岡田斗司夫検証blog2.
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俺の写真が載っている『週刊ダイヤモンド』9月25日号を買ったら、P.43で岡田斗司夫が「いつの時代も日本の強みは色気とテクノロジー」というインタビュー記事でいろいろしゃべっていた。どうにもひっかかる記事だったので今回は特別に取り上げることにする。
秋葉原の変態は、三つの時代で語ることができる。第1期は、戦後の闇市から、1980年代半ばの家電量販店の隆盛まで。第2期は、マイコンブームから20世紀の終わりまで。いわゆるオタクが発生した時代である。2000年代以降の第3期には、ディズニーランドやラスベガスと同じ、観光地化が進んだ。
まず、時代の区分がザックリしすぎ。森川嘉一郎『趣都の誕生』(幻冬舎)では90年代に秋葉原で起こった変化について論じられているんだけどなあ。…っていうか、「アキバ変態(メタモルフォーゼ)」という特集なら森川嘉一郎に話を聞きに行けばいいのに。岡田斗司夫という名前が欲しかったのだろうか。
次に、「いわゆるオタクが発生した時代」というのはヘンで、「オタク」という言葉が生まれたのは80年代半ばとされているけれど、それ以前からオタクにあたる人種は発生していたわけで。岡田を含めた「オタク第一世代」は『ヤマト』や『ガンダム』に熱狂していたんでしょ? 誰とは言わないが中には熱狂しなかった人もいるけど。
パソコンがマイコンに取って代わると、ハードウエアだけでなく、ソフトウエアも必要だということになる。それも秋葉原でしか手に入らなかった。私もこの時期には日参したが、当時35万円もするパソコンのカラーモニターに、お絵描きソフトで女の子の線画を描いたりして、周りに披露した。みんなプログラマーほどの力量を持っていながら、じつにくだらないものを映し出すことだけに、血道を上げていたのである。米国の例がいいように、パソコンが普及すれば、真っ先に実用ソフトが普及する。しかし、日本では、お絵描きソフトやゲームソフトが先行する。こんな国はまったく珍しい。
岡田斗司夫がどんな絵を描くのか見てみたいものだ。「この時期」がいつなのか、「周り」「みんな」が何者なのかよくわからないな。パソコンとマイコンは違うのか…。
ここに集まってきた人びとは、いわゆるアーリーアダプターで、社会的地位にも恵まれ、おカネにも決して困ってはいなかった。いわば、身を持ち崩したい、というオタク心、日本古来の粋、無頼、フランスでいうところの放蕩につながる文化が蔓延したのである。それは北太平洋沿岸の米国先住民(インディアン)の祭事、ポトラッチにも似ている。部族抗争を繰り返した後、彼らはトーテムポールやカヌーなど、財の象徴を衆目の前で自ら破壊することをもって、自分たちの豊かさの証しとし、それを誇示する。
権威づけに必死すぎだ。「オタク心」「粋」「無頼」「放蕩」…、全部別物だろう。「身を持ち崩したい、というオタク心」って、まるで『堕落論』だ。
ポトラッチにしても、秋葉原に集まっていた人全てが誇示のために何かを買っているわけではないって。実際、秋葉原で自分の買い物を誇示している人を見たことないしなあ。…まさか、これも「脳内秋葉原」か? 『宇宙戦艦ヤマト』に『金枝篇』、『ゴジラ』に祟り神信仰を持ち出した唐沢俊一にも言えることだけど、学問上の用語を安易に使っているのも気になる。ちょっとしたソーカル問題だ。
第3期の観光地化で、とりわけ外国人にとって秋葉原は、日本そのものという存在になった。もはや、日本から秋葉原がなくなったら、海外から観光客を呼び込むことなどできまい。
秋葉原以外にも人気の観光スポットはたくさんあるのだけど…(一例としてナリナリドットコム)。極端だなあ。
AKB48もこの時期に誕生した。自分たちのアイドルであって、ほかの誰のものにもなってほしくない、と考えるのは第2期の、アップルのMacはメジャーじゃないほうがよい、と考える自我の強い人々。第3期のアイドルブームは、僕が好きなものはみんなが好きになってもらわければ、僕が保証されない、と思う心の弱い層に支えられている。AKB48がいいのは、テレビ局もバックアップしているから、必ず流行るだろうという安全パイであって、自分にも手が届くこと。芽が出ない可能性の高いものに、彼らは投資しない。
…いや、AKB48が今のようにメジャーになる前からのファンだってたくさんいるって。「心の弱い層」とかよく言うよなあ。上から目線を越えて一般人を完全に蔑んでいるよ。…それにしても、この人はなんでもかんでも世代論にしてしまうのか。
現在秋葉原を訪れているこうした20〜40歳代は、家庭や恋愛についての価値観をじわじわと変えつつある。秋葉原がリアルな恋愛、恋人を嫌う時代現象に拍車をかけているのだ。秋葉原でアイドルやメイドに熱を上げるのは、特定の女の子と付き合うのと違って、リスクがないから。特定の女の子と付き合っても期待したリターンはない。結婚なんて、そんな効率の悪いことはしない。なにしろ、とりわけ25歳以下の若者たちのパラメータは、リスクとダメージなのだ。たとえていえば、生まれて初めてした徹夜でいい成績が取れなかったら、それを挫折と呼んで、一生勉強しない人たちだから。
岡田斗司夫は大阪芸術大学の客員教授をやっているから、若者と接する機会も多いだろうに、どうしてこれほどまでに若い世代をバカにするのか皆目見当がつかない。現在日本中でどれだけたくさんの「25歳以下の若者たち」が目標に向って努力しているか、少しは考えてみるといい。ちなみに、岡田は『オタクはすでに死んでいる』(新潮新書)P.71で
私はよくある世代論・若者批判が好きではありません。
と書いているが、ものの見事に「よくある世代論・若者批判」をやってしまっている。
それに「リアルな恋愛、恋人を嫌う時代現象」とあるけど、「婚活」は相変わらず流行っているようだしなあ。言動がいちいちリアリティを欠いているのが凄い。
これは日本だけではなく、先進国に共通の兆候である。だからこそ、秋葉原は世界から集客する力をますます強くする。日本の強みはどの時代もいつも、色気とテクノロジー、これに尽きる。
「色気とテクノロジー」がどのような「強み」なのか全く語られていないのに、このように締められても困る。秋葉原を称賛しつつ、「秋葉原にやってくる人々」をバカにしているのが理解不能。知識や思考力以前に性格の問題のような気が。
…あまりにもトンチンカンすぎる話に唖然としてしまった。文章の流れに妙なところがあるから、編集部のまとめ方にも問題があるのではないか。でも、残念なことにこの人は世間一般ではオタクについて詳しいと思われているんだよなあ。これ以上検証の手を広げたくないので、もっとマトモな仕事をしてください。唐沢俊一以外にも面白物件を発見するのは遠慮したいところだ。それから、若い人たちをバカにするのはみっともないのでやめた方がいいですよ。読んでいるこっちが恥ずかしくなる。
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