誰がために。
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・中野貴雄監督夫妻のtwitterより。
唐沢俊一さんのファンはプラス方向にもマイナス方向にも一杯いてうらやましいなあ。
おや、監督は唐沢俊一が検証されているのをご存知なのだろうか。まあ、唐沢本人は「マイナス方向」のファンの存在をあまり有難く思っていないようだけど。ともあれ、唐沢とのトークショーがんばってください。
本題。今回は『パチスロ必勝ガイドNEO』2011年1月号に掲載された唐沢俊一のコラム『エンサイスロペディア』第47回「サイボーグ009」を紹介する。
『サイボーグ009』といえば、オタク第一世代直撃の作品のはずだが、それにしては文章に熱がないのが気になる。歴代のアニメ版の説明もウィキペディアを読めばわかることばかりだ。
2度目のテレビシリーズの紹介を見てみよう。
次のアニメ化は1979年、当時ロボットものアニメで人気を誇っていたサンライズが製作協力に入り、作られた作品である。このときは、原作者自身がラフスケッチを描くほどに入れ込み(そのエピソードは結局実現しなかったが)、そのために、きわめて原作に近いキャラクター設定になった。
「ミュートスサイボーグ編」のアニメ化の構想もあり、石ノ森がラフデザインを描き下したが実現しなかった
細かいことを書くと、当時は「サンライズ」ではなく「日本サンライズ」。
一方で、主人公がオープニングで涙を流すなど、女性ファンたち向けの演出がなされているのは、アニメブームを支える主体が変化してきたということなのだろう。この79年版の主題歌『誰がために』(石ノ森章太郎作詞、平尾昌晃作曲、すぎやまこういち編曲)を、昭和アニメソングの最高傑作と主張するファンたちも多い。オープニングアニメの作画はサンライズアニメのオープニングを多く手がけていた天才・金田伊功で、彼を作画に招いて東映が製作した映画版も1980年に公開された。
『誰がために』の歌詞にも「涙で渡る 血の大河」ってあるけど…。それから、一般的に第1次アニメブームは70年代末に起こったとされているから、「アニメブームを支える主体が変化してきた」というのはどうなんだろう。
なお、参考までに、島本和彦『アオイホノオ』(小学館)2巻P.100〜103より79年版『サイボーグ009』のオープニングアニメの焔燃による解説を紹介しておこう。
たとえば、00ナンバーサイボーグの、
一人一人の能力を順に動きで表現するが、
006の体内の火炎放射器から火を吹く場面。
これは…
口の中から炎が出てるんじゃなく、
微妙に口もとからズレて、火が出ている!
昔のアニメだと描けなかった描写!!
つまり、口からは燃料だけを噴出し空気中で炎となる表現!!
リアル!!
SF性!!
そして、怪力の持ち主という設定の005!!
昔のアニメでも原作でも、平然と無表情で大岩を持ち上げていたが…
今回はあえて、
苦悶の表情で持ち上げる演出!!
逆転の発想!!
そして何より、
そこまでの能力を完璧に演出しているのに―
003の、
フランソワーズの能力は……
目と耳が超高感度レーダーになっているという設定には一切触れず、
ただまばたきして振り返るだけ。
紅一点の女の子が可愛らしい。
それが、
目と耳がレーダーとなっているよりよっぽどすごい能力!!
―という、演出家の切れ味の良い思い切り!!
完璧!!
おそるべき完璧なオープニング、
100点!!!
…もう、石ノ森作品はみんな島本先生に解説してもらおうよ。ついでに『ハートキャッチプリキュア!』も。
そして、原作者が98年に亡くなり、世紀が改まっての2001年に『サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER』のタイトルで放映されたのがこのパチスロになっているアニメシリーズである。登場人物たちの、人種的描写が世論を意識して変えられているのと、あの小室哲哉が主題曲を担当しているのが、いかにも当時の雰囲気を醸し出していると言えるだろう。つまり、『サイボーグ009』という作品のアニメ化の歴史は、そのまま、日本のアニメ史をたどることになっているのである。
小室哲哉とアニソン、といえばなんといっても『シティーハンター』のエンディングテーマだったTMネットワーク『Get Wild』じゃないかなあ。1987年のヒット曲だ。
小学生のときに見ていて「カッコいいなあ」と思ったものだ。
それから、1994年の大ヒット曲、篠原涼子with t.komuro『恋しさとせつなさと心強さと』。実はこの曲は『ストリートファイターⅡ MOVIE』の主題歌なので、れっきとしたアニソンである。
自分は『ストⅡ』を映画館で観てたので、「あの曲がヒットしている!」とビックリしたものだ。
おっと、大事な曲を忘れるところだった。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌、TMネットワーク『BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を超えて〜』。これも小室哲哉作曲。
小室哲哉と小室みつ子は結婚してなければ血縁関係もない(トリビア初級編)。
…というわけで、小室哲哉とアニソンの関係は意外と深いのである。日本のアニメ史を語るのならそれくらいはおさえておこう。
なぜ、これほどまでにこの原作が、時代を超えて、それぞれの時代のファンたちの心をつかんでいるのか。それは、この作品の登場人物たちが、完璧なヒーローではなく、むしろ人間的な悩みや弱さを人一倍背負った設定になっているからではないだろうか。石ノ森作品の基調に流れる、生きていくことそのものへの悩みというテーマは、時代がどう変わろうと、人間誰もが常に感じているものだ。そして、その悩みは、主人公たちの持つ能力が、もともと正義や平和を守るためではなく、死の商人たちの実験のために与えられたものであるという悲劇性による。彼らは自分たちの人間性を取り戻すために、戦っていく。選ばれたヒーローの話ではなく、落ちこぼれたちの、再挑戦の話なのである。これを60年代に作品化した石ノ森章太郎の先見性に感服しながら、最新の21世紀版をもとにしたこのパチスロをプレイしていただきたいと願う。
「落ちこぼれたちの再挑戦」って『がんばれ!!ロボコン』っぽいな。「あとは勇気だけだ!」という009の名セリフも「落ちこぼれ」ならではなのだろうか。それに「悲劇性」は仮面ライダーにも共通しているよなあ。
自分なんかは009にしろライダーにしろ最大の魅力は「カッコいい」ことだと思うのだけど。「奥歯の加速装置」をマネしたという話はよく聞くし。テーマだけでなく表面的なことをもっと考える必要があるように思う。とりあえず、79年版TVシリーズのオープニングを観るところから始めよう。
問答無用のカッコよさ。
karasawagasepakuri@yahoo.co.jp
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