る大脳新皮質がその周りを覆っています。例えば若い女性とセックスしたいという煩悩は、中心の本能が指令するのですが、状況判断をして理性が止めている。これが加齢に伴い、脳の細胞数が、まず大脳皮質から減っていく。このため、本能が迸り、暴走が止まらなくなる危険もあるのです」
「性に狂うとトラブルのもと」なのは若者も同じだと思うが、唐沢理論だと老人はもともと性に狂いやすい存在である、ということになるのだろうか。
実は気になることがあって、この記事の中で唐沢の持ちネタである大岡越前の老母の話が出てくる(2012年9月6日および2012年10月16日の記事をそれぞれ参照)。それだけなら気にならないが、この号から2カ月後の『週刊新潮』9月19日号の『東京情報』第35回「いい加減にしろ“性愛特集”」でも、この大岡越前の老母の話が「私の日本人の友人の得意話」として紹介されている。…こんな短い間に立て続けに同じネタをやるなんて、『週刊新潮』は他誌の「老人のセックス」特集がよほど気に入らないようだ。なお、『東京情報』については5月30日の記事を参照されたい。細かいことだと、大岡越前の老母の話は「江戸から綿々と築かれてきた美学」に反しないのか?と思ったり。本能は「迸る」ものなのか。
(4)『週刊ポスト』9月13日号の記事「ド変態の大研究」に唐沢俊一がコメントを寄せている。この特集はサドル窃盗犯が捕まった(スポニチ)のがきっかけになっているそうだが、記事の最初にある煽り文句がなかなかふるっているので紹介したい。同誌P.152より。
200個の自転車サドルが並ぶ「証拠写真」には、問答無用のインパクトがあった。「盗んだバイクで走り出す」という歌詞なら聞いたことがあるが、「盗んだサドルでマスをかく」なんて話は聞いたことがない。この事件は、「ド変態」の一言で済ませてしまうには惜しい「人間の性癖について」の研究材料である。
誰が書いたかはわからないが、文才が無駄に光っているなあ。それはともかく、唐沢のコメントを見てみよう。同誌P.155より。
コラムニストの唐沢俊一氏がいう。
「今回の『サドル事件』もそうですが、においとフェティシズムは密接に絡みついている場合が少なくない。それは、記憶やノスタルジーは、においに触発されることが多いからです。
文豪・プルーストも、代表作の『失われた時を求めて』で、マドレーヌを紅茶に浸して食べるときの香りによって、子供時代の記憶が堰を切ったように甦るという描写をしています。サドル事件の犯人も、革のにおいと密接に結びつく甘美な記憶を持っているのかもしれません」
このコメントを読んでフランソワ・トリュフォーの『あこがれ』を思い出したり。
…我ながら古い映画ばっかり思い出すのはいかがなものか。
さて、気になったのはプルーストの話である。匂いをきっかけに過去の記憶が甦る現象が「プルースト効果」と呼ばれているらしいのだが、『失われた時を求めて』ではどのように書かれているのか。光文社古典新訳文庫の第1巻P.119、P.120より。
私の奥底でこうして震えているのは、たしかに、あの味と自らを結びつけ、味のあとをたどって私のところへと来ようとしているイメージであり、視覚的な記憶であるだろう。
そのとき突然、思い出が姿を現した。これは日曜の朝、コンブレーで(というのも、日曜日はミサの前には外出しなかったからだが)、レオニ叔母の部屋へおはようを言いに行ったときに、叔母がいつも飲んでいる紅茶か菩提樹のハーブティーに浸して私に差し出してくれたマドレーヌの味だった。見ているだけで味わうことがなければ、プチット・マドレーヌは私に何も思い出させることはなかった。
引用した以外にも「味」というワードがこの場面では何度か出てくる(ちなみに岩波文庫版では「風味」「味覚」という表記)。…つまり、紅茶とマドレーヌの味に主人公の記憶を呼び覚ます効果があったのは確かである。にもかかわらず、ネット上で「プルースト効果」を紹介している文章では何故か「匂いをきっかけに〜」という具合に記憶を喚起する要素として味を除外しているケースを複数見かけたので、どうしてそうなったのか疑問に感じる。はてなキーワードの「プルースト効果」では、
嗅覚や味覚から過去の記憶が呼び覚まされる心理現象。
と定義されていて、これが妥当ではないかと思う。唐沢から発信されたガセビアというわけではないが、気になったので書いてみた。
…こうして書いていて、今回取り上げた4つの事例が全部セックスがらみであるのに気づいた。出版業界では唐沢さんはそっち方面の専門家と認識されているのだろうか。
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