唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

ラピス・サギーは賢者の石ですか?

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 唐沢俊一が「NO&TENKI商会」で発行している同人誌がDLsite.comでダウンロードできるようになった。気になるのはその中に『風狼太郎がゆく!』が入っていることで、この本が復刻にあたって著作権の処理を十分にしていない疑いがあるということは2010年12月31日の記事で指摘している。
 また、つい先月の話だが、DLsite.comは『プラトニックチェーン』を原作者の渡辺浩弐に無断で有料配信していたとして渡辺氏の抗議を受けて配信を取りやめている(ガジェット通信)。著作権にルーズな人たちはスタンド使いのように引かれあうのだろうか。



 本題。フィギュア王』№95(2005年12月発売)に掲載された唐沢俊一のトンデモクロペディア』第9回「錬金術はスカトロ術?」にはネットからのコピペが見られるので逐一指摘していきたい。ひとつめ。

(前略)現に、ワインを蒸留して得られた液体(要するにブランデー)のことを、昔の人は賢者の石であると信じていた。
 ワインがキリスト教の儀式においてキリストの血とみなされる、ということはご存じだろうが、このキリストの血を蒸留器にかけ、その精気を集めたのが、無色透明な液体であるブランデー(ブランデーが茶色なのは熟成用の樽の木の色である)であって、これが聖なるものとみなされたのは当然である。また英語の話になるが、蒸留酒のことを英語ではスピリッツ(精霊)と呼ぶ。さらに言えば、このスピリッツのことをアラビア語でアル・イクシルと呼び、イクシルとはまさに“賢者の石”という意味なのである。


「正太郎の部屋」(2000年6月13日更新)より。

何しろ、蒸留器に入れる前のワインは、キリスト教信者にとって”キリストの血”と認識されていたのである。そのキリストの血を蒸留した無色透明の液体を得たとき、それはキリストの血がいったん昇華して、その精髄を凝集した霊液と見なすようになったのは当然の帰結ではないだろうか。そして、その凝集した霊液はラテン語でスピリト(Spirit)と呼ばれるようになる。

さらに、この蒸留された霊液は、アラビア語で、アル・イクシルとも称された。アルは前にも述べたように定冠詞。イクシルは、錬金術師達が求めた賢者の石のこと。その時代、ワインを蒸留した液体は、賢者の石の一種とみなされるようになっていたらしい。このアル・イクシルと言うアラビア語が、イリクシル(elixir)というラテン語になってキリスト教徒にも伝えられた。このエリクシルと言う名詞は、のちにリキュールの世界でも重要な役割を果たす用語となり、現在でもある種のリキュールのラベルには、このエリクシルと言う表記が使われている。


 これは「コピペ」というより「モトネタを上手く処理できていない」と言った方がいいだろう。唐沢俊一もだいぶ書き足しているので単なるコピペと考えるのは妥当ではない。とは言うものの、ネタ元の「その精髄を凝集した霊液と見なすようになったのは当然の帰結ではないだろうか」「これが聖なるものとみなされたのは当然である」と書き換えつつ持ってきたのはいただけない。だって、情報だけでなく「正太郎の部屋」の管理人氏のものの見方までも持って来てしまっているわけだからね。『新・UFO入門』で「漫棚通信」さんのツッコミをそのまま持ってきたのと同じ。プロが独自の見方を示すことなく他人に乗っかるのはマズいのではないか。能力の問題としてもプライドの問題としても。
 もうひとつ気になったのは、ネタ元にある「イクシル」→「イリクシル」の流れをカットしていることで、「イリクシル」だとピンとこない人でも「エリクサー」と読めば「FFに出てくるアレか!」と気づくのではないだろうか。ゲームだとよく出てくるアイテムだしね(『GOD EATER』にも出てきた)。まあ、唐沢さんはTVゲームをやらないようだからわからなくても仕方ないが、いいネタをスルーしているのがなんとももったいない。雑学を集めている人は興味を広く持たないとダメなんだろうなあ。


 ふたつめ。

 とはいえ、いくら卑金属をブランデーに漬けておいても金になるわけもない。錬金術師が探し求めていた賢者の石は別のものであるらしい。一説では賢者の石とは黄血塩(フェロシアン化カリウム)のことであるという。この黄血塩は家畜の血や皮から膠を採取する際に副産物的に製産される物質で、金メッキに使う。硫酸に黄血塩を溶かした溶液に金を混合し加熱すると、金が溶液に溶ける。この溶液中に卑金属を漬け、銅線をつないで微弱な電気を送ると、表面に金が固着する。いわゆる電気メッキだ。錬金術が金メッキに変わったわけで、ちょっと情けないが、先ほども書いたとおり、家畜の血から出来るので、ラテン語で血の石、すなわちラピス・サンギーと呼ばれていた。このサンギーという語が、さまざまに伝わるうちサギー(賢い者)に変化し、そのサギーがやがてフィロソファーになったのではないか、という。確かに説得力のある説である。


 テキスト系創作メールマガジン文芸同人「主婦と創作」2004年9月11日号より。

一説に賢者の石とは黄血塩(フェロシアン化カリウム)のことであるともいう。
この説によると、黄血塩は家畜の血や皮から膠を採取する際に副産物的に製産されるため、「血の石」(ラテン語:ラピス・サンギー)と呼ばれていたが、諸方に伝わる課程で音韻誤訳(聞き間違いのうえの翻訳間違い)され「ラピス・サギー(賢人の石)」となり、その言葉の意味が一人歩きし、最終的に「lapidis philosophorum:ラピス・フィロソフォルム(哲人の石:賢者の石)」に変化した…のだという。
確かに黄血石は、非金属に金の輝きを持たせることができる物質である。
硫酸に黄血塩を溶かした溶液に金を混合し加熱すると、金が溶液に溶け込む。
ここに卑金属を漬け、銅線をつないで微弱な電気を送る。
すると、表面に金が固着する。電気鍍金である。
黄血塩によって非金属が「金の輝き」を得るのは、紛れもない事実ではある。
(古代〜中世という時代にその技術を利用できたかどうかは別として……)


 これはモロだ。ジョルジオ・モロダー。モロすぎて特に言うことがない。見れば分かる。「サンギー」→「サギー」はともかく、「サギー」→「フィロソファー」はだいぶ強引な気もするが…。


 みっつめ。

16世紀のイングランドにあった硝石醸成場では人の糞便、酒飲みの尿、カラスムギを餌にする馬の糞を集めて煮込み、それを石灰と混ぜ、一年の間、二週間に一度よくかきまぜて硝石(壁や床のレンガの上に付着する)を得たという。まさに錬金術的な作成法だ。


 「戦術の世界史」より。

16世紀のイングランドにあった硝石醸成場では、硝石の原料として、人の「糞便」、酒飲みの「尿」、カラスムギを餌にする馬の「糞」、「石灰」、「生石灰」、「カキの殻」を使用していました。これらの原料を一定の温度に保って乾燥した環境に保存します。このすごい臭いの堆積物を2週間に1度の割でよくかきまぜるということを1年間続けると、壁や床の煉瓦に白い硝石がくっつき始めました。


 これもモロだ。ジョルジオ(以下略)。この「戦術の世界史」の文章がいつ書かれたものなのかはわからないが、別のサイト2002年7月18日に引用していることはわかるので、『トンデモクロペディア』より先に書かれたことは間違いないものと思われる。


 この後、七会静『ハリー・ポッターの魔法ガイドブック』(主婦と生活社)から「賢者の石」の製法を140字にわたって引用して文章を締め括っている。どうせネットからコピペするくらいならば、入手困難な本から「賢者の石」について引用しまくればよかった、とも思える。『ハリー・ポッターの魔法ガイドブック』が当時入手困難だったかどうかはわからないけれども。「古本マニア」で「裏モノ」に通じた唐沢俊一なら錬金術関連のレアな本をかなり持っていそうな気もするので、どうしてここまでネットからツギハギしたのか理解に苦しむところである。



 最小限の労力で文章を仕上げられることを考えると、コピペはある意味錬金術と言えるのかもしれない。もっとも、それが発覚したときに失われるものは計り知れず、やはりライターも等価交換の原則からは逃がれられないのだろう。


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