唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

ブックスキャンの秘密。

 唐沢俊一ジンギスカン料理について何回もガセビアを書いているが(2008年7月19日の記事を参照)、そのガセビアは『トリビアの泉』でガセ認定されている。




 2月18日の記事のコメント欄でtさんに教えていただいたのだが(どうもありがとうございます)、BOOKSCANの公式サイト唐沢俊一のインタビューが掲載されている。…プロフィール欄に青山大学文学部卒業」とあるけど、青学じゃなくって青大?


※追記 現在では「青山学院大学文学部卒業」に修正されています。…このブログのせいか? 



 ちなみに、BOOKSCANの公式サイトには日垣隆のインタビューも掲載されていて、自身が主宰している英語塾のことなどを話しているが、インタビューによれば日垣の蔵書は7万冊あるとのこと。…唐沢にも言えることだが、やっぱり、いくら蔵書が多くてもそれだけじゃダメなのかもなあ。あと、イスラエル取材に40キロ分の本を持って行った」のには笑った。日垣は以前から旅行先に大量の本を持っていくのを自慢する癖があるが、自分にはただ単に整理ができていないだけ、としか思えない。「情報への作法」を本当に心得ている人ならもっと身軽に動けているだろうに。


 では本題に入る。最初にtさんのコメントにあった「唐沢さんの古本処分の話がまた設定が変わったようです。」というご指摘について考えてみたい。インタビューの中で唐沢は古本を処分するきっかけについて次のように語っている。

 今私が54歳で、本が読める時間というのは多分最長で見積もっても30年あるかないかということだと思うんですけども、その間に読める本の数というのを計算してちょっと減らそうと思ったんですね。本というのは買って読む楽しみのほかに、ためる楽しみ、探す楽しみというのがあります。で、私はどっちかっていうと探す楽しみと蔵書数を増やしていく楽しみに淫してきたという部分があるんですけども、大体普通の人が持っている4倍位の本を1回ごとに買う人間ですので、その蓄積というのは、かなり自分に対して圧迫になっている。もちろん本をたくさん買うというのも自分のアイデンティティーというか、外へのコマーシャルになっていて、「唐沢俊一ってこういう物書きだよ、本をとにかくたくさん持ってるよ」っていうキャラクターを裏切らないために本を買い続けた結果でもありますが、先ほど言った残り時間30年で、とても読み尽くせない本が自分の周りにまつわりついてる。で、あるとき、ふと気がついた。2万冊以上になると本を探して掘り出すまでに半日かかるんですよね。場所が分かっていても半日。ましてや分からないと1日、2日かかってしまう。この検索をすばやくしようと思うと、専任の整理係を雇わないといけない。それがね、Amazonなんかで買うと翌日届くんですよ。古書でも2、3日中には届く。アメリカから注文した時も1週間かからず届いたことがあります。書庫で汗みどろになって探すよりもはるかに早いんですよ。ということは世界中のAmazonを使えば、世界の蔵書が全部自分の図書室になる。読み終わった後また売っちゃえば良いんですからね。もちろんなかなか手に入らない貴重な本はありますから、例えばAmazonのユースドの出品数が3件以下になったものは自分で持っていようとか決めたりしました。自分の蔵書をいったん古書の海の中に戻して、本当に必要性のあるものを探して、ちゃんと最初から読むために買って、面白さというのを確認して死んでいきたいような、そういう心境になってますね。


 一方、『博覧強記の仕事術』(アスペクト)P.98〜100には次のように書かれている。

 私は最近書庫の大整理をしたのだが、これは一〇年前から考えていたことだった。自分の蔵書が一〇年前に二万冊を越え、そのあたりから、書庫のどこにどの本があるのかまったく把握できなくなった。それからも本はどんどん増えていき、処分する直前は三万冊はあった勘定になるから、もう何が何だかわからない。

 知り合いの蔵書家で、蔵書歴が二〇年以上という人間たちに聞いてみると、大抵が、すでに蔵書数が増えすぎて、読みたい本があっても、山の底に埋もれてしまって出て来ないという。では、どうしてもその本が読みたい、必要だというときはどうする、というと、皆異口同音に“もう一冊新しく買う”と答えたものである。(後略)

 私が本を始末しよう、と決心したのはそのときからである。ネット書店の発達により、欲しい本は古本であれ新刊であれ、北は北海道、南は沖縄の書店の目録から瞬時にして探し出すことが出来、しかもクリック数回で売買が成立、遅くとも数日以内には手元に届く。(後略)


 比較すると、蔵書が増えすぎて把握しきれなくなった→その対策としてネットを利用することにした、という流れは一致している。『博覧強記の仕事術』にある蔵書の整理を「一〇年前から考えていた」というくだりが興味深いが、ただ、「本をたくさん持っている」というキャラクター作りをしていたのに、上で書いたように日垣隆蔵書数であっさり負けているあたりはなんともせつない思いをさせられる。そもそもプロのライターの蔵書数として「2万冊」というのは多い方なのだろうか、そこから考えてみる必要もあるのかもしれない。蔵書家はみんな整理ができないのか?という疑問を抱いてしまうけれど。


 …しかしながら、『中州通信』2008年1月号のインタビューも見てみると、唐沢の蔵書整理計画には実はかなりの深謀遠慮があったことがうかがえてくる。

 いま計画があるんです。岡田斗司夫がダイエットしたじゃないですか? 僕は蔵書をダイエットしようと思っているんですね。ネット時代ならネット時代なりの蔵書のダイエットが必要だと思っているんです。(後略)

 これに関連して、『ラジオライフ』2007年12月号の近況欄には、

引っ越しを計画。ただし、2万冊以上の蔵書を整理しての引っ越しのため、1年がかり。その引っ越しの模様はドキュメントにして単行本にします。

 とある。つまり、唐沢は蔵書の処分をイベント化しようとしていたわけである。『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)がベストセラーになったのに影響されているのが微笑ましいが、岡田斗司夫のダイエットと比べると、蔵書の処分にどれほどのインパクトがあったのかどうか、正直疑問である。下手をすればワイドショーでよくやっている「片づけられない人たち」同様に扱われるおそれもあったのでは。だが、結局「引っ越しの模様」をまとめた本は今のところ発行されておらず、唐沢の蔵書の一部はロフトプラスワンのイベントで投げ売り同然に処分されている(2008年11月26日の記事を参照)。これが「ネット時代なりの蔵書のダイエット」なのだろうか。かつて「古本マニア」を名乗っていた人の振舞いとしては悲しいものがある。
 

 もうひとつ指摘しておこう。『博覧強記の仕事術』P.99より。

二万冊になるまでは、ある程度、どの本がどこにあってということは把握していたし、使って書庫の棚が乱れても、また同じところに戻すことができた。
(中略)
ところがそれを越えた途端、新しい本をどこに置くのかということどころか、古い本がどこにあったかということまで、まるで記憶できなくなってしまった。つまり、二万冊で私個人の脳の本の“書棚での位置記憶力”のキャパシティを越えてしまったということになる。


 ところが、前出の『中州通信』のインタビューには以下のように語っている。

いま、ネット古書店というものがこれだけ拡がって、インターネット書店を使えばほとんどのものは二、三日で届くわけですよね。それを仕事の資料として使って、使ったらまたネット古書店に戻すというサイクルを使えば、北海道から沖縄の書店までが自分の本棚になるわけですよ。どうせ自分の書庫で資料を捜しても半日、一日閉じこもらなければ出てこないわけですしね。そうすると自分の手元はすごく軽くなる。蔵書というのは一万冊、二万冊が限度なんですよ。私ね、一万冊まではどこに何があるかわかっていたんですが、10001冊目からまったくわからなくなった(笑)。これが記憶力の限界ですね。


  …はたして、唐沢俊一の「書棚での位置記憶力」は1万冊なのか2万冊なのか。まあ、ハッタリなのは見え見えなのでわざわざ考える必要も無いのかもしれないが。


 BOOKSCANのインタビューでその他に気になった部分をいくつか取り上げておこう。 


 

ただ、私はネットで、ブログに日記なんかかなり上げてるんですけれども、例えばある人物のことについて、「あいつはこういうだめなことがあって、でもそこが良いんだよね」っていう風に書くと、ネットの人たちって「そこが良いんだよね」まで読んでくれないんですよ。悪口があったら、この唐沢という人間はこの人間が嫌いなんだろうと次の項目に移っちゃうんですよね。やっぱりネットで本を読むとかネットの文章を読む人間というのは、情報の速さとかを尊びますし、溢れんまでの情報量があるので、行間を読む作業をしない。表面に出ている意味しか取らない、とも感じています。

ネットでよく炎上とか、バトルが起きるっていうのも、そのネットの文章というのはすぐ脳の奥の所に行っちゃうらしいんですよね。読み違いだとか意味の取り違いも含めて、そのまま反射的に次に自分がレスポンスを返すということになってしまう。紙で文字になったものはアナログなんですよ、やっぱり。アナログを脳の中で一度変換するという作業がある中で、冷静になれるっていう部分がありますよね。


 ネット上で「炎上」が起こるのは異論に対してすぐにリアクションが取れてしまうからではないだろうか。紙に反論を書くとどうしても時間がかかってしまうわけで、ネットと紙とで読解力が違ってくるわけではないと思う。この発言からは「ネットユーザーには読解力がない」という考え方が感じられるが、唐沢俊一こそネット上の情報をそのままコピペする前に、よーく吟味する必要があったのではないか。どんなに細部を変えようとコピペはバレるんだからね。

特にネットのヘビーユーザーたちっていうのは、この世の中のものはただで読めるっていう思っているところもあるようです。ですからどうやってその代価を得るかですよね。その告知というものを、徹底しなきゃいけないということになりますよね。


 …まあ、雑学やらエスニックジョークやらをネット上から拾って本にした誰かさん「この世の中のものはただで読める」と思っているのかもしれませんね。っていうか、「ネットのヘビーユーザー」は貸本漫画や昔の雑誌を無断で復刻したりしないから、唐沢俊一フリーライダーっぷりはやはり際立っていると言わざるを得ない。唐沢俊一『まんが極道』第65話「泥棒くん」(第6巻に収録)を読んでおくように。




私は自分の劇団をもってるけど、例えば、ばかという言葉には100通りの飛ばすやり方、受け取り方がある訳ですよね。泣きながら女の子が「バカバカバカ」って言うのと、私が「ばかっ」という風に言うのとでは全く意味が違う。でも字でばかって書くと同じ。小説では、どっちのばかなのかなと思わせる。「このばかは愛情を込めたばかだった」と書いたら、それは文学にならないのであって、直接説明しないで暗喩、隠喩、比喩で、どういう意味のばかかというものを説明しなきゃいけない。そこを読んでくれない人たちっていうのは、これから読者にどんどん増えてくるでしょうね。ある意味そういう読者に特化した文章を書く小説家、ライトノベルなんかはそういう人が多いですね。今ライトノベルがどんどんと売れている。売れてる小説ってライトノベル位しかないとまで言われている時代です。なぜかと思って読んでみると、なるほど、裏も表も全くない。ざあっと流して読んでいって、本当に電子データと同じようなスピードで読める様な文章を書いてる作家さんが売れてるんですよ。昔は読みのうまいやつとかプロになる程の評論、小説読みのプロというのがいた訳ですよね。それはいかに文章の裏を読めるかという能力があるかということでもあったと思うんですけども、多分そう言う意味で書評家みたいなのも絶滅するんじゃないのかな。最低レベルの人が読んで理解出来る分かりやすさっていうのが今の小説家、作家さんに求められちゃうので。

 唐沢俊一の劇団の次回公演は4月に決まったようだ(小劇場楽園ラインナップ)。「世外今是」ではなくて唐沢俊一&DreamVoice」になっている。また取っ払いなんだろうか。私は観に行けないが頑張ってほしいものだ。
 で、ライトノベルに関してまた批判めいたことを書いているが(2012年3月12日の記事を参照)、いったいどんなラノベを読んだんだか、と思うばかり。ただ、「つぶやき日記」2012年12月25日分には次のような記述がある。

18日にはイラストレーター・依光隆氏死去、86歳。もちろんペリー・ローダンシリーズの挿絵が有名だが、われわれ世代にとってはジュブナイル小説の挿絵画家であって、それこそ空気のように氏の絵に毎日接しながら育った。盛光社のジュニアSFシリーズ、筒井康隆の『時をかける少女』も光瀬龍の『夕ばえ作戦』も眉村卓の『なぞの転校生』も依光隆だった。講談社の少年少女科学名作全集の『宇宙紀元ゼロ年』、『死の金星都市』なども依光隆。最近のアニメ・マンガ絵とは全く違う、本文の内容の邪魔をせず、かつ、主人公のビジュアルイメージを読者が思い描く手助けをするという、本来の挿絵の役割をきちんと守った、折り目正しいペン画だった。氏の描く、清潔感あふれる中学生・高校生の男女の描写の、なんとさわやかだったこと!


 どうも、いかにもありがちなラノベに偏見を持った人」でしかないような。読まなくったってこれくらいは言える、という程度の話。山本弘会長のお話と比べるのも失礼かな(その1その2)。ラノベも今風のアニメ絵も気に食わないのならオタク関連の流行についてコメントするのはやめておいた方がいいんじゃないかなあ。
 あと、横田順彌『日本SFこてん古典』のタイトルを間違えているのを見つけたり。「と学会」の誕生にも関わっている本なんだけどね。



 ネットユーザーやライトノベルナチュラルにクサしているのには「相変わらずだなあ」と苦笑させられたが、唐沢俊一の著書だけでなく、単行本にまとめられていない文章もどんどん電子化してほしい。検証に当たって資料探しに本当に苦労させられたので。


タコシェで既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』『唐沢俊一検証本VOL.2』『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』『唐沢俊一検証本VOL.3』『唐沢俊一検証本VOL.0』「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。タコシェの店頭でも販売しています。
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