発禁バッキンガム。
「綾乃ちゃん、出版差し止められてもかわええな〜」
今日発売の『週刊現代』5月4日号の特集「スクープ発掘 無修正だった! 明治・大正・昭和の発禁本ベスト50」(P.172〜177)の中で唐沢俊一が大泉りか氏と対談しているので、今回はそれを紹介する(『ブンカザツロン』の続きはまた次回)。ちなみに、唐沢俊一のプロフィールは以下のようになっていた。
からさわ・しゅんいち/’58年生まれの劇作家・コラムニスト。演劇ユニット「世外今是」主宰。近著に『雑学プロファイル 日中韓お笑い不一致』(徳間書店)
あ、「世外今是」ってこないだの公演では名前が出てなかったけど、なくなったわけではないんだね。名前が出たり出なかったりする理由はよくわからないが。
対談の中身は、『週刊現代』編集部が選んだ「発禁本」50冊を読んで、唐沢と大泉氏が感想を言い合うというもの。気になった発言を対談の中から2、3取り上げる。
大泉 (前略)今は官能小説がコンビニや駅の売店で買えるし、それこそネットでいくらでも無修整の画像や映像が見られますよね。
唐沢 だから、猥褻なものを暗い部屋でこっそり見る楽しみも失われてしまった。欲望は、抑制されるから膨れあがるわけでしょう。何でも見られるようになると、欲望の希薄な草食系が増えてしまう。
大泉 『女礼讃』……いいですねえ。「女は詩だ」って書いてある。俺は女が好きだ! という情熱に満ち溢れています。
唐沢 僕は、今の若い子が簡単に命を絶つのはエロが足りないせいだと思うんですよ。『女礼讃』じゃないけれども、「生きるとはセックスだ」と知ることが大切なんだと思う。エロスは「生」の象徴です。
このへんの発言はどういう理屈になっているんだろうなあ。
エロいものが何でも見られるようになる→欲望が希薄になる→欲望が希薄=エロが足りない→簡単に命を絶つ
ということなんだろうか。だけど、今でも「痴情のもつれ」で事件が起こるのはよくあるしなあ。若い人がエロいことで頭の中を一杯にしているのは微笑ましいものがあるけど、50歳を過ぎて「生きるとはセックスだ」と言い放つあたり、さすが往年のドンファンと言うべきか。
唐沢 江戸から明治に変わると、西洋人が日本人の写真をたくさん撮ったんですが、「日本人女性は裸になることをあまり恥と思わない」と記述しています。
唐沢 もともと性に大らかだった日本人が、明治期に、こんなものがあると欧米に対して恥ずかしいからと発禁処分をとった。
そんな西洋道徳への抵抗の歴史が発禁本であり、そこには消し去りがたい「性への執念」が詰まっているんです。
上の発言を見ていると、唐沢俊一には一種の「江戸幻想」があるような気がする。
しかし、明治以前、江戸時代にも出版物の規制は行われていて、1722(享保七)年に出された出版取締令で好色本の発行が禁止されている(「浮世絵文献資料館」を参照)。
一 唯今迄有来候板行物之内、好色本之類ハ風俗之為ニモ不宜儀ニ候間、段々相改絶板可申付候事
権力が風俗を乱すものを規制しようとするのは、日本も欧米も同じということではないだろうか。
なお、この対談の様子は「つぶやき日記」4月17日分で書かれている。
2時ジャスト、タクシー使い講談社へ。45分着。現代編集部にて城市朗氏(原文ママ)コレクションの発禁本を見ながら官能作家の大泉りかさんと対談。古書コレクターとしてはヨダレの垂れるものばかり。10年前だったら興奮して頭がクラクラ来ただろう。城氏は現在90歳(不確か)だとかで、明治大学に蔵書数千冊を寄贈しているが、肝心の発禁本コレクションはまだ手元に置いているとか。対談が盛り上がったかどうか(楽しかったが)よくわからないが、編集者諸氏は満足してくれたよう。
城市郎氏は1922年1月生まれなので、現在91歳(明治大学図書館)。
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