鬼畜の歴史をよみなおす。
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唐沢俊一・村崎百郎『社会派くんがゆく!』(アスペクト)第1作目を読み返してみた。自分が過去に『社会派くん』をよく読んでいたことについては『検証本VOL.2』を参照されたい。最近のものに比べると、2人の掛け合いもサクサク進んで「この頃は元気があったんだな」と感じる。
ただし、よく読んでみるとヘンなところもチラホラ見つかる。何故最初に読んだ時に気がつかなかったのか、と思うが、検証をやるまで自分がいかにいい加減に本を読んでいたか、ということなのだろうか。
その1。“ゴッドハンド”藤村新一による石器捏造事件への唐沢俊一のツッコミがことごとくブーメランになっている。P.74〜76より。
これに誰も疑問を持たないまま、英雄視されていたなんて、ホント、考古学の世界ってどうなってんだか。
一時期、テレビや出版の世界で縄文ブームが起こったけど、これもよく考えたらほとんどこの人がやっていたようなもんでしょ。罪は重いなあ。
本人は発覚した2ヵ所だけだって言ってるけど、そんなわきゃない。
とにかく、アカデミズムには自浄作用っていうのがホントにないんだなあって、つくづく思い知らされたよ。
どれも今になってみると味わい深い。
その2。「エホバの証人」輸血拒否事件最高裁判決への唐沢のツッコミ。P.104より。
輸血拒否は信教の自由の権利である、と司法が認めてしまった。それなら、サリンまくのも信教の自由か?
信教の自由はいかなる場合にも認められるわけではなく、公共の福祉による制約を受ける、と言っておけばいいかな? 最高裁平成8年1月30日決定もサリンの生成が公共の福祉に反するとしている。…この単行本が出る前に出ている決定なんだけどね。「信教の自由の権利」というのもヘン。…法律関係はダメか。
その3。P.165〜166より唐沢の発言。
だいたい右傾化したくらいで、簡単にできるようなもんじゃないんだから、戦争ってのは。これはもう、戦争オタクとして強く言いたいね(笑)。だいたい少子化の問題放っておいて戦争なんかできるわきゃないんだからさ。農家の次男、三男みたいな人間をもっと増やすことからはじめなきゃいけないわけでしょ。それで生めよ増やせよで、田んぼも増やして米も増産してってことになるわけで、そこまで行ったらさすがにヤバイとは思うよ(後略)
唐沢俊一は「戦争オタク」だったのか。知らなかった。しかし、その分野にはおそろしく濃い人たちがゴマンといるんだけどなあ。米を増産したら左翼の人がよく言っている「戦争のできる国」になってしまうのだろうか。
その4。P.34より。今度は2人の掛け合いから。
村崎 ホント、オレの田舎なんか、土間でセックスしてたら隣のヤツが土足でズカズカ踏み込んでくるようなトコでさ、もうそこら辺一帯が家族みたいな感覚なんだよ。
唐沢 それと同じようなのがまだ残ってるのが、東京の下町なんだってね。早稲田に住んでた人に聞いたら、町内全部身内みたいな感覚が強すぎて、お互いの干渉がものすごいんだって。ただし東京だからヘンに近代化されてるとこもあって、よその子供でもブン殴るみたいな要素はあんまりなくて、そのかわり影で(原文ママ)こそこそ噂話されるってパターンらしい。だから“東京砂漠”みたいな状況は、都心周辺のビル街にあるんじゃなくて、そういう下町にこそ根づいているんだって。
早稲田って「下町」か? むしろ「山の手」なんじゃないか? 唐沢俊一は江戸っ子を気取っているのになあ。
…こんな具合にヘンなところがボコボコ見つかるので「どうして気がつかなかったんだろう」と結構真剣に悩んでしまう。これから『社会派くん』シリーズを全部読み返すつもりなんだけど、どうなることやら。
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