唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

『トリビアの泉』のつくりかた。

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 噂の真相』2003年12月号P.80〜84に掲載された『今年の「流行語大賞」も囁かれるフジテレビ「トリビアの泉」の舞台裏』という記事は、『トリビアの泉』がスーパーバイザーである唐沢俊一の著書をネタ元にしていること、唐沢の公式サイトにあった「一行知識掲示板」に投稿されたトリビアを元にしていたにもかかわらず、番組への投稿を採用していたかのように装っていたこと、などを指摘したうえで、フジテレビの「金儲け主義」を批判した内容になっている。
 この記事に関しては「トリビアの泉の歩き方」をかなり参考にした形跡があるが、その他にも鶴岡法斎氏に取材するなど(「裏モノ日記」2003年10月28日)、だいぶ唐沢サイドに近い見方がされている。ただし、もちろん相違点も存在する。
 一例として、「番組の制作の経緯」を比較してみよう。『噂の真相』2003年12月号P.82,83より。

「元々、この『トリビアの泉』は、唐沢俊一の本を見たプロデューサーが、当初、唐沢俊一の司会で無駄知識を語るトーク番組として企画。唐沢本人も了承していたことで、当然、この2冊(引用者註 『トンデモ一行知識の世界』『トンデモ一行知識の逆襲』)からネタを使うことが決まっていたようです。ところが、放送直前、紆余曲折がありまして、唐沢の出演は流れてしまい、ネタを提供するスーパーバイザーとして番組に協力することになったらしい(後略)」

「番組の企画段階の時プロデューサーは、番組と唐沢の本をリンクさせた深夜番組を作りたいと、唐沢に司会を依頼してきたといいます。ところがその直後、突然、唐沢との約束を反故にして『視聴者からの投稿スタイル』に変更してしまった。しかもネタは当初の予定通り、唐沢が提供するよう、つまり、本やHPからの引用を認めてほしいと頼んできたらしい。唐沢は仕方なく月100万円で手を打ったみたいです」


 「月100万円」に関しては後述。次に、唐沢の証言を『文筆業サバイバル塾VOL.04』P.20より紹介する。

(前略)一番最初は私があの番組のタモリの位置で出るということでしばらく話をしていたんだけれども、そのうち「唐沢さんではまずいんじゃないか」ということになった。
 それは私がテレビ向きじゃないとかそういう意味じゃなくて、つまり、あの番組はタモリさんも含めて全員が「へぇ」「へぇ」「へぇ」と感心する番組なんで、「何でも知ってるよ」という人がいちゃこまるわけです。知ってるのは当たり前で、本の著者ですからね。で、司会はもう既に決まってるわけなんで、「何か隣で枠を作れませんかね」っていろいろ粘ったんですけども、結局「今回はネタ出しだけで」ということで(後略)


 『噂の真相』では「司会」だったのが、『文サバ』ではタモリの位置」となっている。しかし、唐沢の証言の中のフジテレビ側の言い分は実にもっともで、ご意見番的なポジションを置いていたら『トリビアの泉』の大ヒットはなかったのではないか。


 これに対して、SPA!』2003年9月16日号掲載の『エッジな人々』で、『トリビアの泉』の宮道治朗プロデューサー、木村剛塩谷亮ディレクターが語っている『トリビアの泉』制作秘話は以下の通り。P.129より。

塩谷 (前略)僕と木村と、それぞれ別に企画を出せという話がきたんですが、相談しようと思った構成作家(引用者註 酒井健作氏)が一緒だったんです。で、結局2人でやることになって、その作家と3人で飲みに行った。そのときに作家が「電話ボックスがガラス張りになったのは、中で立ちションするやつがいるからだ」って言うんです。その話聞いたときに、これはイケると思ったのが最初ですね。

宮道 僕のところに上がってきた企画書の表紙は「へぇ〜ジュウゴ」って書いてあったんです。まあ、ビートルズの「ヘイジュード」に掛けてるんですが。で、何だこりゃと思ってめくると、番組でやってるような雑学が書いてあって、それを深夜の30分の中で15ネタ紹介するから「へぇ〜ジュウゴ」という、えらい脱力した企画書。確信犯というか、彼らなりのセンスがあったんでしょうね。面白そうだけど大丈夫かなというのもあって、僕の経験則も踏まえて話し合って、今の形になった。

宮道 番組の奥行きを出すために、評価があったほうがいいんじゃないかとか。視聴者の代表としてスタジオに品評員がいらっしゃって、俺はあの人と同じ感覚だ、俺はこっちのトリビアの方が面白い、という見方をしてほしい。そういう番組作りの経験則で後押しさせてもらいました。あと「何々は何々である」って言われて、確かに「へぇ〜」とは思うけど、本当かどうかうさん臭い話もあるわけで。テレビって、百聞は一見にしかずの媒体ですから、必ず証拠の映像を流すことを番組の決まりにしました。この番組は真実しかやらないというルールを作ったから、視聴者に受け入れられたとも思います。

 『トリビアの泉』が、木村・塩谷両ディレクターの企画「へぇ〜ジュウゴ」が元になっていて、それを宮道プロデューサーたちがブラッシュアップしていったという話は吉田正樹プロデューサーもしている(2010年8月29日の記事を参照)。また、『トリビアの泉』には若いスタッフを育てる目的もあったことは、宮道・吉田両プロデューサー共に明言している。…って、『SPA!』のインタビューと『噂の真相』の記事とでは番組がスタートした経緯が全然違っているんだけど。どうしてそうなった? それでも、『噂の真相』の記事や『文サバ』での唐沢の証言となるべく矛盾しないように考えると、「『へぇ〜ジュウゴ』の段階では唐沢俊一が司会(ご意見番)として考えられていたが、品評員を置くことになって唐沢の出番は消滅した」という感じだろうか。なお、『SPA!』のインタビューでは唐沢俊一の名前は一切出てこない。あと、『噂の真相』の記事はやっぱりだいぶ唐沢寄りだ。フジテレビを批判するためにそうなったのだろうか。
 宮道プロデューサーのコメントで特に重要なのは、「この番組は真実しかやらない」という部分で、これは「雑学はアヤシゲなところが魅力」とする唐沢の考えとは全く違っていて、この点を唐沢がどう考えていたか気になるところである。


 一方、「スーパーバイザー料」に関して唐沢俊一は『噂の真相』の記事を否定している。まずは『噂の真相』P.82より。

「ちなみに唐沢俊一のスーパーバイザーとしてのギャランティは、制作費の安かった深夜番組時代に契約したので月100万円。1回当たりの値段は25万円。唐沢ネタは全体の20%を超えていますが、2億円近い印税のあった番組本の印税は一切、払われておりません。また、制作費が10倍にハネ上がったゴールデン枠で構成作家や出演者のギャラは倍増する中、スーパーバイザーだけはギャラは据え置き。『へぇ』を叩くだけで1本400万円ももらっているタモリのギャラのわずか16分の1にすぎません」

 唐沢俊一「月100万円」について曖昧なリアクションをしていて(「裏モノ日記」2003年10月11日)、『社会派くんがゆく!』でも『噂の真相』の情報を否定している。『社会派くんがゆく!死闘編』(アスペクト)P.261〜262より。

唐沢俊一は『トリビアの泉』のスーパーバイザー料をフジテレビから月百万円もらってる」って、どこから出たんだ、そんなウワサ!

責任とって、実際のギャラとの差額、オレによこせ(力説)!

 

 ところが、『文筆業サバイバル塾VOL.04』での発言は少々様子が違う。『文サバ』P.19〜21より。

(前略)ただ、私がこの番組に関わったことで、皆さん方に貢献したことが一つあります。いわゆるネタ元、スーパーバイザーですね。その「スーパーバイザー料」を三倍ぐらいに上げた。多分、他の番組で皆さん方がスーパーバイザーになった時、スーパーバイザー料というのは大体その回の脚本料の半分。それでも半分出ればいい方です。本当にお車代程度です。(後略)

 私の場合は一番最初に立ち上げの時にいろいろ関わったんで、テレビ局の人間が、「唐沢さんには特別に、うちの社としてはかつて例がない、これは他の人に言ってもらっては困るというぐらいの、脚本料と同じだけのスーパーバイザー料を出しましょう」と言われたんで、「ちょっと待ってください」と言った。この番組って、ネタを含めて、初期の深夜番組の頃というのはほとんど私の著作からとってますから。
「私のネタで商売してるんですよね」
「はい」
「すみませんけれども、もうちょっと上げていただかないと」
 ということでですね、まあ具体的な金額は言えませんけども、普通の脚本料の五割増し、一・五倍のスーパーバイザー料を毎回貰うという形にした。

 その時(引用者註 『トリビアの泉』ゴールデン進出時)に、「私のスーパーバイザー料はどうなるんですか」と。「当然のことながら上げさせていただきますよ」と言うんで、「いくらなのかな」と期待していたらですね、三万上がったんですよ。晋也(原文ママ)からプライムタイムに移行して三万(笑)。すぐ電話かけて、「すみませんけれども、何かの間違いですか」と。「いや、もう前回出していたスーパーバイザー料だけでも、うちの社としては破格の、今まで会社として例のない……」(笑)。「それではちょっとやり切れません」というやりとりになった。

それで「月にこれだけ欲しいです」と出したら、先方はさすがにこれ以上もめたくないと思ったんですかね、「分かりました」と言って、その場で即決してくれて、普通の番組のスーパーバイザー料としては破格な、フジテレビの社史にない(笑)ものを払ってくれるようになった。それだって微々たるもんですよ、あの番組の人気と視聴率からすれば。

 で、結局「脚本家の三倍ぐらい」(P.21)のスーパーバイザー料をもらうことになったらしい。ちゃんと上がっているじゃん。ただ、『トリビアの泉』のネタについて唐沢がそのほとんどを提供しているというのは明らかにオーバーだし、「晋也(原文ママ)からプライムタイムに移行して三万(笑)」のくだりはヘイポーの謝罪文っぽい。…しかし、『文筆業サバイバル塾』の授業ってこんなんなのか。
 また、唐沢俊一は『トリビアの泉』の番組本の印税をもらっていないことについて次のように言っている。『文サバ』P.21より。

 本当に悔やまれます。なんであのとき印税をもらっておかなかったんだろうと。でもあの時は深夜放映ですから、そんなに売れるとも思っておらず、「『スーパーバイザー・唐沢俊一』という名前を掲げさせていただきますが、いいですね?」と言われて、「いいですよ」って言っちゃったんですね。「名前を出しますか」って言われたら「私の印税はどうなってるんですか」って聞くんだけれども、「お名前を『貸して』くれませんか」って言うから「向こうも儲からないと思ってるんだな」と判断してついそう言っちゃった。それがあるからスーパーバイザー料くらい三倍貰ってもいいかなと思ってはいるんですけれども。

 やっぱりヘイポーの謝罪文っぽい。唐沢俊一は番組本が「儲からない」と思っていたようだが、宮道プロデューサーも『SPA!』のインタビューで「もともと欲のない番組」だったと発言している。スタッフにも予想外の大ヒットだったのだろう。


 上に引用した文章だけを見ると唐沢俊一銭ゲバとも思えるので一応フォローしておくと、『文筆業サバイバル塾VOL.04』で唐沢は、テレビ業界がライターを単なるネタ元としか見ておらず、ネタをタダで聞き出そうとすることに憤っていて、マスコミにネタを提供するとしても対価をきちんと貰わなくてはならない、と主張している。その主張自体はいいとしよう。だが、そんなことを言っている人が、パクリやコピペをして他人の努力の成果を掠め取ったらダメじゃないか、とマジメに怒ってしまったので、結果的にフォローになっていないような。


 『文筆業サバイバル塾VOL.04』で一番興味深かったのは、『トリビアの泉』がヒットしたおかげで、雑学系以外の本を出そうとすると出版社から「それより雑学の本を出しましょう」と言われて、雑学系以外の企画が通らなくなった、唐沢俊一が嘆いているくだり(『文サバ』P.19)で、そこを読んで「唐沢さんは雑学以外で何がしたかったんだろう?」と不思議に思ってしまったし、それを考えると世間一般で未だに「唐沢俊一=雑学の人」と思われているのは本人としてはどうなんだろ?とも思ってしまった。


 『文筆業サバイバル塾VOL.04』のテーマは「多様化する媒体の利用法」、つまり、ライターがサバイブするために様々なメディアを使いこなしていく必要性を説いているわけだが、講師である唐沢俊一が『トリビアの泉』のスーパーバイザーを担当したことで、そしてインターネットの存在によって運命がかなり変わってしまったことを考えると、なかなか複雑な気分になる。


※ 『社会派くんがゆく!』での唐沢俊一の発言を追記しました。


トリビアの泉~へぇの本~(1)

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社会派くんがゆく! 死闘編

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