あっ! この映画には原作がない?
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karasawagasepakuri@yahoo.co.jp
■唐沢俊一による立川談志の「追討」(公式サイト)。唐沢俊一スレッド@2ちゃんねる一般書籍板では「自慢話しかしていない」というような感想もあったが、個人的には「さすがにいつもよりは気を使っている」と好意的に解釈した。「『立川流騒動記』プレ出版LIVE」で語っていた談志師匠の家にビデオデッキの配線をつなぎにいった話を書いていないのも自重したせいなのでは、と思う。あれは気を悪くするファンもいるかもしれない話なので伏せておいてよかった気がする。本人は気を付けて書いているつもりでもナチュラルに自慢話になってしまうのが唐沢俊一の持ち味、と言えるのかもしれないが。とはいえ、談志師匠の死去によって『立川流騒動記』の出版に影響が出てしまうのは避けられないだろうなあ。談之助師匠は「プレ出版LIVE」で「なかなか書けない」と言っていたからなおさらだ。今年は唐沢なをき『電脳なをさんver2.0』(メディアワークス)の単行本作業終了後にスティーブ・ジョブズが亡くなる、という出来事もあったけれど(単行本のあとがきには「スティーブ・ジョブズ氏の健康を祈るのみ」と書かれている)。
■2007年に河崎実監督・唐沢俊一監修で「トンデモホラーシリーズ」という3本の映画が製作された。そのうちの1本『あっ! この家にはトイレがない!』についてAmazonでは下のように紹介されている。
今話題の人気映画監督・河崎実の最新DVD!『トリビアの泉』の唐沢俊一と『日本以外全部沈没』の河崎実監督がタッグを組み、異色貸本マンガを映像化!"怪奇マンガの帝王"好美のぼるの「あっ!」シリーズ3作を一挙リリース!
訪ねた家にはトイレがなかった!という常識では考えられない話が繰り広げられる。
主演はグラビアアイドル天海麗!特典としてメイキング映像を収録!
【ストーリー】
手に本を持った糸井あずさ(天海 麗)は閑静な住宅街の中の鈴木家の前にいる。呼び鈴を鳴らすと中からメガネの奥様が出てきたので、あずさは自分の信じるお多福教の教えをペラペラとしゃべりだす。1時間して、メガネの奥様はあずさを追い返そうとするが、その時あずさは突如生理現象でトイレに行きたくなり、我慢できずに鈴木家のトイレを必死に探す。しかし鈴木家にはトイレがない…。そして恐ろしい世界にあずさは足を踏み入れることになる――
「お多福教」って『レインボーマン』か(さすが河崎実)、などと細かいツッコミはどうでもいいが、B級ホラー漫画に多少詳しい人はこの説明文を読んで「あれ?」と思うのではないか。この映画のストーリーは明らかに森由岐子『魔怪わらべの唄』にソックリである(転妻よしこの道楽日記を参照)。というか、ヒロインの名前が同じである。にもかかわらず、「"怪奇マンガの帝王"好美のぼるの「あっ!」シリーズ3作を一挙リリース!」って、ドユコトー? 監修の唐沢さん、ドユコトー?
…いやいや、まだあわてるような時間じゃない。たまたまAmazonの紹介文がミスをしているだけかもしれないではないか。本編で原作表記がきちんとされているのであれば問題はないのだ。
というわけで、本編を観てみた。内容はさておき、一通り観てビックリしてしまったのだが、この映画には原作の表記がない。森由岐子『魔怪わらべの唄』という表記もなければ、好美のぼる『「あっ」シリーズ』という表記もない。少なくとも、この映画だけを観た人間には原作が存在することはわからないはずである。こんなことってあるのだろうか。なお、「トンデモホラーシリーズ」の他の2作品も本編中に原作の表記はない。
著作者に無断で作品を映画化したのだとすれば、著作権法27条違反となる。ただ、Amazonの紹介文に好美のぼるの原作を元に映画化した旨が記されているところを見ると、好美のぼるの遺族に許可をとった可能性はある(好美は1996年に亡くなっている)。遺族に許可をとらずに「原作は好美のぼるのマンガです!」と書いているのだとしたら、中国で『東京ラブストーリー』がミュージカルになった事例を先取りしていたことになるけれど。それにしたって、「著作権者から映画化の許可を得ながら本編中に原作の表記がない」ということが有り得るのか?と気になるし、森由岐子に許可をとったのか?という疑問はやっぱり残る。『森由岐子の世界』(白夜書房)でトラブルを起こした唐沢俊一が監修しているのに森が許可を与えるだろうか。
コラムとは違って、映画製作にはたくさんの人が関わっているのだから、著作権に関していい加減なことはしないはずだ、と思いたいのだが…。
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