唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

よろしく萌え特区。

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 『週刊ダイヤモンド』での岡田斗司夫のインタビューの外しっぷりはなかなか面白かったが、そういえば唐沢俊一秋葉原について語っているのを思い出した。『宝島』2008年5月号の特集「日本浮上「賢者の秘策」13」「萌え=MOEの聖地・日本に「世界の頭脳」を結集させよう」というインタビューがそれである。「アキバを「萌え特区」にすれば天才が日本にやってくる!」という惹句がついていて、このような前置きが書かれている。

 コンテンツ大国、モノ作り大国実現を標榜する日本。だがそのためにはノーベル賞級の人材が不可欠。「世界の天才を日本に結集させることが出来る唯一の方法は『萌え文化』しかない」という唐沢氏。その理由とは。

では、本文に入る。

 日本が地盤沈下している中で、唯一活性化しているのは、オタク産業だ。しかし日本政府は、その使い方をわかっていない。
 世界のポップカルチャーの分野で、日本のオタク文化を意識せずに制作している人はいない。オタクはいま、日本で最も希望の持てる産業になりつつある。

 …いや、「日本のオタク文化を意識せずに制作している人」もいると思うよ。ポップカルチャーに関わっている人が世界中でどれくらいいると思っているのだろう。よく断言できるものだ。

 政府は、日本にオタク資源という特産品があると聞くと、すぐ海外に輸出しようとか、海外に出す人材を育てようという昔からの考え方しかない。ところが、海外にいくら出て行っても、向うの人にとっては偽者(原文ママ)。美術や音楽を学ぶ人たちがパリやウイーンを目指したのと同じで、皆、本場のアキバ(秋葉原)に行きたいと思っているんです。

 「パリやウイーン」と「アキバ」は違うんじゃないかなあ。「アキバ」でオタクとして専門的な修業ができるわけじゃないんだから。

 日本のオタク文化は、広範囲にわたって海外の才能を集めている。最もオタクにはまりやすい分野がサイエンスの人たち。東京の大学に赴任や留学してきた海外の若手の研究者がまず行きたい所は、研究施設ではなく、アキバと言っているほどだ。

 家電が欲しくて秋葉原に行きたいのかもしれないけどね。秋葉原にはオタク文化だけがあるわけじゃないんだってば。

 なぜなら、学問の世界に没頭することは、オタクと相似形なんです。つまり、何か1つのことに集中することが、日常の食事や睡眠などよりも優先するくらい中毒症状が激しい。「萌え」感覚を優れた研究者はみんな持ってる。頭が良く知能指数の高い人ほどね。

 …え? ふだん「萌え」が理解できなくて若いオタクをバカにしている人とは思えない発言だ。しかし、「萌え」って「何か1つのことに集中すること」ではないよなあ。俺は検証に集中しているけど、別に唐沢俊一に萌えているわけじゃない。

 日本を見れば、技術は中国や韓国にどんどん追い抜かれている。昔は、組織の中で自分の地位を上げ、生活水準を上げることのみが、仕事に対する報酬となり、高度経済成長を支えてきた。人は、報酬がないと頑張らない。ところが、社会的な報酬は飽和状態になってしまった。モチベーションの低下が、日本失速の原因になっている。

 ワーキングプアは2008年の時点で既に問題になっていたんだけどなあ。不況にしろ高度経済成長にしろ解説がザックリしすぎ。

 若い世代は報酬よりも自由な時間を欲しがる。それを自分の萌え要素を満足させることに使っている。それも、テレビなどのメジャーアイドルでなく、アキバで撮影会をやっているような、マイナーだけど一体感のあるアイドルにはまりがち。「日本に来ると、新しいアイドルのおっかけができるぞ」と評判になればしめたもの。アキバ系アイドルを研究所や政府関連施設に置けば、海外から頭のいい技術者がやって来る。日本ではすでに動きがあり、関西在住の優秀な研究者が関東の大学に移った裏の理由がアキバに通うためでした。これからの世界は、オタクをいかに使うかだ。

 その発想はなかった。

 …しかし、海外からわざわざマイナーなアイドルを追いかけるために日本までやってくる研究者が本当にいるのかなあ。アイドルを「研究所や政府関連施設」に「置く」というのも凄いな。人間を何だと思っているのか。

 ビルゲイツ原文ママ)やスピルバーグのように、才能あふれる人は必ずオタク的領域を持っている。そういう人たちの嗜好を刺激していくことに、徹底的に援助していけば、釣れるんですよ。海外のベンチャーなど先端企業の天才が、「アキバ系アイドルに会えるから日本に本社を置く」と言い出してもおかしくない状況です。規制なんてトンデモない。アキバを「萌え特区」で聖地にしてしまうことです。

 そりゃあ、世の中何が起こってもおかしくはない。海外からアキバ系アイドルを追いかけて天才がやってきても、イカ娘が海から人類を侵略しにやってきてもまったくおかしくない。実際に「海外のベンチャーなど先端企業の天才」(この表現もジワジワくる)が釣れたことがあるのかどうか。

 今や外国のオタクたちにとって「漢字で『萌え』を書ける」ことが最先端。日本人が日本人向けに作ったものを海外の人が何とか理解しなくては、と焦っている。日本独特の風土が萌え文化を生んだ。基準は日本にあるんです。それらを世界に持っていくのではなく、日本に来させることが大事なんですよ。オークションやフィギュア修行など、萌え情報で世界の目を集める方向で考えていかないとダメだと思う。

 ここらへんはいかにも唐沢俊一。『社会派くんがゆく!』でもよく鎖国を主張していたっけ。ところで「フィギュア修行」って何? 集めるの? 作るの?

 日本はたまに天才を生むけど、育てるのが下手で、皆海外に取られてしまう。
 今後、学校や研究機関がオタクに寛容な環境を醸成することが急務。研究室で24時アニメソングを流してもいいとか、それだけで研究が飛躍的にはかどると断言する研究者もいます。
 日本が世界と競争する上で世界的オタク文化は強力な武器。「萌え」が世界から優秀な頭脳を集められるキーワードであることをもっと打ち出すべきだ。実績ができれば、行政を動かすこともできるはずです。

 オタク=アニソン好き、っていうイメージが固まりすぎ。俺はオタクだけど、アニソンや特ソン以外にも好きなジャンルがたくさんあるしなあ。検証の時もアニソンはそんなに聞かない。結局「好きな音楽を聞いたら仕事がはかどるよね!」という話でしかない。
 細かいことだけど、「醸成」というのは「気運を徐々に作り出すこと」なので「急務」と一緒に使うのはどうかと思う。


 …全文を読んで一番ひっかかったのは、優秀な人材を集めた後のプランが示されていないこと。人材を生かす手立てを考えなければ、むやみに集めたところで宝の持ち腐れになってしまう。仮にもプロデューサーを名乗っている人の言うこととも思えない。それ以前に、唐沢俊一の作戦で海外から人材が集まるとも思えないけどさあ。あと、秋葉原=オタクの街と決め付けすぎだ。

 唐沢俊一にしろ岡田斗司夫にしろ思いつきで物を言いすぎである。まあ、普段の主張をかなぐり捨てて「萌え」を持ち上げている唐沢より、秋葉原を持ち上げながらオタクを蔑んでいる岡田の方が味わい深いのだけど。…検証したくなるな。


 なお、唐沢俊一のサイトの2008年3月27日付けのニュースには次のようにある。

それから時計回りに月刊『宝島』、特集『沈むな日本!』で、
急なインタビューにも関わらず『日本浮上「賢者の秘策」13』の
トップで登場。トップってえと聞こえはいいが要するに前座か(笑)。
アキバに世界の頭脳を集結させろ! と熱く語ってます。
冗談みたいな内容ですが、実はマジ。今後これを発展させて一冊
本を書くというような話もあります。

 それから2年半経っているけど、企画はどうなったのだろう。ちなみに最後に単著(例の『博覧強記の仕事術』)が出てから既に1年以上が経過している。10年以上毎年単著を出し続けていた唐沢にとっては異例の事態だ。


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