唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

トンデモねえ野郎。

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 今回は週刊アサヒ芸能』2005年8月18日・25日号に掲載された唐沢俊一のこんなニュースに誰がした!』第19回「自己セールスの達人 杉浦日向子追悼」を紹介する。唐沢は杉浦日向子の訃報について『社会派くんがゆく!』でも語っていて(『維新編』に収録)、discussaoさんもお怒りになっている。このコラムでは1回丸ごと杉浦の「追討」に費していて、数ある「追討」の中でもいろいろな意味で最大級の内容になっている。『アサヒ芸能』P.76より。

大学時代、旧・青林堂発行の雑誌「ガロ」に連載された作品「合葬」(後に単行本化。現・ちくま文庫)を読んで大感動し、当時つきあっていた女性に“コレは傑作、読め!”と強引に押し付けて、彼女が
「私、こういうマンガ好きじゃないのよね」
 と言ったのに腹を立てて、別れてしまったことがあったくらいだ。

 またしても「ドンファン伝説」だ。ドンファンにしてはフラれすぎのような気もするけれど。『合葬』が『ガロ』で連載されたのは1982年だから(単行本化は翌83年)、東北薬科大学時代にも彼女がいたのだろうか、ドンファン

 
 P.76より。

 漫画家時代の彼女の作風は・・・・などと言うことはここでは措く。彼女の存在が当時の漫画業界に衝撃を与えたのは、彼女が美人だったからである。それまでは女流漫画家というと、絵だけ見ていればいいのに、なぜ著者近影などをわざわざ単行本に入れて読者を減らすのだろう・・・・と思うような人がほとんどであった。×田×代子とか○中○智子などといった人が美人漫画家として知られていたが、要するに、あの程度であっても美人と評判になるくらい、この業界の美人度というものが低かったことを意味する。
 そんな中で、若い頃の杉浦さんは本当に美人、それもつんとすました美人ではなく、愛嬌こぼるるばかりという美人だった。

 いや、まず最初に作風について語ろうよ。女流漫画家を軒並み敵に回すような発言を堂々としていることにビックリさせられる。唐沢の別居中の奥さんも漫画家のはずなんだけど…。


 P.76〜P.77より。

(前略)ガロ時代、私の担当だった編集者が、酒を飲むと自慢げに
「杉浦さんの自宅に原稿取りに行ったらちょうど入浴中で、バスタオルを巻いただけの姿で玄関に出てきて、原稿を渡してくれたですよ。ふふふふふ」
 と繰り返して自慢していたのを思い出す。
 ところが、それから他の編集者とつきあううちに、同じ体験を話す人がかなりの数、いることに気がついた。まあ、お風呂好きでも有名な人だったからそのようなシチュエーションがしょっちゅうあったとも考えられるが、どうもそれは、後で出版社でそのことが話題になることを狙って、わざとやったことだったらしい。そういう噂が広まれば、自分に仕事を頼んでくる編集部が増えるだろう、と踏んでの演出だったわけだ。自分に色気がある、とひそかに自信をもっていたらしく、それを武器にもしていたようだ。
 ソバ屋で彼女を目撃した、という伝聞報告も多い。いずれもたった1人で、和服姿で日本酒を飲んでいて、それが実に絵になったと、目撃者は口を揃えて絶賛する。前の話と考え合わせると、それも彼女独自の自己演出だったように思えてならない。

 「らしい」「らしく」「していたようだ」「思えてならない」

 つまり、杉浦日向子が「自己演出」を狙っていたというのは、唐沢の憶測でしかないわけだ。唐沢俊一は写真を撮られるときいつも「決め顔」をするように「自己演出」の好きな人だから(「目に狂気を入れ」たりもしているそうですよ)、そんな風に思うのだろうが、みんながみんな自分と同じだと思わない方がいい。「天然」な行動をしている人に向かって「あれは狙ってやっているんだ!」と怒る人がたまにいるが、杉浦の行動を「自己演出」と深読みする唐沢もそれと似たようなものではないか。本物の「天然」は「自己演出」を軽く凌駕してしまうから、怒る人の気持ちもわからないではないが、なんとも悲しい話ではある。ソバ屋で日本酒を飲んでいたという件については『社会派くんがゆく! 維新編』P.333で

咽頭がんで酒あおってたら死ぬわな。

と言い放っている。はいはい鬼畜鬼畜。
 …それにしても、前の「美人」から気になっていたが、どうも唐沢の言い分はセクハラのような気が…。


 P.77より。

(前略)自分が世間にどう見られているかということを非常に客観的に分析し、そして、世間の期待値に合わせて、人が喜ぶような姿で人前に現れる。それはサービス精神の発露とも取れるし、自己顕示欲の臭いを感じてしまう人もいるだろう。彼女のそういうわざとくささを嫌っていたある編集者は、
時代考証家だなんて、あんなの晩年の稲垣史生さんに色気で取り入って弟子と自称していただけで、本当に何にも学んでないですよ」
 と憤慨していた。彼の気持ちはわかる。彼女は「百物語」(新潮社刊、後にちくま文庫)を最後に漫画家を引退したが、それは、あの中に描かれたエピソードの、原典である江戸随筆などの存在を挙げず、全部自分のオリジナルであるかのように発言していた彼女の姿勢に、漫画業界のさる筋から追及が入り、それがイヤになったからだと言われている。そういう自分を高く見せるテクニックに長けている人だったことは確かだ。

 「原典」を挙げずに追及されたって、いったい誰の話なんでしょうね。このコラムを書いた約2年後に『新・UFO入門』盗用事件が発覚するわけだけど。
 杉浦が漫画家を引退した理由は健康上の問題であったことを松田哲夫が明かしている(筑摩書房公式サイト)。…あれ? 「漫画業界のさる筋から追及」があったんじゃないの?
 それから、稲垣史生に「色気」で取り入ったという話にも疑問がある。竹熊健太郎さんも唐沢の「杉浦日向子=自己セールスの達人」論に疑問を投げかけているが、稲垣史生に色気で取り入って『ガロ』に投稿してデビューするって、「自己セールスの達人」にしてはやりかたがまわりくどくないか? 杉浦本人もデビュー後しばらくは漫画で食べられなかったと言っている(杉浦日向子ファンサイト「江戸から来た人」より)。また、松岡正剛は彼女が江戸の研究に熱心だったことを書いている。
 唐沢はここまで実に巧妙に杉浦を「追討」していたのだが、「彼の気持ちはわかる」ではついつい黒い感情が見えてしまっている。さて、「ある編集者」っていったい何者なんだろうね。


 P.77より。

「いいものを描いて(書いて)さえいれば、いつか必ず世間は認めてくれる」
 と、若い作家志望者に教えている先輩作家がいるが、実際の編集者はそんな甘っちょろいことは言わない。才能“しか”ない人は売れない、というのが現実なのだ。才能はまず最低条件として、それに加え、この業界で頭角を現すには、したたかさというものが絶対必要なのだ。あと、頭の良さも。そして、ワルだよあの女は、と言い捨てる人であっても決して否定できない可愛らしさ。女性が売れるには、そういうものが必要な要素だ。それらを全て兼ね備えている人が杉浦日向子であった。彼女くらい、売れるべくして売れた才能を、私は他に知らない。

 唐沢俊一杉浦日向子の才能についてまるで語っていないおかげで、唐沢の言い分だけを見ていると杉浦がものすごく嫌な人に見えてしまう。まあ、実際そのように仕向けたいんだろうけどね。…自分は、したたかに振る舞っているつもりでなおかつ頭が良いつもりでいた人が大変な目に遭っているのを長いこと検証しているので、「やっぱり努力しないとなあ」と何度も痛感させられている。唐沢の才能について詳しく語ると気の毒なことになりそうなのでとりあえずはパスしておく。



 唐沢俊一杉浦日向子を「自己セールスの達人」にしたかったのはよくわかる。同い年で、若くして「江戸」を舞台にした作品で認められ(唐沢は北海道出身なのに何故か「江戸っ子」ぶることが多い)、漫画家を引退した後もNHKの番組のレギュラー出演者として広く名前を知られるようになった杉浦が羨ましかったのだろう。栗本薫と同じパターンだ。自分のやりたいことを全部やられちゃったのではないか。「追討」の文章の端々から感情が滲み出ていて実に悲しい気持ちにさせられる。唐沢が何を書こうと杉浦日向子が今もなお多くの人々に愛されていて、今後ずっと読まれていく作家であることに変わりはないのだし。…「追討」したっていいことないんじゃないの?
 もうひとつ気になったのは、唐沢の女性観だ。「いまどきコレ?」と言いたくなるようなベタなオヤジっぷりに愕然とさせられる。この回のセクハラ三昧には思わず唐沢先生の高級帽子を8階の窓から大遠投したくなる(『B.B.E』と『DS MASSIVE』は最高)。「ドンファン」から「ベタなオヤジ」へと変化してしまったのは何故なのだろうか。

とんでもねえ野郎 (ちくま文庫)

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合葬 (杉浦日向子全集 (第2巻))

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百物語 上之巻

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社会派くんがゆく! 維新編

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UFO

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KARATEKA

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