転載B級本。
・タコシェで既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』、『唐沢俊一検証本VOL.2』、『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』、『唐沢俊一検証本VOL.3』、『唐沢俊一検証本VOL.0』、「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。タコシェの店頭でも販売しています。
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karasawagasepakuri@yahoo.co.jp
新年あけましておめでとうございます。今年も「唐沢俊一検証blog」をよろしくお願いいたします。
自分は冬コミには行かなかったのだが、唐沢俊一のブースにはこんなポップがあったらしい(マドさんのtwitterより)。夏コミの偽札事件は警察に届けているんだから、もう既に容赦してないじゃん、と思ったけれど。
さて、唐沢俊一の冬コミの新刊『B級読み物がいく!―昭和B級雑誌記事拾い集め―』を入手したので、今回はこれを紹介しておこう。
『B級読み物がいく!』は、「雑誌の黄金時代」に出版された雑誌の中から唐沢俊一好みの記事をピックアップして、「取り合わせの妙」を狙ったものであるらしい。なお、唐沢言うところの「雑誌の黄金時代」とは終戦直後から1970年代を指す模様。
タイトルを見ればすぐにわかるはずだが、この本は2009年夏に発行された『B級雑誌がいく!!』と同じテーマを扱っている。『B級雑誌がいく!!』の問題点については藤岡真さんが指摘されているが、『B級読み物がいく!』も同様に著作権をクリアーしているのかどうか疑わしいところである。『さぶ』の林月光(石原豪人)のイラストのような比較的メジャーなネタも扱われているが、豪人先生のご遺族やサン出版には許可をとったのだろうか。
ただ、『B級雑誌がいく!!』と『B級読み物がいく!』にはいくつか違いもあって、まず気づくのは、読み比べると最新刊の方の紹介文がかなりウスいことである。COMIC ZINととらのあなの紹介コーナーにあるサンプルをそれぞれ見比べれば文字数の違いは一目瞭然だ。自分は「唐沢さんには長い文章を書く体力が残っているのだろうか?」と常々気になっているのだが、こうなるといよいよ心配になってくる。まあ、『日中韓お笑い不一致』が書けたのなら大丈夫だとは思うものの。ともあれ、紹介文と転載されている雑誌の記事の分量が釣り合っていないように感じた。ページ数で単純に考えても紹介文と転載された記事の比率が1:3だからなあ。
もうひとつの違いは、紹介されている雑誌の重複の有無である。『B級雑誌がいく!!』で紹介されている雑誌には重複は無く、『奇抜雑誌』の記事は何回か紹介されているが全部違う号の記事が紹介されている。一方、『B級読み物がいく!』では、『奇想天外』1974年1月号と3月号の記事が2つづつ紹介されていて、さらに『黄金』1955年9月号からは5つもの記事が紹介されている。…『黄金』1955年9月号はそれほど面白い号だったのだろうか?と思ったが、同じ雑誌に偏ったまとめ方では唐沢が狙った「取り合わせの妙」は出せないのではないか。それから、『奇想天外』からは1974年4月号と5月号の記事も紹介されているので、『奇想天外』のみをテーマにして1冊の本にすればいいのに、と思ったりした。ウスい自分でも名前くらいは知っている雑誌なのだから、ニーズはあるのでは。
ところで、『B級読み物がいく!』にはミスがあって、唐沢俊一も公式サイトでお詫びしている。
ここで、販売物内容のミスについてご報告とお詫びを申し上げます。
『B級読み物がいく!』中、『少女をシチューにして食べた瘋癲老人』の記事で、タイトルの“瘋癲老人”を“癲癇老人”と誤読の上、執筆したコメント記事を掲載してしまいました。
急場の編集作業で、出先で携帯の小さい画面でスキャン画像を確認しつつ書いた原稿のため、細かい文字の確認に誤認があった結果です。
当該コメントの内容はその誤読に基づくもので、意味がとれないものになっております。
当該コメント記事に関しては削除扱いとし、訂正させていただきます。根拠のないコメントを付された元記事の編集者様、及び元原稿執筆者様にお詫び申し上げます。
要するに「瘋癲」と「癲癇」を読み間違えてしまった、ということなのだが、「出先で携帯の小さい画面でスキャン画像を確認しつつ書いた原稿」というのがよくわからない。どんな状況で執筆していたのかも気になるが、ちゃんと記事を読んでいるのにそんなミスをするのだろうか?とも思う。なお、「Monokoto Grocery」で、「少女をシチューにして食べた瘋癲老人」の一部が確認できるが、PCだとちゃんと「瘋癲」と読める。
では、唐沢がどのような紹介文を書いているのか、以下に引用してみる。『B級読み物がいく!』P.63より。
少女をシチューにして食べた癇癲老人
「癇癲老人」は「てんかんろうじん」と読ませたいのだろうが、「てんかん」は普通「癲癇」と書く。読みから言っても「癇癲」は間違いである。……ワープロがなく、原稿が手書きだった時代ゆえのミスであり、かつ、プロの翻訳家も編集者も、これを誤植と気がつかなかったということは、この癲癇という字が、文字そのものの意味より、「とにかくやたら画数の多い漢字」としか認識されていなかった証拠である。後の実録猟奇ブームのさきがけのような記事であり、筆者の小鷹信光氏はハードボイルド翻訳者として名高い人物で、あの東浩紀氏の義父である。そして、同じ『奇想天外』誌に記事を書いている紫藤甲子男氏らと共に、パロディ創作集団「パロディ・ギャング」を結成していた。第一期『奇想天外』が彼らのセンスで作られていたことは確実のようである。
奇想天外 昭和49年1月号(創刊号) (盛光社)
この紹介文に続いて、「少女をシチューにして食べた瘋癲老人」の全文が3ページにわたって転載されているわけだが…、なるほど、これは「意味がとれない」わけだ。まさか、唐沢さんが「瘋癲」を知らなかったはずはないと思うけれど。
それにしても、だ。この紹介文に関して気になる点が2つある。ひとつは、仮に「癲癇」がひっくりかえっていたとしても、それってそんなに面白いミスなのか?と、かつての『ゲーメスト』読者としては思わざるを得ない(「覚醒都市DiX」を参照)。誤植の世界の奥深さ、確かみてみろ! 「ゴジラ空耳事件」というのもあったな。
もうひとつ、この「少女をシチューにして食べた瘋癲老人」という記事はアルバート・フィッシュの事件(おなじみ「殺人博物館」を参照)を簡潔に紹介した良い記事なのに、それについて「猟奇好き」「鬼畜」な唐沢俊一が興味薄なのも気になる。なお、記事の中にはフィッシュが癲癇だったという記述は出てこない。…とはいえ、ミスを認めてすぐにお詫びしたのは良いことだし、自分も他人の著作を検証している身なので、気をつけていきたいとあらためて感じた。
他に気になった点としては、P.72〜75で紹介されている竜伸太郎『復讐への招待』は、かつて『漫画についての怪談(アヤシイハナシ)』で取りあげたのと同じネタであるということ。
水木しげるキャラのメガネデッパのパクりキャラ(メガネはかけていないが)が登場。
と書かれているが、このくだりについては藤岡真さんのブログを参照されたい。
あと、P.81〜82の「ジュースをらっぱ飲みする豆神様」の引用元が、
奇譚クラブ 1955年1月号(特別増大号) (曙出版?)
となっていたので、出版社にクエスチョンマークがつくってドユコト?と思って『奇譚クラブ』1955年1月号の目次を見てみると(「懐かしき奇譚クラブ」を参照)、「ジュースをらっぱ飲みする豆神様」は載っていなくて、その代わりに何故か『B級読み物がいく!』P.83〜85で紹介されている「人工女性『松平多恵子』との会見記」のオリジナル記事を発見してしまった(『奇譚クラブ』P.132〜135)。「人工女性『松平多恵子』との会見記」は『B級読み物がいく!』P.83では、
風俗科学 昭和30年2月号(第三文庫)
から転載されたことになっているので、ますますドユコト?と首を捻ってしまった。それに「ジュースをらっぱ飲みする豆神様」が結局どの雑誌に載っていた記事なのかもわからない。…あ、でも、『奇譚クラブ』1955年1月号が曙書房から発行されていたのは確認できたのでその点はよかった。他に気づいた点があれば追記していく予定。
…唐沢俊一は今後も昔の雑誌から記事を転載した同人誌を作っていくのだろうか。蔵書が2万冊もある人ならそれも簡単なのだろうが、あえてリクエストするならば、ひとつのテーマに絞った本を作ってほしい。たとえば、『B級雑誌がいく!!』『B級読み物がいく!』で共に取り上げている秋吉巒をテーマにするとか。
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