唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

東京のバカヤロー。

洋画の日本版テーマソングは不評を買うことが多いが、『エクスペンダブルズ』の『絆』もやはりあまり評判がよくないようだ。インパクトがあって面白い歌なんだけどね。我慢がならねえ!


本編に出ていても違和感ないなあ。巨悪に長渕キックを!


 アスペクトの公式サイトで『村崎百郎の本』の告知が。唐沢俊一は『社会派くんがゆく!』について寄稿しているらしい。それを読んでから冬コミの原稿を書くか…。


 さて、今回も怪獣映画の話である。ユリイカ』1999年5月号唐沢俊一『怪獣は東京を目指す-怪獣映画における都市-』というコラムが掲載されている。

実は怪獣映画は、製作当時の日本における、最も先端の近未来像を反映し、ことにその都市破壊シーンにおいては、裏から観た都市論とも言うべきメッセージ性を強く持っているものなのである。

 という論旨で、『キングコング対ゴジラ』や『ウルトラセブン』の『あなたはだあれ?』に当時は最先端の生活スタイルだった団地が登場したことを取り上げている。『ウルトラマン』の怪獣殿下も団地に住んでなかったっけ。
 この文章を読んでいて一番気になるのは、唐沢俊一東京に妙にこだわっているところだ。

 思えば地方都市に居住する子供たちにとって、怪獣映画は東京という街を想像する、唯一の窓口だったのではなかったか。一九五四年のゴジラ第一作は、勝鬨橋、銀座時計塔、国会議事堂など、はとバスツアーのように東京の名所を回って、そこが破壊される様子をわれわれに鑑賞させた。
 続く第二作『ゴジラの逆襲』(五五年)は大阪が舞台で、ゴジラアンギラスの二大怪獣が大阪城を破壊してみせたが、やはり、文明の象徴であるところの大都市を破壊する原始の生命、という怪獣映画のモチーフを最も表現できるのは東京であろう。九州あたりでチマチマやっているラドンなどは、子供にとってはやはり田舎者でしかなかった。すべての怪獣は、当時のすべての青年のように、東京にあこがれ、東京を目指してこそ一人前のように思えた。ゴジラブームに乗った形で製作された大映映画のタイトルが、『宇宙人東京に現る』(原文ママ)だったのが、それを象徴しているように思うのである。“地球に”ではなく、“東京に”なのだ。

 九州をバカにできるほど札幌は大都会なんだろうか。子供の時から「田舎者」とか考えているのが唐沢俊一らしいけど。それ以前に、ラドンの福岡襲撃を観て「チマチマやっている」と思うとはなあ…。

 『空の大怪獣ラドン』が九州を舞台にしていることについては、『映画宝島 怪獣学・入門!』(JICC出版局)で赤坂憲雄が興味深い分析をしているのだが、それに比べると浅いというほかない。
 あと、『ゴジラ』シリーズでも東京が舞台ではない作品はたくさんある。たとえば、『モスラ対ゴジラ』ではゴジラが名古屋に現れるが、それも唐沢俊一には「チマチマやっている」ように見えるのだろうか。これも『怪獣学・入門!』で長山靖生が指摘していることだが、特撮映画の怪獣は「南」から来ることが多いし(「北」から来たのは昭和ガメラとバランとメカニコングと…)、南方が舞台となる特撮映画も実に多いのであって、特撮映画=東京と決め付けてしまうと狭い話にしかならないのではないだろうか。なお、『宇宙人東京に現わる』の島耕二監督は湯浅憲明監督の師匠だが、『ガメラ創世記』(エンターブレイン)で『宇宙人東京に現わる』の話が出なかったのは少し気になった。
 

 筆者にとっての東京は、そのまま怪獣映画の記憶確認の場所であった。その最も中心に位置していながら、一回も怪獣に足を踏み入れられていない“あの”場所は、筆者にとってはどうしても東京のシンボルと意識できる場所ではなかったのである。その不満は、怪獣映画でこそなけれ、ゴジラと同じ東宝映画である『日本の一番長い日』(原文ママ)で土屋“ガス人間第一号”嘉男や、中丸“電送人間”忠雄ら特撮スターたちによってそこが襲撃・占拠されるシーンを観て、なんとか解消されたくらいだったのである。

 「なけれ」ってどうなんだろ、と思ってしまうが、『日本のいちばん長い日』で土屋嘉男が演じた不破博大佐は反乱に参加していないのでは。ゴジラが皇居を壊さなかった話は1999年当時でも既にしばしば取り上げられていた話題なので特に目新しい話でもない。

 筆者の夢の街、東京へのあこがれは、大学に入って上京し、そこに居住することで、ある部分では満たされ、ある部分では失望に変わった。期待感が大きいだけに失望もまた大きい。自分の想っていた東京はこんなところではなかったはずだ、という、裏切られた感覚も常にあった。
 そんなとき、東宝怪獣映画のオールナイト上映会をいつも観にいったものである。そこで怪獣に蹂躙され、破壊される都市は、確かにわれわれの幼い夢の中にあった、モダンな科学の都であった。
 小津の映画の鎌倉や、大林宣彦のの映画における尾道と並び、われわれは本多猪四郎以下の監督する怪獣映画において、東京という街をイメージしているのである。

 だから、東京以外を舞台とした特撮映画はたくさんあるんだってば。まあ、上京してきていろいろつらいことがあったのだろうな、と同情してしまう。
 自分も唐沢同様に地方出身なのだけど、唐沢のような東京へのあこがれというのはいまいちピンとこない(幼少期に東京で暮らしたことがあるせいかもしれない)。唐沢と同じ「オタク第一世代」である岡田斗司夫(大阪出身)、山本弘(京都出身)も東京に対しては複雑な思いがあったようだから、世代的な問題なのかもしれないし、そうではなくて個人の問題にすぎないのかもしれない。今は東京と地方の情報格差が小さくなっていることも大きいのかも。


 最後に細かいツッコミ。唐沢俊一はコラムの中で怪獣映画に登場する数々の超兵器を挙げているが、「マーカライト・ファイブ」は誤り。正しくは「マーカライト・ファープ」(Marker-light FAHP )。文章だとわかりづらいけど、口に出すとすぐにわかってしまうので注意。


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