銀輪の覇者。
マッハマッハ!
『鉄道少年の憩』の“鉄っちゃん、鉄っちゃん、ダメ鉄っちゃん!”のモトネタはたぶん、“Kill The King”の“Danger! danger the queen's about to kill”だから一応話はつながっている。
唐沢俊一が片山雅博氏の追悼文を書いている。片山氏は唐沢俊一の長年の友人で、『星を喰った男』単行本版のカバーイラストを描いている。いいイラストだったから文庫版でも片山氏に描いてもらえばよかったのに、と思ったものだが。唐沢の文章はさすがにいつもよりは丁寧だけど、若干余計なことを書いているかも。
なお、『星を喰った男』がアニドウで出版される可能性もあったことは、『トンデモない一行知識の世界』のコメント欄を参照されたい。
本題。今回は『アスペクト』2006年7月号(創刊号)に掲載された、唐沢俊一『若年寄のススメ』第1回を取り上げる。唐沢俊一は高校1年生の時に落語にハマり、特に立川談志と古今亭志ん朝が好きだったと書いている。
とにかく、はまるあまり、ラジオやテレビで演じられた落語のテープをコレクションして、それを毎日、通学の最中に聞いていた。当時は今のようなウォークマン形式の小型プレイヤーがなかったから、ラジカセを自転車の荷台に積んで、イヤホンで聞きながら通学していたのである。
そんなことが一年あまり続いたろうか。そのうち、奇妙なことに気がついた。あんなに談志・志ん朝が好きなのに、彼らのテープを、あまり聞かなくなっていた。出がけに何の気なしにチョイスして、三十分間の通学時間の楽しみにするのは、三遊亭円生をトップに、古今亭志ん生(志ん朝の父親)、お婆さん落語で有名な古今亭今輔、先代の桂文治といったベテランのものが主となっていたのである。
何故だろうかと不思議に思って、ある日談志の独演会のテープをわざわざ選んで、それを聞きながら通学してみた。……その結果、どうなったか。私は二回も路地から出てきた自動車にぶつかりそうになり、バカヤローと怒鳴られて、途中でテープを聞くのを止めざるを得なかった。
談志や志ん朝の落語は、“ながら”に向かないのであった。それは、熱演であり、熱演故に実際に高座を見ているこちらを感動させる。しかし、熱演というのは、言葉を変えて言えば“自分だけを見ろ、自分に意識を集中させろ”という強制でもあるのだ。そして、それに気がついたとき、あの高座での緊張感は、実は若さゆえの、余裕のなさの現れではないかということに思い至ったのである。
まず最初に気になったのは「ラジカセを自転車の荷台に積んで、イヤホンで聞きながら通学していた」という部分。…それって結構難しくないか? ラジカセを荷台に固定しておかないと落としてしまうおそれがあって実に危なっかしい。あと、そのラジカセは授業中どうしているのか?というのも気になるし、唐沢俊一が高校1年生の時といえば1974年だが、その当時のラジカセでそういうことをしても大丈夫だったのか?とも思う。
…しかし、よくよく考えてみると、より根本的な疑問が浮かんできた。
「唐沢俊一は自転車に乗れるのだろうか?」
だって、あの足ではペダルを漕ぐのも大変なんじゃないかな。自転車に乗れるのなら、大学に入って上京したときも乗り回せばよかったのでは?とも思う。
そして、『古本マニア雑学ノート』(幻冬舎文庫)P.134には次のようにある。
高校に入って古書店めぐりが始まったのは、通学がバス利用になったからで、これで一挙に行動範囲が広がった。
高校への通学にはバスを使っていた、と書いているのだ。うーん…。
ついでに「裏モノ日記」2001年10月1日も紹介しておこう。
中学生のころ、ラジオの公開録音会場で『干物箱』を聴いて、その演出のあまりのサラリとした、うまさを超えた自然さ(まあ、本人のアダ名が“若旦那”だったんだから若旦那ものが自然だったのは当然か)に愕然とした。続いて上がった談志が(何をやったか忘れた)負けじと熱演すればするほど、生得の血の違いのようなものが歴然として、何か談志が気の毒になってきて、それ以来、私はがんこな談志派になったものである。
そのせいで、私は志ん朝をきちんと聴き込まぬままに来てしまった。もちろん、落語会などで山ほど聴いてはいるものの、いわゆる独演会に、志ん朝目当で聴きに通ったことは一回もない。その若さと、若さに似合わぬ円熟ぶりに、これは“いつでも聴ける”人だ、というイメージがあり、それよりもクセのある人ある人、と選んで足を運んでいた。まさかこんなに早く逝ってしまうとは。今になって無茶苦茶にくやしい思いがする。
志ん朝よりも談志びいきだったとあるし、談志はともかく志ん朝が「熱演」していたとも書いていない。
…まあ、こんなウソをついても全くもって意味は無いのだから、本当にあったことだと思いたいのだが…。
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